「金正恩委員長との関係は良い」とトランプ大統領が言った日、LAでナイトストーカーズ“MH-60/MH-6特殊作戦ヘリ”が大演習中

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  • 米朝首脳会談開催場所:トランプ米大統領は警備重視のダナンではなく、北朝鮮 の希望に“譲歩”
  • 米朝首脳会談は、“開催することに意味?”
  • 中露寄りになるベネズエラは、米国本土を脅かす?

トランプ大統領が金正恩委員長に“譲歩”

トランプ大統領:
多くの課題が残されているが、金正恩委員長との関係は良い。私が大統領になっていなければ、今ごろ北朝鮮と戦争になっていた。

ハノイ

トランプ米大統領は5日に行った一般教書演説の中で、米朝首脳会談の日程を2月27・28日と明言するとともに、金正恩委員長との関係の「よさ」を強調した。さらに、トランプ大統領は8日、自身のツイッターで米朝首脳会談の開催場所について、ベトナムの「ハノイで行う」と表明した。

今回の米朝首脳会談で北朝鮮の核・ミサイル、そして、拉致で何らかの進展が期待できるのか、予断は許されない状況だ。
開催場所は、当初、2017年にAPECを開いたベトナム中部のダナンが有力視されていたが、北朝鮮側が大使館のあるハノイでの開催を強く希望したため、ダナンでの開催を提案していた米国が譲歩し、米大統領自らが明らかにした形となった。

ダナン

米大統領の国外移動は、一大軍事オペレーション

米大統領の国外への移動は、一大軍事オペレーションでもある。大統領が乗機すると「エアフォース・ワン」と呼ばれるVC-25型機だけでなく、全世界の陸、海、空に展開する米軍に指揮を行うための空飛ぶ指揮所、E-4Bナイトウォッチも移動する。

E-4Bナイトウォッチ

また、米大統領が訪問先で使用するのも、分厚い装甲と特別な通信機材で知られる、通称、『ヴィースト』だ。会談場所について、米政府が、警備を重視したのは当然だろう。それ故に、一度は「ダナン」の名が上がったのだろうが、例えば、非核化等で、大きな進展が得られるという見通しもないまま、北朝鮮の“希望”に、米大統領が“譲歩”したということならば、その理由は何だろうか。

逆に言えば、北朝鮮に“譲歩”してでも米側は、米朝首脳会談を開催する“必要性”を感じているかもしれない。

防衛省の資料によれば、北朝鮮は2017年9月以降、核実験を行っていない。さらに弾道ミサイルの発射試験も2017年11月以降、行っていないとされる。
密かに何らかの活動を行っていたとしても、2017年当時に比べれば、“小康状態”にも見えるかもしれない。この“小康状態”を維持するための米朝首脳会談であるなら、当面は開催すること自体に意味があると考えられても不思議ではないのかもしれない。

米国の安全保障上の懸念 ベネズエラ

ではトランプ米大統領が、もしも北朝鮮とは当面、“小康状態でいい”と考えたのなら、それより懸念される安全保障上の懸念があるのだろうか。

南米・ベネズエラでは現在、左派と言われるマドゥロ大統領に対抗して、野党指導者のグアイド国会議長が、暫定大統領に名乗りをあげたのに対し、英国や仏独など、欧州の20か国が承認を表明し、トランプ政権もグアイド国会議長を支持。一方、ロシアや中国がマドゥロ大統領側に立っている。

ベネズエラ軍の急激な中・露寄り

もともとベネズエラは、米F-16戦闘機・仏AMX30型戦車・英スコーピオン偵察戦闘車などを装備し、その軍隊は“西側との関係の深さを象徴するような存在”だった。しかし最近、相次いで公開されたベネズエラ軍の演習・訓練の映像を見ると、その印象は一変する。

BTR-80系列の装甲歩兵戦闘車(前)VN-4治安用軽装甲車(後)

例えば、ロシア系のBTR-80系列の装甲歩兵戦闘車、それに中国製のVN-4治安用軽装甲車が映りこんでいるなど。また、米ベル412EPまたは412SP型ヘリから、兵士が水の中に飛び込む水面には、105mm砲を備えた中国製のVN-18水陸両用戦車、それに30mm機関砲を備えたVN-16水陸両用歩兵戦闘車の姿もあった。

105mm砲を備えた中国製VN-18水陸両用戦車

ベネズエラ空軍は、マドゥロ大統領?グアイド暫定大統領?

航空軍事評論家・石川潤一氏:
中国製のK-8VVカラコルム高等練習機兼軽攻撃機。

K-8VVカラコルム高等練習機兼軽攻撃機(ベネズエラ空軍)

石川潤一氏が指摘するのはベネズエラ空軍の練習機だ。ベネズエラ空軍は、ロシア製の強力なSu-30MKV戦闘攻撃機を導入しており、同系列のSu-30MKK戦闘攻撃機を配備している中国の練習機は、パイロット育成に都合がよいという判断があったのかもしれない。

ベネズエラ空軍のジャネス将軍が2月2日、SNSで「グアイド暫定大統領承認」を打ち出した背景には、軍隊を急激に中・露寄りにしようとしているマドゥロ大統領への反発があったのではないだろうか。西側の装備で慣れ親しみ、それ故に西側諸国の軍人とも交流があった軍の高級幹部にとっては、足元が崩されるような変革と感じていても不思議ではないだろう。

露ブラックジャック戦略爆撃機のベネズエラ飛来の意味

2月6日、マドゥロ大統領は「我々はアメリカ帝国のトランプ大統領によって脅かされている。彼は、ベネズエラに対する侵略を準備しているといった」と非難した。だが、ベネズエラ軍が中・露よりになれば、米国そのものの安全保障にも、大問題だ。

Tu-160ブラックジャック

昨年12月10日には、ロシアの戦略爆撃機、Tu-160ブラックジャックがベネズエラに展開した。搭載できるのは、射程4000km以上のKh-102、Kh-55SM核弾頭搭載巡航ミサイルや、通常弾頭のKh-101、Kh-55巡航ミサイルだ。

ベネズエラのシモン・ボリバル飛行場からワシントンDCまでは3700km。米政府にとっては、とても無視できない動きだっただろう。

誰に見せる?夜間、ロサンゼルス市街地での訓練

2月4日、米・ロサンゼルスの市街地で夜間、軍用ヘリコプターが住宅地の近くを飛ぶ訓練が市民に目撃された。
その映像はSNSで拡散し、市街地で兵士を載せ、無灯火で飛行したこのヘリコプターについて、前述の石川潤一氏は、米陸軍の特殊部隊が使う「MH-60K型かMH-60M型ではないか」と指摘する。

一説には、この部隊は、米陸軍第160特殊航空連隊、通称「ナイト・ストーカーズ」といい、ほぼ同時期に同市内では、同部隊のものとみられるMH-6リトルバードという特殊作戦ヘリを使って、兵士が建物に突入する訓練の模様も市民に目撃されていたという。

2月9日まで続いた訓練の目的は定かでないが、米国内で特殊部隊が大規模な作戦を行うとは考えにくいので、どこかの国の市街地で、近々、空から特殊部隊が作戦を行うための訓練、または、政治的にそう見せかけようとしているという風にも受け取られるかもしれない。

SNSで世界中に動画が拡散したこの特殊部隊の訓練を、ベネズエラのマドゥロ大統領がどのように受け止めたか、興味深いところではある。

【動画】「能勢伸之の週刊安全保障」(2月9日配信)を見る

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