北海道地震と総裁選“休戦”・・・はざ間の安倍首相は

梅田 雄一郎
カテゴリ:国内

  • 災害時、首相の“官邸入り”が持つ意味
  • 総裁選“3日休戦”がもたらした効果とは
  • ぶら下がり取材“拒否”は、震災への姿勢アピールか

深夜の大地震・・・安倍首相の到着遅れたそのワケは!?

震災後、官邸に入る安倍首相(午前5時50分頃)

9月6日午前3時8分、多くの国民が寝静まっている中、北海道を大きな地震が襲いました。
最大震度は7だったものの、発生当初、気象庁の地震速報は最大震度6強と伝えました。

大きな災害が発生すれば、安倍首相をはじめ、関係閣僚が首相官邸に集まり、緊急の災害対策の会議が開催されます。
このため、私たち総理番の記者もただちに官邸に集まりました。
しかし、続々とやってくる閣僚らと対照的に、安倍首相はなかなかやってきません。
この日、安倍首相は官邸の隣にある首相公邸に泊まっており、すぐにでも来られるはずなのに一体なぜなのでしょうか?

それは、災害時に首相が緊急に官邸に入るということ自体が、災害が甚大なものだという意味を持つためです。
そのため、震度6強といっても、被害の大きさがどの程度かはわからないため、それを見極める必要があったのです。

しかし地震発生が深夜だったため、すぐには被害状況がわからず確認に時間がかかり、安倍首相は発生からおよそ2時間半たった午前5時50分ごろに官邸に入りました。
そして記者団に対し「人命第一、政府一丸となって災害応急対応にあたってまいります」と述べ、官邸内で地震への対応にあたりました。

総裁選も一時「休戦」だが・・・

関係閣僚会議に出席する安倍首相(9月7日)

大地震から一夜明けた7日は自民党総裁選挙の告示日であり、安倍首相と石破元幹事長による演説や共同会見が予定されていました。

しかし、地震の発生を受けて、自民党は、告示から3日間は総裁選活動をしないことを申し合わせ、総裁選は一時「休戦」となりました。
そのため安倍陣営はこの日、立候補の受付をしたのみで、首相自身は官邸で地震の対応にあたりました。

とはいえ、総裁選の告示日となれば、安倍首相の総裁選へのコメントは一言だけでも聞きたいところです。
しかし、この日の出邸時に「総裁選が告示されたが、どう臨む考えか」と問われた安倍首相は「おはようございます」と返すのみで、総裁選に触れることは一切ありませんでした。

実はこの「休戦」は、現職の総理大臣である安倍首相にとって、ある効果をもたらしていました。
相手の石破氏が、総裁選活動自粛のためメディアに露出する機会が少なかったのに対し、安倍首相は地震対応の会議などがニュースになり、災害に全力で対応しているアピールになるという面もあったことです。

記者からの問いかけに答えなかったのも、震災対応をアピールすると同時に、あえて総裁選で石破氏と同じ土俵に乗る必要はないという判断もあったのかもしれません。

被災地視察へ・・・異例のぶら下がり取材拒否!?

視察中、記者団の質問機会はなし

地震から3日後の9月9日、安倍首相は被災地を視察しました。
震災発生から3日で現地視察というのは早すぎるのではないかとの声もありましたが、安倍首相は翌10日からロシアで開催される東方経済フォーラムに出席するためウラジオストクを訪問する予定で、このタイミングしかないと判断しての視察となりました。

この視察で、ある異例の事態が発生しました。

通常、首相の被災地視察の際は、最後に記者団からの、いわゆるぶら下がり取材に応える時間が設けられます。
これは、事前に安倍首相サイドに記者団から申し入れるのですが、今回このぶら下がり取材は首相サイドに拒否されました。
異例の「ぶら下がりなし」の対応は一体なぜだったのでしょう。

官邸サイドは、地震対応のため、ぶら下がり取材に応じる時間が取れないことを理由としました。
しかし、ぶら下がり取材は、ほんの数分で終わるもので、その時間がとれないというのは理由としては微妙です。

背景には、総裁選に関する質問を受けるのを避けたい意向があったのではないかと思われます。
総裁選について答えれば、石破氏の動向とあわせて、総裁選がニュースになってしまい、首相が地震対応に専念しているという構図が崩れてしまうことを懸念したという可能性は否定できません。

仮にそうだとすれば、総裁選で圧倒的優位に立っている安倍首相ではあるものの「石破氏に完全な形で勝利しないといけない、その為には石破氏に有利に働くことは一切しない」という危機感を反映した判断だったのかもしれません。

(フジテレビ政治部 総理番記者 梅田雄一郎)