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感染源の“異端宗教”は野党勢力? 韓国コロナ感染激増も政争の具に

韓国で1週間に感染者が30倍、温床の新興宗教「新天地」とは?

カテゴリ:ワールド

  • 5日連続で感染者100人超、世界2位の“感染大国”に…
  • 集団感染は「悪魔の仕業で我々は被害者」 “邪教”の正体とは
  • 国民は大パニックでも韓国政府は“責任転嫁”?
感染が集中する南部・大邱市を訪問する文在寅大統領

韓国での感染拡大が止まらない。

2月中旬に文在寅大統領が「遠からず終息するだろう」と発言したが、「国民は『終息(ジョンシク)』を『増殖(ジュンシク)』と聞き間違えた」という皮肉まで飛び交っている。

2月25日午後6時現在、韓国で確認された新型肺炎の感染者は977人、死者は10人に上った。実に5日連続で感染者が100人以上増えた形だ。今や世界2位の“感染大国”となった韓国だが、実は2月18日まで感染者数は31人にとどまっていた。つまりわずか1週間で30倍に膨れ上がったのだ。ではなぜ韓国で急速に感染が拡大したのか。ターニングポイントとなったのが、「31番目」の感染者だ。

“密着礼拝”で集団感染、今後も拡大の恐れ

「新天地イエス教会」の礼拝所(韓国・大邱市)

31番目の感染者は、南部・大邱(テグ)市に住む60代の韓国人女性。女性は2月10日に発熱したが、「海外渡航歴はない」と主張し2度に渡ってウイルス検査を拒否したという。結局、女性は肺炎などの症状が悪化し18日になって感染が確認された。

女性は発熱した後の1週間の間に、大邱市内で開催された新興宗教団体「新天地イエス教会(以下、新天地)」の礼拝に2度足を運んでいた。韓国政府などによると、この礼拝には延べ2000人が参加。隣の人同士が触れ合うほどの密集した環境のもと、1時間半に渡って行われたという。これが急速な感染拡大の「温床」になったと見られている。女性と同じ礼拝に参加した信者の間で集団感染が発生し、現時点で韓国で隔離されている感染者のうち、約6割が「新天地」の関係者とされる。さらに、韓国保健当局は「現時点で調査対象となっている約9200人の教会関係者の中で発熱などの症状を訴えたのは約1300人」としていて、今後さらに感染者が増加する恐れもある。

「新天地」側は当初「信者の名簿や連絡先の提供」に消極的で、“信者の情報を隠している”という批判が高まっていた。文大統領も集団発生が発覚した当初、「教会が提供する情報だけでは措置が進まない」と明確に不満を漏らしていた。韓国政府も手を焼く「新天地」とは、一体どんな団体なのか。

感染は「悪魔の仕業」 “異端宗教”の実態

「新天地イエス教会」の礼拝

「新天地」は1984年に設立された新興宗教で、信者の総数は推定21万5千人。韓国メディアによると、教祖のイ・マンヒ氏は信者たちの間で、地上に再臨したイエス・キリストとしてあがめられている。韓国における評価は、端的に言うと“カルト宗教”で、中国メディアは“邪教”と呼んでいる。そして信者たちは通常、自分が新天地の信者であることを隠しているという。このため、韓国政府は礼拝に参加した信者の全体像を把握するのに苦労したのだ。

韓国で他の宗教団体が「新天地」を警戒するのは、その布教のやり方だ。韓国メディアによると、信者の中には「刈り入れ屋」と呼ばれる秘密要員が存在し、一般の教会に身分を隠して忍び込み、引き抜き行為に及ぶというのだ。このため、多くのプロテスタント系教会が「新天地立ち入り禁止」などの標識を教会の入り口に立て、警戒を促している。また一部韓国メディアは、内部告発者の話として「一般の教会に侵入して新型肺炎を拡散し、蔓延が新天地の問題ではないこと知らしめよう」という指令が下った、と伝えた。教会側は「全くの事実無根」と否定したが、韓国中の教会がパニックに陥ったことは言うまでもない。

一方、聯合ニュースによると「新天地」のイ教祖は、集団感染が発覚した後、信者向けに以下の声明を出したという。

「今回の病魔事件は、新天地の急成長を見た魔鬼がこれを阻止しようとしたものだ」

礼拝での感染防止対策に関する不備を棚上げし、ウイルスを「悪魔の仕業だ」と強調することで「むしろ自分達は被害者だ」と主張したのだ。これには、国民の不満と恐怖が爆発した。韓国大統領府のホームページに寄せられた教会の解散を求める国民請願には66万人以上(2月25日午後5時現在)が賛同し、「新天地バッシング」はピークに達している。こうした中、イ教祖は25日に再び声明を発表。「大邱の信者達が多大な被害を受け心が痛みます。新天地イエス教会は政府に協力して信者の全数調査を進めることにしました」と態度を一転させ、事態の鎮静化に向け政府への協力姿勢を強調した。

国家的な混乱でも、やはり“南南葛藤”

文在寅大統領は、政府の警戒レベルを最高水準に引き上げた

感染者が雪だるま式に増え続ける危機的な状況においても、韓国の政界は“異端宗教”を巡って、互いへの“口撃”に固執している。政権を支持する革新派・与党勢力は朴槿恵前大統領時代から「新天地」と保守派に“つながり”があった、と主張している。

文大統領も政府の感染症への警戒レベルを最高水準に引き上げると表明した23日の対策会議で、“異端宗教”に度々言及し、「新天地の集団感染の前と後では全く状況が異なる」と強調した。これに与党議員も同調し、揃って「新天地バッシング」を強めた。一方、現最大野党は新天地とのつながりを否定。逆に「文政権の危機管理に問題あり」との批判を繰り返している。また、政権と対立する保守派の朝鮮日報は「政府の初期対応の失敗について、文大統領の謝罪がなかった」と批判。ちなみに2015年にMERS=中東呼吸器症候群の感染が韓国でも拡大した際、当時野党の大物だった文在寅氏は政府の無策ぶりを痛烈に批判したが、これについても、現野党側は「そっくりそのままお返ししたい」と皮肉たっぷりに批判している。

与野党の批判の応酬は4月の国会議員選挙を多分に意識したものだ。文大統領としては、国民の怒りの矛先を“異端宗教”に向けて責任転嫁し、「減点を免れたい」という思惑があるのかもしれない。また、新天地=保守=野党という構図を作り出せば、4月の選挙を有利に進められるという政治的な計算も垣間見える。しかしすでに、急速な感染拡大で韓国国民の不満と不安はピークに達し、与党には逆風が吹いている。ここで文大統領が今後の危機管理の対応を誤れば、政権は一気に求心力を失うことになるだろう。

【執筆:FNNソウル支局 川崎健太】

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