“未成年の妊娠”は虐待のリスクを高める…データに基づいたアメリカの対策

カテゴリ:暮らし

  • アメリカでは未成年者の妊娠は深刻な社会問題
  • 未成年者の妊娠は虐待を含めた様々な問題のリスクを高める
  • データを元に効果ある対応を模索するアメリカ

つい先日、重度のやけどを負った3歳の長女と、5歳の長男を自宅に置いて、同居人の男(21歳)とパチンコに興じていた母親(22歳)が逮捕されたニュースが日本で話題になった。

ここのところ日本では児童虐待のニュースが絶えないが、その多くが、比較的年齢の低い保護者による被害(もちろんそうでない事件も多いが)であることを多くの人が気づいているのではないだろうか。

今回の事件の母親も、長男を出産した時には17歳というかなり若い年齢である。

未成年の妊娠は“深刻な社会問題”

アメリカでは、未成年者の妊娠、いわゆるTeen Pregnancy (13−19歳での出産)は社会的、政治的、経済的な影響を及ぼす深刻な社会問題とされている。

なぜ深刻な社会問題として認識され、様々な取り組みが行われているのか。それは単に、Teen Pregnancyが生み出すネガティブな結果が長年のデータによって示されているからである。

妊娠の結果、低学歴、無職となり、貧困に陥るケースは私の職場でもよく目にする。不定期な妊婦健診や母体の未熟さゆえに低体重、未熟での出産のリスクが高まり、さらに発達障害、ヘルスリスク、虐待のリスクも飛躍的に高まることが分かっている。

Teen Pregnancyによって生まれた子どもが、同じサイクルを繰り返すリスクも高いことが認知されている。これらの結果は、最終的にはヘルスケア、里子制度、司法制度、生活保護、税収減につながるため、納税者への影響も明らかだ。

また、幼少期に虐待、ネグレクトを受けた少女はそうでない少女に比べ、Teen Pregnancyのリスクが圧倒的に高くなり、またその結果生まれた子供は、母親から虐待を受けるリスクが高まることも分かっている。

データから効果ある対応を模索

アメリカでは、教育機関や政府機関、病院などを通して行われた長期間にわたるリサーチを元に、何が虐待に繋がり、どのようなアプローチで対応していけば虐待を減らすことができるのか、根拠に基づいた対応(evidence-based practice)が行われているのが、一つ日本とは大きな違いではないだろうか。

データを元に、どのような地域で、どのような未成年者に重点を置いて対応すれば効果があるのか、デザインされているのだ。Teen Pregnancyを防ぐための動き(いわゆる性教育)はもちろん行われているが、ここでは子供が生まれたあとの対応についていくつか紹介したい。

例えば、アメリカでは病院でAdolescent Parenting Program とよばれる未成年の母親とその子供たちを対象にした特別なクリニックを併設し、彼女たちのニーズに合わせたサービスを提供している。他の一般クリニックでケアを受ける母親とその子供たちに比べて虐待の報告が圧倒的に少なく、予防接種の向上や発達障害への迅速な対応など明らかなベネフィットが理解されている。

他にも、妊娠早期から未成年者をナースやピアカウンセラーとマッチさせ、子供が生まれてある程度の年齢になるまで定期的な家庭訪問やクリニックへの同行を行うことによって母親に寄り添い、サポートしていくサービスなどが多くの自治体で行われている。これらは再妊娠の防止、高校卒業、就職、育児能力の向上につながっている。

その他、保育機関を備えた高校の充実、高校教育への育児教育の導入なども積極的に行われており、Teen Pregnancyが生み出す負の連鎖を断ち切るべく、様々な取り組みが行われている。

虐待の根底に何があるのかきちんとしたデータを集積する環境整備を行った上で、それを元に見合った対策をとっていく必要が大事だと考えられる。アメリカでは児童虐待を公衆衛生問題の一つとして捉え、タバコとガンとの関係や、食生活と生活習慣病との関係を研究するデータ同様、何が虐待につながるのかをデータ化することによって効果ある対応を生み出していると言える。