セレブを魅了した築地マグロの“トップランナー”豊洲に感じる不安とは…

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  • 築地ブランドを豊洲ブランドにするために必要なこと
  • 「温度」は改善されるが「湿度」が心配
  • 声が反響するためセリの声が聞き取れるかが不安…

マグロは築地の花形…豊洲市場でマグロ仲卸の“不安”

築地といえばマグロ、マグロは築地の花形。

その「築地まぐろ」の仲卸で、仕入れに厳しい数多くの高級すし店や料亭、さらに外資系高級ホテルの数々にもマグロを卸しているのが「樋長」だ。

豊洲開場(10月11日)が迫る中、樋長の社長の飯田統一郎さんに、不安に思っている点を聞いた。

「樋長」社長・飯田統一郎さん

「樋長」社長・飯田統一郎さん:
駐車場が割り当てされなかったお客様がどうするのか、お客様が車を停めたときに時間通りにターレ(小型運搬車)で持っていけるかが心配。

最初に言及したのは、「顧客の動線」だった。
そして店舗については、「排水」面の不安を挙げた。

「樋長」社長・飯田統一郎さん:
ごみを落とせばもちろん拾うけれど、常に水を流して衛生的に店を保っていく。マグロのかすとか小骨とかが詰まった場合、もっと細かいおがくずとか鱗とか拾えないものは流すしかない。自分たちで清掃しながら排水させていくしかない。築地では大きい穴に水が流れ込んでいくイメージだった。

築地に比べると豊洲は排水溝が詰まる心配があるというのだ。

築地に比べると豊洲は排水溝が詰まる心配があるという

「とにかく湿度が高い。空調回っているはずなのに…」

さらに、温度管理については、築地では暑さで夏場は魚がゆるむが、「こちらは温度管理されて魚にすごくいい。そこは期待している」と評価する一方で、湿度についてかなり不安があるようだった。

「樋長」社長・飯田統一郎さん:
とにかく湿度が高い。いまも70%。昨日、水をまいて清掃していたら80%以上あった。空調が回っているはずなのにこの湿度感は。築地は風が通っていたから。シャッターしめて帰るとカビの問題が起きそう。

飯田社長はカビの心配をするが、ある仲卸は「多くのマグロ屋はマグロを拭くときに同じ布を何度も使う。茶色くなっちゃっているのもある。でも樋長はいつも真っ白だ。これはすごく大変なこと」と樋長の衛生管理を高く評価していた。

その樋長の衛生管理の取り組みとは・・・

「樋長」社長・飯田統一郎さん:

築地でやっていたころからマニュアルは作ったが、実際にできないことはマニュアルに落とし込んでもしょうがない。やってる体ではだめ。例えば、真夏にトラックを冷やしてから配送、といってもなかなか冷えないときもある。冷えるまで待ちましょうと言っても朝の20分、30分が待てない。
じゃあどうするかといったときに氷で魚を梱包して運び、(運んだ後)温度が担保できているか魚の表面温度をはかり、中を切って温度を測る。つまりかっこいいマニュアルでなくできることをやる。実際にできることをやりましょう、と。

他の仲卸を驚かせたのはそれだけではない。
樋長は配達の魚を入れる発砲スチロールを使いまわさず、常に新品のものを使うという。
ある仲卸は「そりゃあすごい経費が掛かる。そこまでやるのか」と語る。

また、マグロを拭う真っ白い布巾も、漂白剤の効果的な使い方を業者から直接習い、マグロを拭う前には氷水につけておいて、拭うときに温度が上がらないようにするという徹底ぶりだ。

これ以外にも、汚れが飛び散りにくいように壁を設置するなど、掃除しやすい店にするために様々な工夫も重ねているという。

そして、10月11日の豊洲での初せりについてどう臨むのか聞くと…。

「樋長」社長・飯田統一郎さん:
せり場に行って魚と話さないとわからない。せり場次第。見たときに「このお客さんにこれ」と紐づく魚がある。このお客さんにこの魚のここを渡したい、という紐づけで見ていくんで。そういう気持ちを掻き立ててくれる魚があるといいんだけど。

このように話す一方で豊洲のせり場はファンの音が大きく、声が反響するためききづらいとの不安も語った。


また、樋長のセールスマネージャー、菅原敏雄さんは顧客との関係づくりについてこう話す。

「冷凍マグロは指で味わう」の意味

「樋長」セールスマネージャー・菅原敏雄さん

お客さんの好みニーズを図るために「“樋長のスタンダード”の魚をもっていき、マグロの赤身が濃い赤がいいのか、浅い赤のほうがいいか、脂がのってるのがいいか、仕入れ価格は、など話をききます」と話し、それを重ねていく中で顧客と魚の相性、顧客と自分達の相性を突き詰めていくという。

また、「樋長のまぐろ」の選び方として、「冷凍マグロの場合は尾の部分をすくって指で練って確認します。練ってて、ぼろぼろするのもあればねっとりするものもあって。つまり指で味わいます。樋長はやはり赤身です。とにかく脂ののってるものをもとめる、そういうものが欲しい人はそういうところに行きます。でも、赤身が良くないものは脂身のもよくないですし、脂っぽいだけだとすぐに味が消えます。まぐろは余韻が必要なものです。200本あっても1本も買わないときもあります」と話す。

顧客の好みを徹底的にリサーチする一方で、自分たちのマグロのコンセプトをはっきり伝えていく。

これが常にトップクオリティを求める数多くの顧客をつかむ秘訣だろう。

そして最後に笑顔で「マグロはやればやるほどはまります」と語った。

樋長のマニュアルに頼るのでなく現実的な衛生管理、常に顧客を意識した仕入れ、顧客のニーズの徹底した把握、明確なコンセプト…、築地ブランドを引き継ぎ、豊洲でさらに発展させていくために必要な要素とはまさにこれらではないだろうか。


(執筆:フジテレビ 都庁担当 小川美那)