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台風被害乗り越え"奇跡の輝き” あしかがフラワーパークで500万球“希望の光”

カメラマンが見た・撮った・感じた美しい光

カテゴリ:国内

  • イルミネーション開催2週間前に台風で深刻な浸水被害
  • スタッフ総出で1万個ものカプセルを洗い復旧作業
  • 1週間遅れでイルミネーション開催 圧巻の新作もお目見え

点灯直前に台風被害、「もうだめかも」

2019年10月12日、多くの地域に甚大な被害をもたらした台風19号。

この台風により、栃木県足利市にあるあしかがフラワーパークも園内全域が冠水、最大水位が180センチにも達した。

台風被害を受けて冠水した大藤 10月13日撮影

それは、イルミネーションの開催まで2週間と迫り、スタッフ一同最終の仕上げに向けて奮闘している最中での出来事だった。

停電の為被害状況が分からず、「今期はダメかもしれない」と誰もがそう思ったが、「1球でも光るのなら、1つでも気持ちが届けられるのなら、点灯しよう」という想いから復旧作業を開始した。

水に浸かってしまった花のカプセルは、花びらの中まで細かい泥がこびり付いて、1万個にのぼるカプセルを洗う作業は困難を極めた。

泥水に浸かった電飾

しかし、「点いた!」
1つの光がスタッフに希望を与えた。

イルミネーションを飾り付ける藤棚は、幹まで泥水に浸かってしまったが、幸いにも光合成に必要な葉までは浸からずにすんだ。

あしかがフラワーパークのシンボルツリーが守られた事は、スタッフにとって一番の励みになった。

部品を洗うスタッフ

18年前、イルミネーションを始めた時から製作を担当している長谷川広征さんは、
「ある意味、今年以上に一つの明かりに対してこんなにも大切に思ったことはなかった。一つの明かりで皆様の希望の光になればいいなという思いで復旧作業を進めていきました。点灯した瞬間、歓声を上げているお客様の姿を見て、本当に頑張ってよかったとこみ上げる思いがありました」と語った。

災害を乗り越えたイルミネーションひとつひとつの輝きは、来園者だけでなくスタッフにも希望の光を照らした。

500万球が輝く“日本一”のイルミネーション

あしかがフラワーパークのイルミネーション「光の花の庭」は、今年で開催18回目。

500万球を越えるイルミネーションは、長崎県ハウステンボスの「光の王国」、「さっぽろホワイトイルミネーション」と並ぶ「日本三大イルミネーション」に認定され、全国5542人の夜景鑑定士と一般の投票者で選ぶ「イルミネーションアワード」の「イルミネーション部門」で4年連続となる全国1位を獲得している。

“奇蹟の大藤”イルミネーション

春には色とりどりの花が咲き誇る園内。それに負けない光の花を咲かせようと始めたのがこのイルミネーションである。第1回目は6万球の光から始まり、18回目の今年は500万球まで増えた。

デザイナーではなく、花の専門家であるスタッフによって作り出されるイルミネーション。花の美しさや特徴、細部までを再現するべく光を包むカプセルは、花びらの形まで本物そっくりにデザインされ、電球の光では表せない花びらの色はカプセルに直接塗って、実際の色に近づけた。

想いを光りに込めて、圧巻の新作登場

2019年一番の目玉は新作「光のふじのはな物語」。春に咲く大藤が、うす紅、紫、白、黄色と、1ヶ月の間に姿を変えて行く様を1本の光の大藤で再現している。

2年前から準備を進め、スタッフみんなが楽しみにし、最後の設置作業を進めていた中での、被災だった。

2019年新作 「光のふじのはな物語」

4色の光が、藤棚を埋め尽くすように織りなす情景は、
「うす紅藤」は、桜が舞うような軽やかなイメージを
「紫藤」は、大藤のもつ荘厳さを
「白藤」は、雪降るような純白の世界を
「きばな藤」は、太陽にキラキラと輝く様子を表現している。

「光のふじのはな物語」の元となった4種類の藤の花

製作スタッフは思いを語った。

「現実にはないものですが、私たち藤を育てる者にとっては夢のような世界で、イルミネーションで見られるだけでも幸せな気持ちになります。大藤が無事であったこと、多くの方の応援、励ましの声をいただいたこと、この作品を完成させていく中で力となり、感謝の気持ちを込めて作り上げました。この樹の持つ生命力も感じていただければと思います。イルミネーションというのはお客様に見て頂いてこそ本当の輝きが出ます。」

取材後記

私は、カメラマンを目指している20代女子だ。
その大きな理由は、美しいものや綺麗なもの、世の中で起きている伝えるべきものを撮影し、多くの人に見てもらいたいからだ。

10月、台風19号で東京の二子玉川の川の決壊現場の取材に行った。
1階まで浸水した家は泥で汚れており、これをきれいにするのは気が遠くなるような作業だと思った。あの時の泥の匂いは、今でも忘れられない。

クリスマスシーズンを前にイルミネーションの取材を進めていた。その中で、「あしかがフラワーパーク」は、台風19号の影響で園内が浸水し、多くの花が泥だらけになったことから、公開が危ぶまれているということを知った。
スタッフが、「毎年この時期にイルミネーションを楽しみにしている人たちを元気づけるために、たった1輪の花びらでも光を灯したい」と語っている事を知り、撮影に行きたいと強く思った。

取材に行くと、「今年以上にひとつの明かりを、こんなにも大切に思ったことはない」と、スタッフは話してくれた。スタッフの誰もが、イルミネーションに対する思いが強く、それは私の想像をはるかに超えていた。 実際の花に思いをかけるのと同じように、光の花びらひとつひとつにも心を込めている姿に感激した。

今回、感じたままを伝えたいと思い、自分自身で慣れないナレーションにも挑戦した。実際に自分の目で見て、肌で感じたことを伝えようと、映像に加えて、声に思いを込めた。

【あしかがフラワーパーク】栃木県足利市迫間町607 電話0284-91-4939
HP https://www.ashikaga.co.jp/

取材・執筆:取材撮影部 楠瀬琴美