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クロールで泳ぐスピードがあがるほど、バタ足が邪魔って知ってました!?

カテゴリ:芸能スポーツ

  • 筑波大と東工大の研究グループが、泳ぎ方についての研究結果を発表
  • クロール中のバタ足は、ゆっくり泳ぐ場合は有効。速く泳ぐ場合は抵抗になる
  • バタ足の役割は、推進力ではなく、姿勢を水平に保つことで抵抗を減らすもの

3連休の今週末、海やプールに遊びに行く人も多いだろう。
こうした中、泳ぎ方についての耳を疑うような研究結果を、筑波大学と東京工業大学の研究グループが発表した。

「クロールにおけるキック動作(バタ足)は、低速域では推進力として貢献するが、高速域ではかえって抵抗になる可能性が判明」

つまり、「バタ足は、ゆっくりと泳ぐ場合なら問題ないが、速く泳ぎたい時には、かえって邪魔になる」ということだろうか。

子供の頃に通っていたスイミングスクールや、学校での水泳授業でも、当たり前のようにクロール中にバタ足をしていたし、足を使えば使うほど速くなるものと思っていた。ビート板を持ってバタ足の練習をしていた日々は何だったのか。

我々のような市民スイマーレベルならまだいい。
オリンピックなど競泳の世界大会クラスでも、自由形といえばクロール。どの選手の足元を見ても、盛大に水しぶきが上がっており、力強くバタ足をしているのは明らかだ。

つまり、今回の研究グループの発表が事実だとすれば、100分の1秒を争うトップスイマーの泳法にも関わる重要なテーマになってくる。

バタ足は、水平姿勢を保つため

改めて研究グループの発表文を見てみると、これまでクロール中のバタ足の役割は“体の水平姿勢を保つことで、抵抗低減には貢献している”が、“推進力として貢献しているか”については、統一した見解が得られていなかったそうだ。

提供:筑波大学 高木英樹教授

そこで、研究グループは実験用海流水槽を使って、速く泳ぐために最も重要な要因である“水泳中の抵抗について”、客観的なデータを作成することにした。

クロールで速く泳ぐ場合は、腕で水をかく動作を増やす必要があるが、腕と足の動きは連動しているため、必然的にバタ足の回数も増加することになる。

実験では、水槽内でワイヤーを装着した人が以下の3パターンで動き、体にかかる水の抵抗力を算出した。
(1) 腕とバタ足で泳ぐ
(2) 腕だけで泳ぐ(太ももに浮力のあるプルブイを用いて水平姿勢を保つ)
(3) 腕も足も使わない(けのび姿勢)

提供:筑波大学 高木英樹教授
提供:筑波大学 高木英樹教授

その結果、秒速1.1メートルの遅いスピードで泳ぐ際、バタ足は推進力として機能しているものの、秒速1.3メートルを超えてくると、そのバタ足の動きが、泳いでいる際に抵抗を与えるという。
そして、秒速に関わらず、(1)の腕とバタ足で泳ぐ際の抵抗力は、(2)の腕だけで泳ぐよりも、7名中6名で高い値を示した。

競技レベルや体格差などによって異なる可能性はあるというが、速度が上がる程、バタ足動作が抵抗要因になるということが、今回の研究グループの見解だ。

しかし、バタ足は下半身を浮かせるために必要不可欠なのでやらないわけにもいかず、腕と足の動きは連動している…いったいどうしたらいいのか。

「クロールで速く泳ぐためには、抵抗増大につながるとしてもキックを打たざるを得ない。推進力の大半を生んでいる腕の推進力の増大をはかりつつ、キック動作の抵抗をいかに減らせるかが技術的なキーポイントになってくる」とのまとめで、発表文は終わっているが、これでは正直どうしたらいいか分からない。
研究グループの代表で慶應義塾大学特任助教の成田健造さんに話を聞いてみた。

ポイントは“バタ足を大きく打たない”

ーーつまり、バタ足をした方が速い?しない方が速い?

プロ・初心者に関わらず、バタ足をした方が速く泳ぐことができます。クロールで泳ぐ時、下半身が沈みやすくなりますが、バタ足をすることによってその下半身を水面に近付けて身体を水平にし、抵抗力を小さくできます。

そもそも、速さとは推進力と抵抗力のバランスによって決定します。推進力が抵抗力よりも大きければ加速し、反対に抵抗力が推進力よりも大きければ減速する、といった関係性です。そして、「水平姿勢を保つこと」が抵抗力の削減に貢献し、推進力が変わらなくても泳速度の向上を導く、という解釈がより正確かと思います。

今回の研究では、太ももに浮力のあるプルブイを用いていましたので、バタ足を用いなくても下半身を水面近くに浮揚させることができました。ただし、もしバタ足以外で下半身を浮揚させる技術があれば、バタ足を最小限にすることでエネルギー消費量を節約し、効率よく速く泳ぐことができるかもしれません。


ーークロール以外に、背泳ぎもバタ足をした方が速い?

もちろん、背泳ぎでもクロールと同様に、バタ足は必要です。ただし、クロールと背泳ぎでは似ているところもありますが、身体の向き(仰向けかうつ伏せか)の違いにより異なる点も多々あります。

キックを打つ時に膝を曲げますが、その時に泳者に働く抵抗力がクロールよりも背泳ぎの方が大きくなると考えられますが、これは今後の研究課題の1つです。


ーー抵抗を最大限減らして、速さを出すためのバタ足の方法は?

バタ足を大きく打たないことです。そのためにも、バタ足が担う役割を理解する必要があります。
私は、速く泳ぐ上でのバタ足の役割を「推進力を増やすこと」よりも「抵抗力を小さくすること」にあると考えていますので、推進力を増やすためにバタ足を大きく打つ試みは、反対に抵抗力の増加を誘引し、減速を招くのではないか、と考えています。


ーー今現在もしくは次に予定している、泳ぎの研究テーマは?

現在、最も知りたいと思うことは、「泳ぎの動作と抵抗力の関係」についてです。競技現場でも研究でも「抵抗の小さい泳ぎ」という言葉が当たり前のように用いられますが、まだそれを定量的に示した研究はあまりありません。それは、抵抗力を評価することが非常に困難であることに起因します。

そのため、今後も研究を重ね、「ヒトの水泳中の抵抗力とは何か?」ということについての理解を促進できるよう、励んでいきたいと思います。

クロールといえば、バタ足で盛大に水しぶきをあげればあげるほど速いイメージだったので、今回の発表はこれまでの常識を覆された。
今回の研究結果を参考に、抵抗の小さいバタ足のやり方を考案すれば、信じられない速さが手に入るかもしれない。さぁ、レッツスイミング。