ノーベル賞受賞の秘密は“女性活躍”社会のお手本?「亭主関白」公言した本庶教授の研究室とは

  • ノーベル賞受賞の本庶教授研究室は、半数以上が女性、外国人研究者も多数
  • 多様性を重視して、優秀な研究者と共に研究を重ねたからこそ“大きな成果”
  • 日本の“女性活躍社会”はどうしていけばよいか?

2年ぶりの日本人のノーベル賞受賞

がんの画期的治療法を発見し、ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった京都大学の特別教授・本庶佑さん(76)。阪神ファンでゴルフ好き、と人柄にも注目が集まる中、妻と一緒に臨んだ会見では驚きの発言が飛び出した。
「あまり僕は家族のことは細かいことはタッチせずに、典型的な『亭主関白』として研究にまい進していきました」と、家庭では「亭主関白」と公言。

つまり夫が外で働き、妻は家庭を守るという、いわゆる“古風”な家庭の様子を披露した。妻の滋子さんも「今の若い方と違って、かなり家庭での分担ははっきりしていたと思います」と発言。

失礼ながら、本庶教授は昔ながらの日本の男性が持つ考え方の持ち主なのかと思いきや、実は…。

7日放送の報道プライムサンデーが取材してみると、本庶教授の偉業の陰に“女性の活躍”があった。

受賞から4日後、報道プライムサンデーのスタッフは京都大学にある本庶研究室を訪ねた。すると、目についたのは女性の研究者の多さだ。

早速、気になる“亭主関白発言”について聞いてみると「Really!?誰が言ったんですか?本庶先生が言ったなんて!聞いてびっくりした」と外国人女性研究者は驚いていた。ほかの女性研究者に聞いてみても”意外だ“との反応が相次いだ。

どうやら、亭主関白発言とは真逆の本庶教授の姿が研究室にはあるようだ。

本庶研究室は女性研究者が半数以上

実は本庶研究室の研究者は29人中17人が女性。全体の58.6%が女性なのだ。
おととしの調査では、大学の医学・歯学・薬学・看護学の分野での女性研究者の割合は32.2%。本庶研究室の女性研究者が特に多いことが分かる。

18年間本庶研究室で研究を続ける女性研究者はこう語る。
「(本庶研究室は)女性の研究者が昔から多かった。お休みが取りやすいし、仕事しやすい。子供が小さい時は突然、熱が出て保育園から呼び出しもらったりするが、それでもそういうところに寛容ですぐに帰らせてくださったりとか、感謝してます」

また16年前出産のために本庶研究室をやめることになった女性研究者も出産後に「一度辞めてまた(本庶)先生に復帰したいってごあいさつに行ったら、『いいよ』っていう感じでとてもありがたかった。すぐにお返事もいただけたので悩む必要もなかった」と、本庶教授は産休や子育てに理解があり、研究室には女性が働きやすい環境があると話した。

亭主関白とはかけ離れているようだ。

外国人研究者など多様性のある研究室

さらに本庶研究室にはもう一つの秘密があった。

実は、本庶研究室には、女性だけでなく、外国人も多い。本庶教授の愛弟子でもある京都大学の茶本健司特定准教授は「本庶教授は多様性を大事にされる方なので、いろんなバックグラウンドの国の人とかやっぱり男性・女性も採用する。新しいアイデアとか、面白いことを考えるのは、いろんな人がいた方が出てくると思う。その多様性の中で生まれてきた1つを大事に大事に育てていった」と語る。

性別や国籍に関係なく、多様性を重視して、優秀な研究者と共に研究を重ねたからこそ、大きな成果を得られたのだ。

安倍政権の「女性が輝く」に違和感!?

宋美玄:
研究者としてリーダー的な存在なのか補助的な存在なのかはわかりませんが、いろんな研究室で女性が活躍しているのは日本でも増えてきているみたいです。多様性を重んじるとありましたが、いろんな発想ができるという意味では、性別や国籍とは関係なくいろんな人材が必要というのはあります。

奥寺健:
一方で、女性活躍を掲げる第4次安倍改造内閣では女性大臣は、片山さつき大臣1人しかいないですね。

古谷経衡氏(文筆家)

古谷経衡:
初入閣の方も多いので、野球の8回裏・9回裏に監督が補欠を全員出してあげたのかな、と私には見えました。それと、地方創生大臣に片山さんがなぜ入閣したのかという合理的な理由は私には見出せません。
安倍さんの内閣は、『女性が輝く社会』というのをずっと言い続けているが、それはちょっと考えたときに女性に対して失礼だと思うんです。なぜかというと『女性が輝ける社会』ということは『女性が輝いていない』という前提を基にしたことなんですよね。女性が輝いていないから輝かないといけないということを言っているに等しいので、僕はそんなお上に言われなくたって輝いている女性は輝いているし、あなたにそんなこと言われたくないっていう立場でもある。
なので無理に片山さんを入れる必要もなかったのではないでしょうか。

宋美玄:

『女性が輝く』ということに関しては私も同じ違和感は持っていて、まず輝くとか輝かないとかいう以前に、男性と同じように雇用されて淡々と働き続けるということを目指してほしくて、そのうえで象徴的に『輝け』とか、それは政府の都合だろうなとは思う。

古谷経衡:
風紀のスローガンなんて全くいらないと思うんですよ。

ロールモデルとしてはやっぱり必要?

パトリック・ハーラン:
僕は女性を内閣に起用することはとっても大切なことだと思います。象徴としても大事だと思うんです。理系と政界が似ていることもあると思うんですが、輝いている女性があまりいないのは事実じゃないですか。
若い女性は手本になる女性がいないから「女性はこの業界にかかわれない」、もしくは「女性はこの分野に弱い」と思い込みを持ってしまうんじゃないんでしょうか。そういう思い込みがライフプランに影響を与えてしまうんじゃないのか。そのためにもロールモデルを増やすべきなんじゃないのかと想います。

佐々木恭子:
社会的な刷り込みが可能性を狭めていると?

宋美玄氏(産婦人科医)

宋美玄氏:
できないという刷り込みはもっともっとなくすべきですね。

佐々木恭子:
一方で東京医大の問題(入試の女子一律減点)もありましたけど、仕組みとして女性がチャンスを奪われているケースもありますよね。

宋美玄氏:
医学部の中でも臨床医を育てる分野では、男性を奴隷のように使いつぶして何とか成り立ってきているんですよね。それは医者を増やせばいいんだけど、それは医者の団体からも競合を減らすためにそんなに医者を増やすことは熱心ではなかった。それで男性を使いつぶしてきた。その結果女性を締め出してきた。
それでうまくいっていたため、変えようとしてこなかった結果、他の業者より古くなってしまったのかもしれません。

本庶教授は会見でこうも言った。

「教科書に書いていることを信じないと、常に疑いを持って、本当はどうなっているんだろうという心を大切にすると、そういうつまり、自分の目でモノを見る、そして納得する、そこまで諦めない疑い、自分の目で確かめる」

疑い、自分の目で確かめる…。少なくとも固定観念にとらわれない柔軟さが画期的な発見につながったといえそうだ。
それは今の日本社会にまさしく求められているものではないだろうか。

(報道プライムサンデー 10月7日放送より)