「小学校の卒業式ではかま」に賛否…ブームの背景と“自粛呼びかけ”の理由を聞いた

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  • 小学校で卒業式にはかま姿で出席する女子児童が増加。5・6年生の約半数が「着たい」
  • 一部の自治体では保護者に自粛を呼びかけ…理由は「経済的負担」だけではなかった
  •  着物レンタル業者「2014年度から2016年度にかけて急増」気になる価格は?

3月も下旬となり桜が開花し始め卒業シーズンを迎える中、小学校の卒業式でのある服装が議論を呼んでいる。

それは、女子大学生の卒業式での定番スタイルである「はかま」。
近年、晴れの舞台を彩る服装として小学生の間でもブームとなり、はかま姿で卒業式に出席する女子児童が増加している。
写真スタジオで事前に記念撮影をしたり、SNSにはかま姿を投稿するなど盛り上がりを見せる一方で、着用を控えるよう呼びかける自治体が出てきたというのだ。

ネット上では、「小学生には贅沢なのでは」「一生に一度のことだから、華やかな格好をしたい気持ちは当然」と賛否が分かれているが、卒業式でのはかま着用の動きが小学生にも広まったことにより、自治体ではどのようなことが懸念されているのか。

まずは、小学生の間でのはかま人気の背景を和装衣装の販売・レンタル事業を行う「一蔵」の広報担当者に聞いた。

2014年度から急増「はかま姿のヒロインが登場する漫画がきっかけ」

一蔵では、成人式の振袖や卒業式のはかまを扱う「Ondine オンディーヌ」というブランドを運営し、そこで小学校卒業式のレンタルはかまを展開している。

はかまと着物、はかま帯、長襦袢、重衿、草履、巾着からなる7点セットで、サイズは身長125cmから対応していて、ウェブや電話での事前予約後に店舗で試着をするという流れだ。
取扱店舗は北海道、宮城、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫となっている。

色とりどりのはかま姿(画像はイメージ)

ーー小学生向けのプランを始めたのはいつからですか?

世間の需要を受けて、2014年度よりレンタルを開始いたしました。


ーー問い合わせは年々増えている?

レンタル開始の2014年度から2016年度にかけて急増し、その後は横ばいとなっております。
問い合わせは、秋頃からいただき始めます。小学生は体の成長が早いため、あまり早い時期からの予約はございません。


ーー小学校卒業式ではかまが人気な理由は何だと思いますか?

漫画『ちはやふる』の人気およびその実写映画化(2016年)で、女子高校生がはかま姿で競技かるたに挑む姿が描かれ、はかまがヒットし、口コミやSNSで情報が拡散されて、さらにブームが広がったと考えております。
加えて、昔に比べ小学生の体格が良くなり、はかまが着映えするようになったことも要因と考えております。


ーー「高価である」との意見がありますが、はかまレンタルの料金はどれくらい?

当社では18,000円、22,000円、25,000円の3つの価格帯をご用意しております(いずれも税抜)。人気が高いのは、18,000円のセットプランです。
洋装を購入した場合も同じ位の価格帯が想定され、購入しても実際には卒業式だけの着用で終わることが多いため、はかまレンタル・洋装購入でかかる費用は、結果的に同程度と見ております。


また、人気のはかまの種類については、2016年頃まではパステルカラーや大柄の華やかで可愛らしい色・柄が人気だったが、最近は自粛の流れの影響か、大学生が着る大人っぽい落ち着いた色(赤・ピンク・白・黒など)や小花柄などを好む小学生も増えてきているという。
また、「学校の方針を受けて、キャンセルしたい」という問い合わせもわずかに寄せられているそうだ。

約5割の女子児童「はかま着たい」 教育委は経済負担や健康面を懸念

小学校卒業式の服装の変化を受けて、名古屋市教育委員会は昨年1月に、市内16の小学校で5・6年生の児童と保護者を対象にアンケート調査を実施。

卒業式で着用したい服装に、男子はスーツなどの洋装が5年生で4割超、6年生は5割超となり和装は2割に届かなかったが、女子は両学年ともに5割近くがはかまを含む和装を選び、洋装や中学校の制服という回答を上回った。
また、保護者は「子どもが希望している」または「卒業式にふさわしい」という理由から卒業式の服装を選択していて、「華美になりすぎている」「経済的負担が大きい」と考える保護者は、ともに4割以上いることもわかった。

この結果から、和装を希望する女子児童が多く、保護者は過熱するブームを心配している実態がわかったが、名古屋市教育委員会は、自粛を呼び掛けてはおらず、「市全体として一律的に規制などをすることなく、学校の実態に応じて学校ごとに対応を検討する」としている。

卒業式での和装と洋装(画像はイメージ)

では、実際にはかまの自粛を呼び掛けている自治体は、どのような点を問題視しているのだろうか。

宮城県東松島市では、昨年12月の市議会で市長が小学校卒業式でのはかま着用について問われ、親の経済負担への心配に加えて「(一部の児童が)はかまを着用できないことで劣等感を感じ、卒業式を心から喜べていないのではと危惧している」と答弁している。
東松島市教育委員会の担当者に、自粛の呼び掛けの理由について聞いた。


ーーどのように「自粛」を呼びかけている?

正確な開始時期はわからないのですが、2~3年ほど前から、年度初めに各小学校の校長から保護者に向けて、学校の基本方針を口頭で説明しています。
早くからはかまを予約される方もいらっしゃいますから、その前にお伝えするようにしています。


ーーはかまが問題視されている理由とは?

現場からは、はかまの着崩れによって児童が卒業式に集中できないという報告がありました。
また、着付けは早朝からの支度になります。普段の生活リズムとは異なる状態で、身体が締め付けられる服装をして長時間過ごすとなると、児童に過度の負担がかかります。
トイレでの着脱、階段の昇降、卒業証書授与の動作など、式の前後や最中も職員の手助けが必要となり、何より最後の学習発表の場でもある卒業式で、児童たちが十分な力を発揮できないからです。
卒業の言葉や合唱を表現できる、普段着に近い服装がふさわしいという方針のもと理解を求めていますが、最終的な判断は保護者に委ねています。

はかまの「自粛」を呼びかける自治体は、他にもある。

愛知県半田市では、着崩れや壇上での転倒、着慣れない服装で体調を崩すことが心配されるとして、2016年度からはかまの自粛を呼びかけている。
その後、はかま姿の児童の数は落ち着きを見せ、担当者が把握している範囲では、20日に行われた今年度の卒業式にはかま姿で出席する児童はいなかったという。

さらに、京都市教育委員会は、卒業式が学校教育の一環であることを踏まえ、経済的負担に対する配慮が必要との考えから、市内の小学校に対して「華美になりすぎないような服装で式に臨んでほしい」と保護者に依頼するよう伝えている。
2016年頃から各小学校で文書などを通して呼びかけているが、これまでに保護者からの苦情やトラブルの報告はないという。


自粛を呼びかけているどの自治体も、卒業式での服装に規定はなく、「最終判断は保護者」としている。また、これまで目立ったトラブルは起きておらず、保護者には一定の理解を得ているようだ。

児童の気持ちと教育委の懸念…この「小学校卒業式でのはかま着用」をめぐる議論をみなさんはどう考えるだろうか。卒業生たちには、6年間過ごした学び舎を笑顔で巣立っていってほしい。