厳しい自衛官募集への協力めぐり法改正論が浮上 安倍首相の“改憲直結”発言への賛否と余波

カテゴリ:国内

  • 安倍首相の「自衛官募集に6割が非協力…改憲を」発言の波紋
  • 自民党の所属議員への「地元自治体の対応確認を」通達に賛否
  • 自衛官募集の厳しい現実に自民党内で法改正論浮上

安倍首相が自衛官募集への“非協力の実態”を問題提起 与野党から反発

残念ながら(自衛隊の)新規隊員募集に対して、都道府県の6割以上が協力を拒否しているという悲しい実態があります

安倍首相は2月10日の自民党大会でこのように、防衛省が行う新規自衛官募集に対して、都道府県の6割以上が協力を拒否していると訴えた(のちに指摘を受け「自治体の6割以上」に修正)。その上で、自衛官募集に関する問題を解決するためには、「憲法にしっかりと自衛隊と明記して違憲論争に終止符を打とう」と強調した。

自民党大会で挨拶する安倍首相(2月10日)

この発言の背景には、安倍首相の悲願である「憲法改正」の議論を、遅々として進めようとしない国会に対する苛立ちがあったとうかがえる。

ただこの発言については野党から、「住民基本台帳の閲覧までなら認めている自治体を入れれば9割が協力しているのだから誤認だ」と批判する声があがったほか、安倍首相が“自衛隊募集への協力拒否と憲法改正を結び付けた”ことについては、与党内からも異論が噴出した。

自民党の石破元幹事長は15日、「恐ろしい論理の飛躍だと思う」と述べたうえで、「(自衛官は)ものすごく苦労しながら、(地方自治体と)信頼関係を作っている。それを上から“憲法だ”という話をすると、一番しんどい目をするのは現場の募集の隊員たちだということをよく知るべきだ」と批判した。

自民党・石破元幹事長(2月15日)

また公明党の斉藤幹事長は、「自衛隊法の趣旨の中で創意工夫していくべきで、憲法とは直接関係ない」と指摘している。

自民党は自衛官募集の協力状況の確認を要請

一方、自民党は14日、安全保障調査会長の小野寺前防衛相と山本国防部会長の連名で、党所属国会議員に対し、自衛官募集に関する自治体の協力状況を確認するよう文書で要請した。また「一部の地方議会では左派系会派からの要求に応じ、情報提供を行った行政側が謝罪を行う事態にまで発展しており看過できない」と主張した。

これについても野党側からは、「自民党による自治体への圧力だ」と批判が出ているが、自民党の加藤総務会長は、「それぞれの地元が(自衛官募集の実態が)どうなのかを把握するのは我々として一つの仕事ではないか」と理解を示した。

自民党・加藤総務会長(2月15日)

こうして安倍首相の発言を機に議論となっている自衛隊の募集問題だが、結果として、少子化に加え、民間の求人も豊富になっている中、自衛隊の募集が厳しいという実態を浮き彫りにした形だ。では、自衛官募集の厳しい現状を変えるには、どうすればよいのか。

中谷元防衛相が自衛隊募集のあり方について「法律改正」を主張

こうした中、自衛官出身である自民党の中谷元防衛相は15日、次のように提案した。

律では地方への委託ということで決まっているので、そういうことでやっていただければいいと思っている。条文の中でそれが強制かというとそこまで書かれていないので、こういうことを徹底する上においては、法律を改正してきちんと法律で決めることで自治体でそれぞれ迷いとか混乱がないようにすべきだ」 

自民党 中谷元防衛相(2月15日)

自治体による、自衛官募集に関する資料の防衛省への提供は、自衛隊法などで定められているものの、義務とは明示されておらず、募集を滞りなく行うためには。住民基本台帳法なども含めた法令改正が必要だという指摘だ。中谷氏はさらに続ける。

(自衛官募集の)現場で起こっていることは憲法改正がないからではなく、個人情報保護法など国と地方の権限の関係において、自治体として不明確なところがあるから進んでいないところがある。そういう点はきちんと法律を改正してやればいいのではないか

その上で、「憲法は憲法の議論として自衛隊の位置づけをやっていかないといけない。ことさら自治体の募集に結び付けると、各地で色々な議論や論争が起きて(自衛官の)募集に影響が出る可能性がある」と安倍首相の発言に懸念を示した。

現状では、自衛官の募集に関して、国と地方自治体という行政の関係を考えれば、国から自治体に命令することは難しい。しかし今後、自衛官募集の厳しさがさらに深刻化する恐れもある中、状況改善の一手は必要になってくるだろう。 今回の騒動をきっかけに、政府自民党内で今後、自衛隊法や住民基本台帳法など、自衛官募集に関係する各法の改正を求める動きが本格化する可能性がある。

(フジテレビ政治部 自民党担当 門脇功樹)