2年連続で世界大会出場決定!世界と戦う“中高生”ロボコンチームをミスミが支援する理由

カテゴリ:ビジネス

普通科の女子高生がリーダー

大型で、複雑な機能を持ったロボット。

このロボットを作ったのは工業科ではなく、普通科の学校に通う約20人の中学生から高校生がメンバーのロボコンチーム『SAKURA Tempesta』だ。チームを創設した中嶋花音さん(高校3年生)は、ロボット競技の世界では珍しい“工学女子”。

SAKURA Tempesta創設者の中嶋花音さん

中嶋さんは高校1年生の頃、アメリカ・ミネソタ州に留学中、国際ロボット競技会『FIRST Robotics Competition(以下FRC)』と出会った。当初は映像製作がやりたくてチームに参加したというが、「More Than Robots(=ただのロボット競技会ではない)」という大会コンセプトの通り、始めてみるとロボット競技とFRCへのイメージは180度変わり、その面白さに魅了されたという。

帰国後、日本でもゼロからチームを作ることにした中嶋さん。SNSなどで募集を呼びかけ、国内唯一となる創設者が女性のFRCチームとなった。

SAKURA Tempestaが戦うFRCは15歳~18歳が参加(FIRST HPより)

毎年春に世界各地で開かれるFRCは、20年以上の歴史がある世界的なロボット競技会だ。青少年の科学技術と人間性を育てることを目的とする米国のNPO法人FIRSTが運営する、年齢別の4つのプログラムの最高峰で、高校生(日本では中学3年生〜高校3年生)を対象とした大会。昨シーズンは北米やイスラエルやトルコなどの中東、中国など世界中から3600チーム、9万人を超える学生が参加した。年々、注目は高まっているという。

毎年ルールとゲーム内容が変わり、大会に定められた動きができるロボットを僅か6週間で製作。ルールやゲーム内容はもちろん英語で発表され、ロボット製作能力だけではなく英語の能力も求められる。

2018年の世界大会にて

その中で昨シーズン、SAKURA Tempestaは、日本チームとして初めて地域大会を勝ち抜き、アメリカで開かれる世界大会へ出場した上、初出場チームが取得できる3つの賞(地域大会での「Rookie All Star Award」「Highest Rookie Seed Award」、世界大会での「Rookie Inspiration Award」)を全て受賞する輝かしい成績を残した。

チーム名の由来は女性らしさと日本らしさを併せ持つ「桜(SAKURA)」と、イタリア語で「嵐」を意味するtempestaという単語をかけ合わせたもので、「大会に桜の旋風を巻き起こしたい」という願いを込めたと話していた。

なんとも日本らしい美しい名前だ。

完成したロボットの大部分を占める部品とは?

SAKURA Tempesta技術リーダーの中島悠翔くん

取材をしたこの日、SAKURA Tempestaは、FRCに定められた6週間のロボット機体製作期間が終わり、3月27日からハワイで行われる地域大会に向け、つかの間の休息を味わっていたところだった。

前述のようにFRCでは毎年ルールやゲーム内容が変わる。昨シーズンよりも複雑な動きを求められるようになったという今年のロボット。

チームの技術リーダー、中島悠翔くん(高校2年生)は「去年と比べてロボットがやらなくてはいけないことが増え、操縦も大変だし、つくるのも製作期間ギリギリまで時間がかかりました」と明かし、設計を担当するメンバーの立崎乃衣さん(中学2年生)も、「去年とは違い、48cmの段差を乗り越えないといけないので、そこが一番苦労しました」と難しかった点を話した。

SAKURA Tempestaは、完成させたロボットの様子を以下の動画にまとめている。

素早く細やかに複雑な動きをするロボット。

このロボットの部品の7割以上は、機械部品の製造・販売などを行うミスミグループ本社(以下ミスミ)のものだ。精密機械部品から、工具や手袋など、ものづくりの現場で使用する製造副資材や消耗品まで、自社ブランドのみならず、国内で3,300社を越える他社ブランド、2,070万点以上の品揃えを誇るECサイトで知られている。機械や生産ラインなどの設計業務に関わる技術者にとって、なくてはならない存在といっていい。

また同社は、アジア、米州、欧州を中心とした世界各国に、営業拠点・配送センター・生産拠点を持ち、サービスを展開している。

SAKURA Tempestaで設計などを担当する立崎乃衣さん

ミスミの部品を利用できることを何よりも喜んでいるのが、立崎さんだ。中学2年生の立崎さんがなぜミスミの存在を知っていたのだろうか。

機械設計職の父の影響で、自宅にあったミスミのカタログを読み、気になった部品があれば父に聞く。そんな幼少時代を過ごし、小学校時代からロボット製作を続けてきたという立崎さん。

ミスミは一般消費者(個人)向けの販売は行っていないため、当時立崎さんは「市販されているものを、自分で加工していました」と苦労を明かしたが、今では団体として活動することで、実際にミスミの部品を使えるようになったことを、とても喜んでいた。

ロボット製作だけでなく、資金調達も

完成したロボットにはスポンサーのロゴも貼ってある

FRCではロボットの製作キットを含む参加費や、ロボットの製作費なども自身で調達する必要がある。参加費だけで言っても、地方大会で6000ドル、そこで勝ち進んだ後の世界大会で5000ドルと、学生には厳しい条件だ。そのためスポンサー探しや、クラウドファンディングで資金を集めたという。

スポンサー探しでは、500社くらいにメールで支援を求める連絡をしたが、返事があったのは80社ほど。断られるたびに「話を聞いてもらえなかった…。どうしよう…」と落ち込んでいたという。
その中でも、アポイントが取れた僅かな数の企業へ実際に訪問し、プレゼンを続ける中で「企業側としても支援したくても出来ない状況だったり、企業への説明の仕方などがわかるようになった」と話し、さらに企業と関わり合う中でビジネスマナーも少しずつ分かってきたと笑顔で語る中嶋さん。
昨シーズンは、定められた期日の10日ほど前でも、集められた額は参加費の半額程度。締切直前に2社の協賛を得ることができ「本当にギリギリでした」と、今では笑い話だ。

World Robot Summitにて、打合せのためミスミブースを訪問

それでは、一体なぜミスミはSAKURA Tempestaの支援を決めたのか。
その理由について「当社の社会貢献のテーマは“ものづくり人材育成”への貢献にあります」と明かすミスミ。次世代の製造業を担う“若手ものづくり人材”を応援するため、二足歩行ロボット格闘競技大会 ROBO-ONEへメインスポンサーとして協賛や、延べ1700団体を超える団体に対してそれぞれに5万円分の自社商品を提供する『ミスミ学生ものづくり支援』を行っているという。

その中で、様々な団体への支援の一環で出会ったSAKURA Tempestaの第一印象を、「はじめて先方からご連絡を頂きお会いした時には、とても中高生とは思えないシッカリした応対と説明と、幼少期から当社カタログを愛読頂き、当社のファンだと言ってくださる女子中学生がいらっしゃることに只々驚きました」と語るミスミの担当者。

「話を聞くうちに、彼女たちが単にロボットの大会に出場しているだけではなく、日本の中高生がロボティクスに触れる機会を提供すること、さらには“理工系分野における女性活躍推進”のロールモデルとなることを志し、子供向けのものづくりイベント開催をはじめとしたアウトリーチ活動にも力を入れていることを知りました。

当社のものづくり人材育成への想いとも親和性が高く、SAKURA Tempesta様の活動をご支援させて頂くことを決めました。こうした取り組みを積極的に後押ししてくれるのは、この会社の良いところだと思います」

チームと関わるようになって僅か半年の間でも、メンバーの成長を感じると話す担当者。

「これだけ活き活きと楽しく社会での実践的学びを、しかもグローバルに積まれているのを見ると、私は文系の道を選びましたが、学生の頃にこのような機会があれば工学をもっと身近に感じていたのではと思いますし、より多くの方に、こうした活動を知って頂きたいと心から思います」

様々な部品をミスミで注文した

立崎さんはロボット製作において、ミスミの提供する新サービス『meviy』も利用していた。
ロボット設計を担当する中島くんや立崎さんは、建築などの世界でも使われるCADと呼ばれる設計ソフトを自在に使いこなす。『meviy』は3DCADで設計し、そのデータをWebにアップロードするだけで、部品の形状を認識して即時に見積もりをだし、発注することができる新サービスだ。

ミスミはFA製造装置や金型を構成する精密部品を標準化し、ウェブや紙のカタログを見て、型番や寸法を指定するだけですぐに注文できるユニークなビジネスモデルにより業界に革新を起こし、成長を続けてきた。この受注製作の部品はサイズのバリエーションを含めると800垓(1兆の800億倍)のアイテム数を誇り、そのうちどの注文がきても標準納期は受注後2日目出荷というから驚く。

しかし機械部品のうち、標準化されているのは半数ぐらい。その他は、一個一個、図面を書いて発注する必要がある。しかし、こうした部品の発注に対しても『meviy』を利用すれば、標準化されていない部品でも簡単に発注でき、非効率を解消できる。

「今までのサービスだと作れる部品の形に制限があったので、meviyは色んな形状に対応していて嬉しいです。今回は特徴ある形の板にmeviyを使いましたが、今度はもっと立体的な形状も試してみたい」と話していた立崎さん。

さらに「早いものは注文した翌日に届くんです。納期が他と比べて遅れることもないので、信頼して使えます」と、ミスミが強みとする確実短納期も体験していた。

「ロボット製作期間が終わる直前だったりすると、『あと2日しかない』という状況があったりするので、そういう時に信頼できるかどうかはとても重要です」と、立崎さん。

彼女たちの夢と将来ーー

いよいよ3月27日から地域大会が始まる

SAKURA Tempestaは、3月27日から4日間に渡ってハワイで行われるFRCに向けて、間もなく旅立つ準備をしている。

創設者の中嶋さんは高校を卒業するため、今年がメンバーとして最後の参加となる。中嶋さんは留学時代・昨シーズン・今シーズンと、3度目のFRC参加となるが、今では日本でのFRC地域大会開催の実現に向けて、日本法人FIRST Japanの委員としても活動するようになっている。

「元々の夢は生物が好きで、バイオメディカル・エンジニアリングの分野に興味がありました。ただ、FRCに関わるようになって、FRCの参加条件の中で始めたアウトリーチ活動を通して、子どもたちにロボットづくりを教える経験や、留学での経験の中で“教育”にも興味が出てきました」と、FRCを通して新たな世界を見つけたと話す。

今シーズンのロボットの挑戦はこれからだ

今シーズンの大会でのロボットについて「去年のメンバーが卒業してしまうなかで、あまりうまくいくとは思ってませんでしたが、ある程度のロボットを作れたので、試合の成績は残せるかなと思っています」と語った中島くん。そして「ロボットは去年よりルールも難しく動かす精度も難しいんですが、このまま予選大会でもしっかり動いてくれればいいなと思っています」と控えめに話す立崎さん。

将来は教育やロボットに関わるような仕事に付きたいとそれぞれ話す彼らは、今シーズンのFRCを通してどんな世界を見つけるのだろうか。


FRCはなぜ世界中の中高生を魅了するのか?大会の詳しい解説はこちらから。

Sakura Tempestaの日々の活動や、大会での様子はこちらから。

「ものづくりの、明日を支える。」ミスミのHPはこちらから。

※4月5日追記※
日本時間3月31日、SAKURA Tempestaはハワイで行われたFRCの地域大会「Hawaii Regional」でchairman’s awardを受賞した。この賞はFRCの大会の中で最も権威のある賞で、この賞の受賞を受け、2年連続で世界大会への出場が決定した。
SAKURA Tempestaの活躍はまだまだ続く。