漫画「愛と誠」の紛失品が落札…膨大な数の“原画”は誰が管理している?

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  • 人気漫画「愛と誠」の原画がオークションに無断で出品され400万円で落札
  • 原画は、基本的には漫画家が管理する
  • 漫画家の死後、どう保存していくのかが問題視されている

「愛と誠」の紛失原画が400万円で落札

1970年代に「週刊少年マガジン」の編集部が紛失した人気漫画「愛と誠」の原画15枚のうちの1枚が、5月にインターネット上のオークションに無断で出品され、400万円で落札されたことが分かった。

「愛と誠」は、1973年に連載開始した、梶原一騎さん原作、ながやす巧さん作画の純愛漫画。

1974年頃、映画化に向けて関係先に貸したカラー10枚、モノクロ5枚の原画が所在不明となり、このうちカラー原画1枚が、漫画専門店「まんだらけ」の会員制競売サイトに出品されたのを「週刊少年マガジン」の編集部が発見、サイト側に中止を要請したが落札されてしまったのだという。

残り14点の原画は所在不明のままで、編集部は「今後、オークションや店頭で原画を見掛けた方はご一報をお願いします」としている。

このニュースで気になったのは、「そもそも漫画の原画はどのようにして管理されているのか?」という点。

管理は出版社なのか、それとも漫画家なのか?そして、膨大な数の原画を管理しきれているのか?

漫画の原画10万点以上を収蔵している「横手市増田まんが美術館」の担当者に話を聞いた。

原画は基本的には漫画家が管理する

――漫画の原画は誰が管理しているのでしょう?出版社?それとも漫画家?

原画の所有者はあくまでも漫画家であり、基本的には漫画家が管理することとなっております。
雑誌での掲載後、単行本化及び二刷り(にずり:重版が掛かるタイミング) まで出版社で保管し、その後漫画家へ返却する…というのが一般的なようです。

しかしながら、作品によっては更なる重版まで管理するものもあれば、今はデジタル時代ですので、データ化し、すぐに原画を返却するオペレーションを取っている出版社もあります。

いずれにしましても、漫画家や出版社により、その保存形態は異なる部分があるのが現状です。

原画の保存状況を把握することは難しい

――現状、全ての原画を漫画家が管理できているのでしょうか?

上記のとおり、対応にいくつかのパターンがありますが、漫画家個人や出版社により原画は比較的健全に保存されてきたと認識しています。

ただし、漫画家に返却されてからの管理は、あくまでも漫画家個人の責任となるため、全ての原画の保管状況を把握することは難しいと言えます。

漫画家の死後、どう保存していくのかが問題視されている

――原画の管理に関して、問題になっていることはありますか?

これも個人差や会社組織の大小によって差がある部分ですが、日本のマンガ文化の発展を支えてきた多くの漫画家が鬼籍に入る中、残された遺族がその保存を担っていくのが厳しいという状況も問題視されています。

そうした中で、どう漫画原画を保存していくかという議論や研究が国レベルで進められているという状況です。

原画の保存に関しては、「漫画家(作者:所有者)がどう扱う考えなのか?」が最優先に尊重されることであり、実際は「漫画家が100 人いれば100 人の考え方がある」ということになります。

原画そのものを「印刷物の版下原稿にすぎない」と考えている漫画家もいれば、「血と汗と涙の結晶」と感じ、芸術性を重んじる漫画家もおります。

出版社から返却された原画をそのまま廃棄したという漫画家の話も聞きますし、丁寧にデジタル化して保存している漫画家もおられます。本当に様々です。

――「愛と誠」の紛失原画がオークションに出品されたことについてはどう思われますか?

出版社は原画の所有者ではありませんが、版権を管理する上で漫画家とある意味、「一体」の関係性にあるため、その取扱いについても漫画家と出版社が共有してあたるのが一般的です。

そのため、今回のような「売却」という事案には、出版社として版権を管理する立場としても相応の対応を取る必要があると感じます。

財産(原画)の散逸もさることながら、出品者が原画売却により利益を得る事実が、その作品を元に商業的な行為を行っていると解釈できるわけで、出版社としても無視できないものと推察します。

漫画原画の保存に特化した美術館としてリニューアル

――横手市増田まんが美術館としては今後、漫画原画の保存にどう関わっていこうと思っていますか?

いずれにしましても、当館は「漫画原画の保存」に特化した美術館としてリニューアルする計画を遂行中(2019年春にリニューアルオープン)であります。

漫画原画を文化資源と捉えた取り組みを展開していく中で、漫画家の意向を元に出版社との調整も図りながら、原画収蔵を進めていく考えです。