「看過できない!」野党からの自民党入り自民青年局から執行部に“入党ルール”と“説明”求める声

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  • 他党からの自民党入りに青年局「看過できない!」
  • 青年局からは入党ルールと説明求める声
  • “死に物狂いで”二階幹事長通達の意図は?

相次ぐ他党からの転向に青年局「納得いかない!」

「最近、他党に所属していた国会議員が入党したり、あるいは入党を希望したりというケースが相次いでおります。自民党が苦しい時に、自民党候補を地方にあってしっかり支えてきた頂いた皆さんにすれば、『なんで苦しい時に自民党を批判していた人たちが今更になって自民党に入ってくるんだ』『おかしいんじゃないか』と。これは納得がいかないんではないかなという風に思います」

自民党の45歳以下の国会議員や全国の地方議員などで構成する「青年局」。その青年局に所属する、国会議員が定期的に開催している昼食会で、佐々木紀青年局長は不満の声を挙げた。

佐々木氏は「小選挙区によっては、すでにそこに現職の国会議員がいる選挙区もあるわけでありまして、簡単に入党を認めることは、これは看過できない!」と強調した。

この発言の背景には今年に入ってから起きた2つの事案がある。

1つ目は、民主党政権で要職を歴任し、小池都知事と希望の党を立ち上げ自民党と全面対決した細野豪志元環境相が、二階幹事長が率いる二階派に1月に電撃入会し「自民党入党」を目指していること。2つ目は、3月20日に自民党への入党届を提出し、22日に了承された無所属の鷲尾英一郎衆議院議員の動きである。2つケースで共通しているのは、細野氏の静岡5区には、岸田派に所属する吉川衆院議員、鷲尾氏の新潟2区には細田に所属する細田健一衆院議員と、すでに自民党の国会議員が存在していることだ。

細野豪志元環境相

岸田政調会長は批判 派閥領袖としての力が問われる局面に

“ポスト安倍”に名を連ねる岸田政調会長は20日の記者会見で、「政策を通じて選挙を行う今の選挙制度の意味合いについてしっかりと考えた上で、こうした入党の動きを考えるべきなのではないかと思う」と、自民党と全面対決してきた政党に所属したにも関わらず、自民党入りを目指す政治家の動きに疑問を示した。 

さらに岸田氏は党の公約づくりを行う会議の中でも「政策で戦っているのに、違う政策を訴えた人たちがボロボロ入党してくるのはいかがなものか。何のための政権公約づくりなのか」との意見が出たことを紹介し、細野氏や鷲尾氏に関する動きを暗に批判した。

岸田氏が率いる岸田派には、細野氏と対抗する吉川氏が所属している。吉川氏は2017年の衆議院選挙で落選していたが、今年3月に繰り上げ当選したことで、岸田派と二階派との間の緊張関係は高まっている。二階氏は「来るもの拒まず」という懐の広さで細野氏を受け入れたが、一方の岸田氏としても自分の子分である国会議員の選挙区が奪われる危険性が出てきた以上、ここで引くことは自身の求心力の低下に繋がるためだ。

自民党 岸田文雄政調会長

安倍首相の出身派閥からもけん制「選挙区から出ないと一筆取るべき!」

一方、同じく20日には、鷲尾氏と選挙区の同じ細田健一氏が所属し安倍総理の出身派閥である細田派も緊急幹部会を開催した。

派閥の事務総長である下村博文元文科相は「清和研(細田派)として鷲尾さんの入党を反対するわけではないが、選挙区では細田健一が(自民党として)ずっと戦ってきた。新潟2区について細田健一がこれからも衆議院選挙で出るということをしっかりと守っていく」と強調し、鷲尾氏の入党を条件付きで認めた新潟県連の意向を理解した上で、鷲尾氏は新潟2区からは今後出馬すべきでないと強調した。

過去に自民党は選挙区に2人の自民党議員がいる場合に、無所属候補として戦わせて、“勝った候補者を公認する”というケースを導入した例もあるが、下村氏は「無所属同士にして選挙を戦う形は認められない」と今後の執行部の動きをけん制した。

細田派幹部からは「選挙区からは絶対に出ないと、鷲尾氏から一筆を取るべきだ」との声や、「入党という手続きがあまりにも簡単に行われていないか?」と不満の声も挙がっていた。

自民党本部(東京都・千代田区)

「玄関が開いてしまった」青年局はルールと丁寧な説明を求める

前述した青年局の昼食会後、佐々木青年局長と小林青年局長代理は記者団に次のように語った。 

要は自民党の批判をして当選をしてきた国会議員が、今こういう時期になって『入党させてくれ』と言った時に、ルールが明確でないし、説明も十分ではない。しっかりそのプロセスについて明確にしてくださいということ。比例で復活した議員であっても、当該小選挙区で、自民党の公認候補ということにするということは、しっかりと認めてくれということを申し上げたい(佐々木青年局長)」 

野党時代から支えてくれたのは、地方議員さん含めて地方の党員と議員です。その方たちに納得いく運用でなければいかんというのが、青年局としての思いです。今日はこれから意見交換をしていこうじゃないかという口火を切ったということ(小林青年局長代理)」 

会合では、今の候補者選定の在り方も含めて、地方の青年局とも議論を交わして提言を取りまとめ、自民党の執行部に提出する方針であることが明らかにされた。

佐々木氏は「細野さんの件はまだ入党に至っていない。入党の手続きにも入っていない。いわば、玄関に入れていない、玄関のドアも開いていない状況なんですよね。地元県連の反発があってね。ただ、今回、鷲尾さんの件は玄関のドアが開いてしまった、こんなことを認めていくと今後、色々な玄関の外で待っている人もいるのでね、そこの問題意識は私の中にはありましたね」と述べ、県連も反対し入党が難しい状況の細野氏のケースの一方で鷲尾氏が県連に条件付きで入党を認められたことに危機感を示していた。

「死に物狂いで」「誰よりも汗をかき」二階幹事長の通達

かつて、自民党の大野伴睦元副総裁は、「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人だ」との格言を述べたとされる。 

細野氏や鷲尾氏の行動は党内にハレーションを巻き起こしている一方で、両者ともに選挙区で自民党議員を倒して当選してきたという強みもある。政界の長老である伊吹文明元衆院議長は20日、「この頃は中選挙区や大選挙区でしのぎを削る地方議員に助けてもらって、あとは公明党の推薦で選挙をしているような体たらくでは、なかなか衆院を支えていくのは難しい」と、若手議員について、後援会づくりが進んでいないことや、公明党や地方議員に頼りすぎている現状を指摘し、苦言を呈した。

伊吹文明元衆院議長

また、二階幹事長は統一地方選挙と参議院選挙を前に、「幹事長通達(当選への王道)」として、国会議員に「当選への王道は、政治に対する候補者自らの情熱を有権者に必死に伝えることである。候補者自身が死に物狂いになれば、まわりも死に物狂いで支える。まずは候補者自身が誰もよりも汗をかき、地道に有権者1人1人に対して、丁寧に、謙虚に、思いや政策を伝えて行くことが必要である」との文書を配布した。 

最近、二階氏は「ボーっと生きてんじゃねーよ!」というNHKの番組「チコちゃんに叱られる」の人気フレーズがお気に入りでしばしば使っているが、こうした通達や発言は若手議員に奮起を促すとともに、一票を有権者から入れてもらえるほど「死に物狂いで」政治活動を行っているのか?という警鐘の意味合いも感じ取れる。

自民党 二階俊博幹事長

もちろん青年局が訴える公正なルール作りや、丁寧な説明は必要だ、それでなければ組織というものは成り立たないだろうし、発言や政策を変遷させてきた政治家は批判もされるし、何よりも国民にきちんと理由を説明する必要があるだろう。 

一方で、最後に政治家が試されるのは選挙になる。そこでどういった結果を出せるのかは、任期中のその政治家の通知表と言っても過言ではない。この自民党内の動きが最終的にどういう顛末を迎えるのか、今後も注視していきたい。

(政治部・与党担当キャップ 中西孝介)