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8割以上が育成に苦労…外国人労働者と“共生”するために一番やってはいけないこと

カテゴリ:ワールド

  • 2019年4月施行の「改正入管法」で外国人労働者は増加へ
  • 言語だけではなく価値観の違いも障壁に
  • 日本人同士のような「阿吽の呼吸」に頼らず、伝える努力が重要

ここ10年間で約3倍に増加した外国人労働者

労働力人口の減少が懸念される日本で、存在感を増しているのが外国人労働者たち。

厚生労働省の発表では、2018年10月末時点の外国人労働者数は146万463人で、企業の届け出が義務化された2007年以降で過去最高を記録。国籍別では、トップは中国(38万9,117人)で、ベトナム(31万6,840人)、フィリピン(16万4,006人)と続くほか、ブラジル、ネパール、韓国、インドネシアなどが上位を占めており、多国籍化していることが見てとれる。

厚生労働省が発表する外国人雇用状況の届出状況を基に作成。数字はいずれも毎年10月末時点

2008年からの10年間で約3倍に増えた外国人労働者だが、2019年4月に施行される「改正出入国管理法」(改正入管法)の影響で、今後はさらに増加するとみられる。この法改正では「特定技能1号」「特定技能2号」という在留資格が創設され、これまで認められなかった単純労働分野での就労が可能となる。

・「特定技能1号」(業務に関する一定の知識や技能が取得条件。在留期間は通算で最長5年)
・「特定技能2号」(専門性ある熟練した技能を持ち、所轄省庁が定める試験の合格が取得条件。在留期間は更新可能)

総務省の統計では、2018年12月時点の国内の就業者数は6,656万人。外国人労働者数の146万人で割ると約46人に1人が外国人という計算だ。改正入管法の施行を考えると、日本の“外国人労働者依存”はますます強まるはず。
こうした中、すでに外国人労働者を受け入れている現場の実態を調査した興味深いデータがある。

現場では8割以上が育成に苦労

マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)を提供する、株式会社スタディストが行った「外国人労働者の育成に関する課題調査」では、5年以内に外国人労働者の育成に携わった男女735人の8割以上が「外国人労働者の育成で苦労した」 と回答している。
(調査実施時期:1月18~20日。調査対象:建設業・製造業・卸売業・小売業・宿泊業・飲食サービス業のいずれかに勤務)

「外国人労働者の育成において苦労したこと」に対する回答

苦労した理由では、回答者の51.8%が「コミュニケーションが取りづらかった」、46.7%が「口頭での指示が正しく伝わらなかった」と答えており、互いの意思疎通が課題となっていることが分かる。このほか「生活習慣や文化の違いに戸惑った」「時間に対してルーズだった」との回答も多かった。

「外国人労働者の育成において役に立つと感じるもの」に対する回答

また「外国人労働者の育成において役に立つと感じるもの」という質問には、回答者の49.7%が「互いの文化を理解する時間」と答えたほか、49.4%が「動画や画像を用いた業務マニュアル」、44.6%が「外国語のマニュアル」を選択しており、教育環境の整備を求めていることがわかる。

外国人労働者の育成に苦労するのは言葉の壁だけではなさそうだ。そして今後“共生”していくために雇用する側が改善すべきことは何なのか。株式会社スタディストの担当者に話を聞いた。

言語だけでなく価値観の違いも障壁に

――外国人労働者の育成に日本人が苦労を感じるのはなぜ?

「言語の壁」だけでなく「生活習慣や文化の違いに対する戸惑い」を感じる人も多いです。これは外国人労働者が同僚となることで、仕事に対する考え方や宗教面でのこだわりなど、日本人同士では馴染みがない出来事に触れる機会が増えるためと考えられます。

例えば、イスラム教徒が多い国家では「インシャーアッラー」=「全ては神(アラー)の思し召し」=なる様にしかならない、と言う考え方が人々の価値観の中心にあります。そこに日本人の価値観で「どうしてできないんだ!」と言っても、思考の基準自体が違うため本質が伝わりにくいのです。
こうした体験や違和感が重なり、苦労を感じてしまうのではないでしょうか。


――逆に、外国人労働者が抵抗を感じることはある?

言葉や文化などの問題以外では、仕事でマニュアルに触れたことがなく、日本のマニュアル文化に戸惑う方も多いです。このような方に日本式の研修を機能させるためには、マニュアルが「面倒でネガティブな物」ではなく「楽しく仕事を覚えられる面白い物」だと印象付ける事が必要でしょう。
 
画像や動画を活用するのも方法の一つです。タイなどの東南アジアはスマートフォンの普及率が高く、幅広い世代がゲームや動画に慣れ親しんでいます。タブレット端末の活用など、教育にもゲーミフィケーション(ゲーム要素)を含めば、受け入れられやすいと考えます。

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――日本と海外では従業員の教育環境に違いはある?

海外は日本よりも人材の流動性が高く、労働市場でも個人のスキルが重視される傾向にあります。一方で日本は新卒の一括採用と終身雇用が多く、人材の流動性は低いのが現状です。また良い悪いは別として、「On the Job Training」で上司・先輩から業務内容を学ぶことを前提とする企業も多いです。
教育内容は「先輩・後輩」間で属人化してしまう傾向にあり、指導の程度もコミュニケーションの濃淡に影響されがちです。


――外国人労働者に活躍してもらうためには?

互いの文化の違いを認めるだけでなく、日本人同士で通じる「阿吽の呼吸」のような考えには頼らず、各自が「伝える努力」をすることが重要です。外国人労働者が効果的・効率的に業務内容を学べるよう、説明に画像や動画を用いるなどの「伝わる指示」をベースとしたコミュニケーションが必要でしょう。

飲食業界は改正入管法でどう変わる?

こうした中、改正入管法の施行をきっかけに、雇用する側の外国人労働者の受け入れ体制を整えようとする動きもある。
飲食業界の人材紹介サービスを運営する「クックビズ株式会社」は2019年3月から、外国人労働者の受け入れに特化したセミナーや公開講座を開催する。
採用計画や国・宗教別の対応のポイントなどを教えることで、外国人労働者を職場に定着させ、飲食業界全体の労働力確保につなげる狙いだ。

現在も外国人労働者が多く働く飲食業界では、改正入管法施行後の変化にどう対応していけばいいのか。クックビズ株式会社の担当者にも話を聞いた。


――改正入管法の施行で、どのような変化が起きると考えられる?

飲食業界はこれまで、労働ビザの制限から留学生アルバイト以外の外国人雇用が難しい状況でした。法改正ではこの状況が緩和されますが、同時に雇用面でのトラブルに見舞われるリスクが高くなることも考えられます。日本人が働きにくい労働環境は、当然、外国人も働きにくいはずです。どの国籍でも働きやすい職場づくりを実践できない企業は、人材確保でも他社に後れを取るでしょう。


――セミナーや公開講座の狙いは?

外国人スタッフのトラブルには、日本の接客における「お辞儀」や「謝罪」の必要性が分からず、クレームや2次クレームを誘発してしまうことが多いです。ですがこれは、接客マナーが「できない」のではなく、単に「知らない」ケースがほとんど。
当社のデータでは、外国人スタッフに根気強い指導やフォローアップを続けた結果、寄せられるクレーム数が以前の4割程度に減ったケースもあります。セミナーや公開講座を通じて、雇用者側の教育環境を整えることで、サービスの向上などにつながると考えています。

セミナー・公開講座で教える内容の一例

「ビジョンがなければミスマッチが起こる可能性も」

――外国人労働者を雇う上で注意するべき点はあるか?

考えられるだけでも、以下の問題が発生する可能性があります。
・お客が残した食品の処理方法や衛生概念に対する違い
・何か言われた際、まずはお詫びする風習への対応(多くの国では自分が悪くないと謝らない)
・多国籍の外国人労働者を雇う場合、各国の国同士に対するイメージへの理解
・外国人労働者の増加が、日本人労働者の離職要因となること
・人前で怒ると逆効果な国の多さなど、指導方法における注意点

また、雇用者側が一番やってはいけないことは、外国人を単なる低賃金労働者と捉えることです。改正入管法では、特定技能の取得者は日本人労働者と同等の待遇とすることが求められていて、さらに外国人向けのケアを行う労力を考えると、決して“安い労働力”ではありません。
外国人労働者をどう活用するかビジョンがなければ、相互の期待感にミスマッチが起こり、結果的にトラブルにつながってしまうでしょう。


――外国人労働者には何を期待する?

労働力という観点以外にも、外国人労働者がリーダーとなることで外国人が働きやすい環境となります。当社としては、海外進出の際に中核的人材として活躍してもらうこと、お客様対応やメニュー開発に携わってもらうことなど、飲食産業の成長を支えてもらう存在になることを期待しています。

「外国人労働者に期待すること」に対する回答

また、前述のスタディストの調査では「外国人労働者に期待する役割」という質問があり、こちらの回答結果でも、外国人労働者には、人材不足の解消や訪日外国人への対応、海外展開時の即戦力など幅広い分野での貢献が望まれていることが分かる。

今後増加する外国人労働者と“共生”する未来を考えると、雇用者側が「外国人労働者」とひとくくりに考えるのではなく、各国の価値観や文化を尊重した教育環境を整えていくことが、まずは必要なのかもしれない。

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