ますます巧妙化する“選挙介入”の目的は「カオス」  イランやロシアの介入も?

 

柴木友和
カテゴリ:ワールド

  • 中国やロシアによる「選挙介入」調査に全力で取り組むとトランプ大統領がアピール
  • トランプ支持者の投稿のように見え、実はイランやロシアの介入が疑われるケースも
  • 「選挙介入」の目的な何なのか?

トランプ大統領が警戒する「選挙介入」とは

アメリカ・中間選挙から一夜明けた7日、トランプ大統領は記者会見で、中国やロシアによる中間選挙への介入についての調査に全力で取り組んでいるとアピールし、近く選挙介入に関する報告書をまとめることを明らかにした。

この「選挙介入」とはどういうものなのか、中間選挙にどう影響したのか、調査する専門家を取材した。

「残念なことに、11月のアメリカ中間選挙に中国が干渉しようとしていることがわかった」(トランプ大統領 9月国連安保理会合で)

トランプ政権が露骨に警戒する選挙介入。ニセの情報を流して世論を誘導したり、選挙システムに不正にアクセスしたりしようとするものだ。トランプ大統領は今年9月、こうした選挙介入に制裁を発動するための大統領令に署名するなど、対策を強化している。

【アトランティック・カウンシル デジタル科学捜査研究所 ニコラス・ヤップ氏

首都ワシントンにあるシンクタンクでSNSなどを使った選挙介入の調査・分析をしているニコラス・ヤップ氏は、いくつか選挙介入が疑われる事例を紹介してくれた。

イランの介入が疑われる投稿

イランの介入が疑われる例

 まずとりあげた例は、トランプ大統領の写真とともに、裏切り、性犯罪、人種差別といった言葉が並び、見た瞬間にトランプ大統領を批判している内容とわかる。これは、トランプ政権と対立するイランの関与が疑われる投稿だという。

「(こうした投稿は)アメリカのリベラルのふりをしているが、実際にはイランにつながっているのです。彼らは投票を促し、リベラルを支持するコンテンツを投稿しています」(アトランティック・カウンシル デジタル科学捜査研究所ヤップ氏)

こうしたイランの介入が疑われる投稿は中間選挙の直前も続いていたという。

ロシアの介入が疑われる投稿

ロシアの介入が疑われる例

一方で、こちらは、トランプ支持者が想像以上に多いと主張するアカウント。一見、普通のトランプ支持者の投稿に見えるが、実はロシアの介入の疑いがあるというのだ。

「実際にはロシアが運用するアカウントなのにアメリカ人の保守派のふりをしています。これはトランプ支持型の例です」(ヤップ氏)

他にも同様の例をいくつか見せてくれたが、いずれも一見するとふつうのトランプ支持者や反トランプ派に見える内容ばかりで、ロシアの介入とは直接わからない。

しかし、こうしたアメリカ人のトランプ支持者のふりをした投稿には危険が潜んでいると指摘、ロシアの介入が疑われる投稿も最近まで続いているという。

選挙介入の目的は何?

では、選挙介入の目的は何なのか? 実際に投稿を見てみると、いずれも移民問題や人種差別など、アメリカ国内で意見の分かれる政治問題をあおるような投稿が目立ち、さらに賛成・反対両面の意見が投稿されている。

「(支持・不支持)両面の言動を誇張することにより、党派対立を高め、彼らは政治的に穏健な対応をできなくすることで、アメリカ国内の議論を弱めるという目標が達成できるし、社会への不信感にもなります」

さらに、一つ一つのアカウントの影響力は小さくても、こうした投稿が、本物のトランプ支持者・反トランプ派に引用されることで一気に拡散。特に最近の選挙介入はコンテンツを巧みに使い、影響力を拡大させているという。実際、投稿されたイスラム教徒の難民に関する怪情報は、本物の有力なトランプ支持者のアカウントに転載され拡散していた。

「興味深いのは、これは当初はアメリカ国内の問題だということです。彼らが助長しているのは、すでにある党派対立なのです。もしあなたがお互いを完全に信頼しないのなら、そしてシステムや社会制度も信頼しなければ、その国は特に国際的なステージでより団結できなくなるのです」

なぜこうした投稿が偽物のアカウントだと分かるのか?ヤップ氏は、こうした投稿には、言葉の綴りの間違いやオウム返しのような表現が含まれている場合があり、アメリカ政府や大手SNSサイトも特定・削除を急いでいると指摘する。しかし、最近では手口が巧妙化して、本物のサイトと見分け方が難しくなっていることに加え、影響力も拡大しているということだ。

「技術的な革命が起きています。最近(削除されたもので)確認されるものは、2016年(の大統領選で)確認されたいかなるものよりも遥かに洗練されています」

「ビデオやコンテンツ、今のものは何万ものシェアがあります。彼らは何が有効で、何が有効ではないかを理解しているのです」

ヤップ氏は、2016年の大統領選挙のときの選挙介入は、比較的容易に発見できたと指摘する一方、最近の介入は巧妙さを増しているとし、監視する側も技術を高めなければいけないと強調します。今後はさらに、イタチごっこのような状況になるのかもしれません。

ユダヤ教礼拝所では11人が死亡する銃撃事件が発生

 大統領選から2年の節目となる中間選挙。トランプ政権下では、憎悪犯罪=ヘイトクライムが相次ぎ、10月にもアメリカ東部のユダヤ教礼拝所で11人が死亡する銃撃事件が起きた。さらに選挙翌日の7日にもロサンゼルス郊外サウザンドオークスのバーで男が銃を乱射し、12人が死亡するなど凄惨な事件が続いている。

トランプ政権は、選挙結果を変えるような直接的な介入は確認していないとする。しかし、アメリカの分断が深刻化する今、外国政府の介入がどの程度影響しているのかは分からないままだ。ヤップ氏は彼らの目的は「カオス=混乱」にあるとして、警鐘を鳴らす。

「(介入の)コンテンツから裏付けられる彼らの目標は、結局は全体的な”カオス”だと考えています」(ヤップ氏)

アメリカの選挙で大きく関心の集まったネットの闇。日本にとっても、対岸の火事ではないかもしれない。

(執筆:FNNワシントン支局 柴木友和)