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裁判員裁判のやり直し!? 東名“あおり運転”裁判で東京高裁が石橋被告の一審判決を差し戻し…その理由は?

カテゴリ:国内

  • 東名“あおり運転”裁判で石橋和歩被告の懲役18年一審判決を東京高裁が破棄差し戻し
  • 一審判決やり直しと判断されたポイントは?専門家解説
  • やり直しも裁判員裁判?裁判員や遺族のやりきれない思い

一審差し戻しで遺族「前進じゃなくて後退」

2017年6月、神奈川県の東名高速道路下り線で起きた事故をめぐり、危険運転致死傷などの罪に問われている石橋和歩被告(27)。
執拗なあおり運転の末にワゴン車を停止させたところ、トラックが衝突し、萩山嘉久さんと妻の友香さんが亡くなり、2人の娘がけがをした。

去年12月、この事故に「危険運転致死傷罪」が適用になるのかどうかが問われた一審で、横浜地裁は「危険運転致死傷罪」を適用し、石橋被告に懲役18年の判決を言い渡した。

しかし…12月6日の控訴審判決で、東京高裁は一審判決を破棄した。

「原判決を破棄する。本件を横浜地方裁判所に差し戻す」とした上で、「危険運転致死傷罪の成立を否定すべきものではない」と指摘し、裁判のやり直しを命じた。

裁判前の手続きに誤りがあり、弁護側に正当な主張や立証の機会が与えられていなかったと判断したことが、一審差し戻しの理由とされているが…裁判のやり直しを命じる判決に、遺族は戸惑った。

<一審差し戻しを受けて、萩山さん夫婦の遺族は…>
前進じゃなくて後退。また横浜の裁判員裁判に戻る形の判決だった。きょう来たのは、何だったのかって考えてしまう」


「直撃LIVEグッディ!」では、元東京地検特捜部の若狭勝弁護士と西川研一弁護士が、高裁の判断や今後の審理のポイントについて解説した。

大村正樹フィールドキャスター:
今回、一審に差し戻しが言い渡されました。一審、裁判員裁判の前には「公判前整理手続き」というものが行われます。これは裁判所が開き、検察官と被告人の弁護人などが出席して、三者会議のような形で「次の裁判ではどういったことを争点にするのか」を話し合うんです。

大村正樹フィールドキャスター:
この公判前整理手続きで横浜地裁は「危険運転致死傷罪は成立しない」という見解をあらかじめ表明していたそうです。にもかかわらず、結果的に危険運転致死傷罪での判決となりました。これに法令違反があるということで、差し戻しとなりました。

安藤優子:
まず若狭さん、公判前整理手続きは、なぜやるんですか?

若狭弁護士:
裁判員裁判が始まったがために、今までの裁判のように法廷で争点があれだこれだとやっていると、短い期間の裁判員ではとても収まらなくなるんです。裁判員の負担を減らすために、裁判員裁判が始まる前にあらかじめ関係者で「争点はこれにしますよ」と決めた上で、裁判を始めます。

安藤優子:
その争点を決める時に、横浜地裁は「危険運転致死傷罪については争わない」という見解を述べていたということですか?

若狭弁護士:
裁判所として「危険運転致死傷罪は成立しない可能性がある」という程度のことは言っていたと思います。争わないというか…危険運転致死傷罪が成立するかどうかは依然として大きな争点ではあるんですが、裁判所の考えとしては、これを仮に裁判でやったとしても危険運転致死傷罪を最終的に認めるのは難しいのではないかと言うような見解を、検察と弁護側に示していたと思います。

安藤優子:
でもそれって、なんだかフェアじゃないような気がしませんか?西川さん、裁判が始まる前から「そうはならないんじゃないの」って裁判所が言うのはどうなんですか?

西川弁護士:
争点整理の中で、どこにそれぞれの主張と立証を集中させるかということは非常に大事な問題です。裁判所としてその危険運転致死傷罪が成立するかどうかについて、ある程度見解を述べておくのはあり得ることだと思います。今回それについて因果関係を認めるのは難しいのではないかと話をされていた。だから検察側としても監禁罪を予備的訴因という形で、予備的に主張し始めたわけです。裁判所としては公判前整理手続きでそういったことを提示していたにもかかわらず、その裁判の中で裁判員がそういった成立を認めた、そこで手続き的な問題があるということのようですね。

若狭弁護士:
弁護側としては、それだったら前もって言ってくれれば反論ができたのに、その反論の機会がないまま不意打ちのような形で危険運転致死傷罪が判決で認められてしまった。それはおかしいでしょうというのが弁護側の主張であり、今回の高等裁判所の一つの判断なんですね。

安藤優子:
一審の過程で「それ不意打ちじゃないですか?」って弁護側が言ってもよさそうだと思ったんですが…

西川弁護士:
それは、おそらく最後の判決の段階まで弁護側も想定できなかったと思います。途中そういうことを示唆する場合もありますが、何もそういったサジェスチョンがなく公判が進んでいくのが通例ですから。弁護側にとっては、判決が出て初めて不意打ちであったことがわかるという状態だったと思います。

木村太郎(ジャーナリスト):
こんなでたらめなの、初めて見ました。この事件の最大の争点は、人の車を高速道路に止めてそれが危険かどうか、危険運転致死傷罪になるか、その一点なんですよ。それを裁判所が始まる前から当てはまらないって言って。

若狭弁護士:
裁判所は軸足がブレたというか、危険運転は認められないという考えを持っていたにもかかわらず、いざ裁判になってみると、おそらく世論などもあったと思います。裁判員の中にも危険運転が成立するんじゃないかと言った人もいるかもしれない。それによってブレて、最初に抱いていた考え方を変えて危険運転を最終的に認めてしまったと。これは裁判所の軸足のブレであることは間違いないと思います。

安藤優子:
西川さん、これを一生懸命やった裁判員たちは時間を返してくれと。ご遺族の怒り、落胆ももっともですし…どう思われますか?

西川弁護士:
本当におっしゃる通りだと思います。公判前整理手続きというのは裁判員を抜きにして裁判官と検察側と弁護側で行われるんです。整理手続きが終わった段階で裁判員が公判の中で出てくるといった形なんです。ですから裁判員側にとってみればそんな話がされてるって、資料を読めば可能だったかもしれませんけど、普通の方は分からないですから。そういった自分たちが参加していないところで、自分たちの判断が何か覆ってしまうとか違法だと言われるのは非常に心外でしょうし、ご遺族の方たちにも同じ苦しみを味わわせることになってしまう…

安藤優子:
本当ですよね。もう一度やり直すということは、時間的な負担もそうですけど、もう一度同じプロセスで同じ苦しみを味わわなければいけない、ということですよね。

木村太郎(ジャーナリスト):
危険運転致死罪にあたるかどうかって議論をこれからずっとやると思うんです。その時に高裁が「危険運転致死傷罪の成立を否定するべきものではない」と言ったことが、その判断に影響するんでしょうか?

西川弁護士:
影響する可能性は高いと思います。高裁の判断は一審・地方裁判所の判断を拘束するというか、しばりをかけるということが法律の立て付けなんで。高裁が言ったことは、今後地裁の審理をする際に影響することはあると思います。

(「直撃LIVE グッディ!」12月6日放送分より)

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