トランプ政権に黄信号? 上下院で“ねじれ”も「うってつけの状況」【木村太郎氏分析】

  • 上院は共和党、下院は民主党…トランプ政権の行方と日本への影響は? 
  • 「支持層拡大には繋がらなかった」大統領“最大の武器”ツイートに一因か
  • 下院と対立しても「拒否権や大統領令で対抗」最高裁判事の人事も上院

注目選挙区で分かれた明暗

トランプ政権の2年に審判を下す中間選挙、運命の投開票を迎えたアメリカ。
トランプ大統領に突きつけられたのは、上院では与党・共和党が勝利、下院では野党・民主党が勝利という議会にねじれをもたらす国民の審判だった。

反トランプの民主党陣営では、支持者たちが選挙の開票速報を伝えるテレビの画面を食い入るように見つめ、民主党候補の当選確実が伝えられるたびに、大きな歓声が上がっていた。

2016年の大統領選挙では、まさかの敗北に打ちひしがれた陣営だが、今回は一転。
実に8年ぶりとなる下院奪還に沸き、ある民主党支持者は「この流れを継続できれば、さらに前進してアメリカを取り戻せる!」と語った。

日本時間の7日午後1時半すぎ、ワシントンでは下院で過半数を獲得したことを受けて、民主党のペロシ院内総務が支持者らの前に登場。
「皆さまのおかげで勝利できました。ありがとう!明日はアメリカにとって新たな日となります!」と勝利宣言をした。

一方、注目された選挙区では明暗が分かれた。

人気の歌姫、テイラー・スウィフトさんが民主党候補の支持を宣言した南部テネシー州では、「ミニトランプ」との異名を持つ共和党の相手候補、ブラックバーン氏が当選した。

ニューヨーク州では予備選で民主党の重鎮議員を破るという番狂わせを起こし、一躍、時の人となった新人の若手女性候補、レクサンドラ・オカシオコルテス候補が圧勝し、史上最年少の下院議員の座を射止めた

アレクサンドラ・オカシオコルテス候補

2年前の大統領選では、アメリカ第一を打ち出したツイートで注目を集めたトランプ氏だが、今回の選挙では、なぜあの勢いを失ったのか?

取材班は、大統領最大の“武器”ともいえるツイートを分析

そこで明らかになったのは、ツイートを埋め尽くす罵詈雑言の嵐だった。

「両刃の剣」発言から見えた真意

選挙戦終盤の3日間で、全米7か所を飛び回ったトランプ大統領。
その移動中に送った30通のツイートには、「敵対勢力への執拗な攻撃」という特徴があった。

3日「民主党は税金を上げ、社会主義を押し付け、国境をなくすだろう」
5日「民主党への投票は、経済を大きな音とともに突然崩壊させるということだ」

民主党への徹底した攻撃と民主党支持者への恫喝。一方、共和党候補に対しては、絶賛フレーズのオンパレードとなった。

4日「(ミシガン州の)ジョン・ジェームズは、驚異的な若い将来のスターだ!」
5日「(ニューヨーク州の)ピーター・キングは、懸命に働く宝石だ!」

これに対して今回、民主党の選挙の顔となったオバマ前大統領が、同じ期間中に発したツイート数はわずか5通だった。
5日「あなたの力を使って投票すれば、すごいことが起こるのだ」

フジテレビの風間晋解説委員は、「トランプ大統領のツイートは、すでに大統領の支持者の人たちを駆り立てるには大いに役立ったが、支持層を広げることには繋がらなかった。という意味では、大統領のツイートマジックは終わったのかなと思います」と分析する。 

下院での敗北により、2020年の大統領選に向け大きな不安を残したトランプ大統領。
6日の深夜、更新されたツイッターには「今夜はすばらしい成功を収めた。ありがとうみなさん」と投稿していた。

「“ねじれ”はトランプ大統領にとって、うってつけの状況」

注目の中間選挙、日本時間の午後4時40分現在の情勢は、トランプ大統領の共和党は上院では51、民主党は44で、上院は共和党が過半数を維持。
そして、下院では共和党の192に対して、民主が215。
民主党が8年ぶりに多数派を奪還することが確実となり、上院と下院で多数派がねじれる結果となる見込みだ。

トランプ政権と日本の今後へはどのような影響があるのだろうか。
2016年の大統領選挙でトランプ氏勝利を的中させたジャーナリストの木村太郎さんに伺った。

倉田大誠キャスター:
木村さんは「下院でも共和党が優勢になるのではないか」と予想されていましたが、あえてお聞きしますが、この結果をどう受け止めていらっしゃいますか?

木村太郎氏:
ちょっと狂いましたね。でもね、トランプは勝ったんですよ、やっぱり。
なぜかというと、上院で51になっていますが、この結果は恐らく53、54ぐらいのかつてない大勝です。
言い訳になるんじゃないけど、下院がもともと負けることになってたんですよ。
アメリカの中間選挙は、戦後18回行われていますが、大統領政党が勝ったのは2回しかないんです。それも、ごく例外的な理由で。
だから、今回負けるのは分かっていたのですが、トランプの力なら戻せるかもしれないと淡い期待を持っていましたが、それがどうもうまくいかなかったのかなと思います。


アメリカ・ワシントンDCから現地の最新情報を藤田水美記者が中継で伝えた。 

藤田水美記者:
社会の分断が深まる中、下院での共和党の敗北は対立をあおるトランプ大統領へのアメリカ国民の危機感が働いた結果といえます。
ただ、下院で民主党に敗北を喫したものの上院では共和党が過半数を維持し、議席を更に上積みしました。
これは、トランプ大統領の支持が依然として底堅いことを物語っています。
トランプ大統領自身も早速、ツイッターを更新し「すばらしい成功を収めた」と書き込み、上院での勝利を強調しています。

しかし、そんなトランプ氏にとって今後、アキレス腱となるのは「経済」です。
下院の過半数が民主党に握られることで、予算案は通りにくくなります。さらに、昨年末の大型減税に続く第2弾の減税が困難となります。
政権の生命線ともいえる好景気が揺らげば、2020年に再選を狙うトランプ大統領には、大きな逆風となります。

倉田大誠キャスター:
木村さん、“ねじれ“について我々はどう受け止めればよいのでしょうか。

木村太郎氏:
ねじれと言うべきかどうか。上院と下院の組み合わせは、下院のほうは内政問題で、上院のほうは外交や安全保障などを扱うという区分けがあるわけです。
それが、ねじれるのかどうか分かりませんけれども、下院の方はトランプさんの考える通りに機能しなくなのではないか、ということですよね。

反町理キャスター:
それは、大統領にとっては困るというか、不利な状況に追いつめられるということになるのでしょうか?

木村太郎氏:
確かに予算編成などは下院が独自にやりますから、トランプさんとは違う線を出すかもしれないけれど、トランプさんには拒否権があります。
自分の嫌いな法案を全部拒否しちゃうということになりますから、現実的には下院が機能しなくなってくると考えたほうがいいかもしれないですね。

反町理キャスター:
そうすると2020年の大統領選挙に向けて、トランプ大統領にとってこの状況は有利な状況なのか、それとも不利な状況なのか、どう思われますか?

木村太郎氏:
トランプさんにとっては、うってつけの状況だと思います。
多分、下院がさまざまな形でこれからトランプさんの疑惑を調べたり、税金のことを調べたり、委員会を作ったりして、本来の仕事よりもそちらを一生懸命やるようになる。
2年経つと、国民は「何も承知してないじゃないか」となります。

実はそのような例があって、クリントンさんがモニカ・ルインスキーのことで弾劾を受けようとなった際、共和党がその問題ばかりやったんです。
その次の選挙で、共和党が大負けするんですよね。アメリカ国民は、「それよりも自分たちの仕事をちゃんとやれよ」と思います。
これは、オバマさんも第1期の中間選挙で63議席減らしましたが、その次の大統領選挙では大勝するんですよね。
なので、下院で負けてもそこまで次の選挙には響かないと思うので、逆にいいかもしれない。

島田彩夏キャスター:
上院のほうが大切だという話は?

木村太郎氏:
上院がすごく大切なのは、人事権を持っているからです。
最高裁判事を決めるとか、間違いなくもう1人これから交代する人が出てくると思うので、その時に上院の共和党が決めると、また保守派の最高裁判事が増える。
これから内閣改造すると、新しい大臣を作らなきゃいけないですよね。その人の認証をするのも全部、上院なんですよ。
上院さえしっかりしていれば、かなりのことはトランプさんが好きにできることになるわけです。

反町理キャスター:
最高裁の保守色が更に強まると、例えば、銃規制に関しては今回の選挙キャンペーン中にも乱射の事件がありました。
そういった点について、残りの2年間でもアメリカにおける根本的なものはあまり変わらないだろうと?

木村太郎氏:
もっと保守化するかもしれないです。
ただ、下院がいろんな法案を出そうとして、拒否権を発動する。あるいは下院が動かないから、大統領が大統領令でいろんなことをやろうとする。
そうすると、裁判になりますよね。それを最終的に決めるのは最高裁ですから、ある意味ではトランプさんの最大の味方がまた増えるということになるかもしれないですね。

反町理キャスター:
官房長官は、今日の会見で「日米関係に大きな影響を及ぼすことはない」と言っています。
この選挙の結果で、日米関係はどうなりますか?

木村太郎氏:
大きな影響は及ぼさないと思います。
日本問題というのは、今トランプさんの課題の中から全然、外れているわけですよ。
トランプさんが勝とうと負けようと、これから自分の第1期を達成する最後の完成させる中で残っている課題というのは、達成されていない公約がいくつかあるわけですね。
1つはオバマケア、健康保険の問題です。
これを廃止すると言っていましたが、できなかった。今回、下院が主導権を握ると、恐らくできないでしょう。
もう1つの国境の壁建設も予算の問題ですから、下院が予算を通さないとだめですよね。
2年前の選挙でいろんなことを公約したけど、残っているのは日本問題だけなんですよ。

倉田大誠キャスター:
そうなると、下院ではなくて上院で、貿易赤字・安全保障といった日本への要求がドンとくるのではないかと。

木村太郎氏:
それは今回の選挙とは関係なく、これから2年間で日本が対処しないといけない課題だと思います。

反町理キャスター:
今の日本の状況を考えると、戦略的互恵関係の中ですから限界はありますが、安倍首相は先日、中国を訪問して日中関係をよくしましょうと言った。
一方、日米関係は複雑です。トランプ大統領は、「対米貿易黒字を減らせ」という圧力をさらに強めるでしょう。
安倍外交は、これからの2年間窮地に立たされるということでしょうか?

木村太郎氏:
どうして窮地になるのでしょうか。
結局、トランプさんが中国に強いことを言ったので、中国としては「じゃあ隣の日本と仲良くしておこうか」と手を差し伸べたのをうまく作ったわけですよね。

反町理キャスター:
トランプの対中圧力が、中国を日本に寄せている?

木村太郎氏:
普通の日本の指導者なら、トランプがいるから手を出すのをやめようかなと思うじゃないですか。
そこをちゃんと手を握ったところに、安倍さんには強かなところがあると思う。
その三角関係の中で、いかにうまく安倍さんが立ち回っていくかということが、アメリカの対日圧力をいかに躱していくかということに繋がってくると思います。

(「プライムニュース イブニング」11月7日放送分より)