「仮想通貨」から「暗号資産」へ 取引手段としての役割を担っていけるのか

カテゴリ:国内

  • バブルと呼ばれた仮想通貨市場は様変わり
  • 不正流出で顧客離れが進み、ビットコインも大きく値下がり
  • 取引手段としての役割を担えるのか、重い課題を背負うことに

時価総額は6分の1以下に

大量の投機マネーが流れ込み、去年はバブルとまで呼ばれた仮想通貨市場だが、この1年で大きく様変わりした。世界の仮想通貨の時価総額は、今年初めには8300億ドルを超えたが、ここ数日は約1300億ドルと、6分の1以下にまで縮小、「仮想通貨離れ」が進んだ1年だったと言える。

不正アクセスによる「外部流出」が相次ぐ

大きな逆風の一つが、不正アクセスによる外部流出が相次いだことだ。1月に、交換業者大手コインチェックで仮想通貨NEMが流出し、金額は約580億円相当と過去最大の規模になった。9月には、テックビューロが運営する交換サイト「Zaif」から、約70億円相当の計3種類の仮想通貨が流出したほか、海外でもイタリアや韓国などでハッキングによる被害が報告された。

標的になるケースが目立ったのが、「ホットウォレット」と呼ばれる管理状態だ。

顧客の仮想通貨などを保管しておく「ウォレット」という電子的な財布が、ネットに常時つながれている状態は、入出金に迅速に対応できる反面、サイバー攻撃の可能性を高めると指摘された。

取引実行をめぐる認証作業でも防御策が徹底されていない事例があるなど、セキュリティシステムや顧客資産の管理体制が十分とは言えない実態が次々と浮かび上がり、対策の強化が急務となるなか、上昇基調を続けてきた仮想通貨市場は、冷や水を浴びせられる結果となった。

値下がりが招くマイナー=採掘者撤退の動き

代表的仮想通貨であるビットコインも売りが膨らんだ。1ビットコインあたりの価格は、12月には一時3300ドルを割り込み、1年前につけた最高値の6分の1の水準となった。相場の下落は、市場の縮小を招くだけでなく、取引の基幹システムの将来性にかかわる事態も生んでいる。

ビットコインをはじめとする仮想通貨取引では、世界中で発生する決済や送金などのデータの記録をつなげていく競争に、数多くのプレーヤーが参加し、膨大な計算を最初にこなした人に報酬が与えられる。

報酬を求めて計算能力を競い合うこの競争は、金の採掘になぞらえてマイニング=採掘と呼ばれ、参加するマイナー=採掘事業者たちは、特別なコンピューターを設置し、莫大な電気代を支払って、演算処理にしのぎを削っている。しかし、報酬として受け取る仮想通貨の価格が落ち込めば、大量の計算に要するコストをまかなうことが難しくなり、利益率は低下する。

ビットコインなどの値下がりが続くなか、規模の小さいマイナーには撤退の動きが出ているとされ、高いシェアを持つ少数のマイナーによる寡占化が進んだ場合、多数の参加者が取引の信頼性を保証しあうシステムが機能し続けられるのか、先行きを懸念する声も上がっている。

仮想通貨を利用した事業資金集めも曲がり角に

仮想通貨を使った「新たな資金集めの方法」も曲がり角を迎えた。

これは、ビジネスのアイデアを持っているものの、実現するための資力のない事業者が、「トークン」と呼ばれる独自コイン=デジタル権利証を売り出して資金を調達するやり方で、投資家は、仮想通貨などでそのトークンを購入する。

 新規株式公開がIPO=イニシャル・パブリック・オファリングと名付けられているのに対して、ICO=イニシャル・コイン・オファリング(新規コインの公開)と呼ばれ、事業者側は、投資家から受け取った仮想通貨を事業資金にあてる一方、投資家は、購入したトークンの価格が上昇すれば、値上がり分が利益になるしくみだ。

仮想通貨の有望な投資先だとして、世界的な広がりを見せてきたが、トークンの値上がりは約束されたものではないうえに、事業者が公表する計画書は、事業の実力を判断できるだけの具体的内容に乏しいものも多く、詐欺まがいの案件が紛れ込むリスクを指摘する声が根強い。

中国や韓国では、去年、ICO禁止が打ち出されたが、今年は、イギリスやオーストラリアをはじめ主要国で既存の証券規制の適用対象にしていこうとする動きが加速し、ICOへの国際的な規制の包囲網が狭まりつつある。

「仮想通貨」の呼び名は「暗号資産」へ

こうしたなか、日本では、金融庁が、仮想通貨を法令上「暗号資産」に改称する方針だ。円やドルなどの法定通貨と誤認されるおそれがあるほか、G20=20か国・地域の会議をはじめ国際的にも暗号資産という表現が使われるようになったためで、来年の法改正を目指している。

通貨は、価値の「尺度」「交換」「保存」という3つの機能を持つ必要があるとされている。しかし、相場が乱高下していては、価値が安定せず、資金を保管する手段になりにくいうえに、日本国内では、支払いができる実店舗は広がりを見せておらず、仮想通貨は「通貨」としての役目を果たせていないのが実情だ。

 仮想通貨は、既存の金融秩序と一線を画し、中央集権的な管理者なしに、低コストで迅速な取引を目指して運営されてきた。
ある交換業者幹部は「今年はバブルの要素が剥落し、さらなる成長に向けた調整局面だった」との認識を示すが、本来の理想の実現に向け、金融サービスに幅広く利用される取引手段としての役割を担っていけるのか。

「暗号資産」へと呼び名が改められるなか、仮想通貨は、重い課題を背負っている。

(執筆:フジテレビ 解説委員 智田裕一)