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自民・岸田政調会長が「スタートアップ企業」と意見交換…「日本ではスタートアップ起業できない!」との指摘相次ぐ

カテゴリ:ビジネス

  • 岸田氏が意見交換…「スタートアップ企業」って何?
  • 日本では企業がスタートアップ=起業しずらいとの厳しい指摘
  • 起業の促進は岸田氏の掲げる「多様性」の前提?政府の取り組みは…

日本にも起業文化を根付かせよう!自民党議員らが視察

11月1日に開業した渋谷スクランブルスクエア

11月22日、東京・渋谷駅近くに姿を現した自民党の岸田政調会長や平井卓也前IT相らが視察と意見交換のために訪れたのは、駅前のビル内にできたばかりのある施設だった。

それは、近年「スタートアップ企業」と呼ばれるタイプの新興企業や、大学、クリエーター、大企業などが交流し、新しいアイディアや価値を生み出すことを目的として、11月に開業したばかりの交流拠点施設だ。

スタートアップ企業とは、その名の通り新たなビジネスモデルをスタートさせようとする創業初期段階のIT系の新興企業を主に指す。いわゆるベンチャー企業と似通っているものの、イノベーションを前提とし、ビジネスの出口を意識していることなど、様々な点で定義に違いがあるとされる。

そんなスタートアップ企業の中でも、特に評価が高く(企業価値又は時価総額が10憶ドル以上)かつ未上場のスタートアップ企業は希少価値が高いなどの意味も込めて“ユニコーン企業”などと呼ばれることがある。ちなみに上場前にユニコーン企業と呼ばれていた企業としては、FacebookやTwitterなどの名前がよく挙げられる。日本ではメルカリがそうだとされる。

視察する自民党の岸田政調会長(11月22日)

この施設での会合の冒頭にあいさつした岸田氏は「楽しみに駆けつけた」と笑顔を見せながらも、次のように述べた。

「このスタートアップ、ユニコーン企業めぐる世界の動き、シリコンバレーですとかリスボンですとか、こういった世界各地でのダイナミックな動きを知る中で、改めていま、日本の現状について大きな危機感を感じている方も多い」

岸田氏はこのように、アメリカや中国などに比べて日本では起業文化がいまだ育っていないことに危機感を示した。その一方で、日本にも「世界有数の技術や人的資源はあるんだと確信をしている」と強調し、この日の視察を「政治の立場で何をしなければならないかを考える思いを巡らす契機にさせていただきたい」と訴えた。

さらに国内でより多くのスタートアップ、ユニコーン企業が輩出されるよう、自民党としても後押しする考えを示し、平井氏も「スタートアップの皆さんのポテンシャルを開放せずして(日本に)次の時代はない」とエールを送った。

挨拶する岸田政調会長(11月22日)

企業がスタートアップできない日本にダメ出し相次ぐ

視察終了後には、スタートアップ企業やスタートアップ企業を支援する組織が自らの取り組みを発表すると共に、日本における起業環境について意見交換が行われ、スタートアップ企業という存在について、いかに日本が不慣れかという指摘が、次のように相次いだ。

「海外のスタートアップが日本に来てよく直面していて相談を受けることが、役所で英語が通じない、物件が借りられない、家が借りられないオフィスが借りられない、ビザが煩雑で日本で起業することが難しい、まずどこかに就職して就労ビザを取得しないといけない、行政のサポートがまだ足りない」(支援組織)

「スタートアップ企業の登竜門とも呼ばれるWEBサミットへの参加者7万人に対して日本人は100人から200人程度。4年前は4人だった」(支援組織)

「(海外において)日本のスタートアップで活用されているところはあるか?と質問したら『あまり思い浮かばない』といわれ悔しい思いをした」(スタートアップ企業)

また、教育現場からの働きかけが重要だとする指摘もあった。

「大学のキャリア教育は、オールイン、つまり自分の人生をかけてスタートアップに飛び込むというところをほとんど言わない。シンプルに言えば、大手志向とか安定志向とか全撤廃すると、全員がオールインすると、それくらいのモチベーションをもって大学サイドが臨んでいただければ、グローバル市場での日本の競争力や国力増強につながることは間違いない」(支援組織)

さらには、岸田氏が自らの政策ビジョンの1つとして掲げる“個性や多様性”というキーワードを例に次のような発言も出た。

「岸田先生が言われている個性や多様性を尊重する社会を実現するためにはそもそも日本で勝つ企業が生まれていかないことには決して成り立たない」(支援組織)

こうしたさまざまな指摘を受けて岸田氏は改めて、「ぜひ今日いただいた刺激、我々党の中でもしっかりと結果につなげられるように努力したい」と述べ、政治の立場からは税制や予算措置などを通じて、より起業しやすい環境作りに努める意向を示した。

税制での支援を!政界からは力強い声が挙がるも、懐疑的な指摘も

自民党・税制調査会総会(党本部・11月21日)

岸田氏らによる視察と意見交換が行われた同日、自民・公明両党はそれぞれ税制調査会の総会を開き、来年度の税制改正大綱に向けた議論が本格的にスタートさせた。

自民党の甘利税調会長は、「未来を先取り」した税制を築いていくと強調し、麻生財務大臣も「成長に向けた投資促進」などの政策課題に対して、「ぜひ有効に意味のある仕組みをご検討いただければ」と述べた。

ここで使われた“未来”や“成長”とはまさに、スタートアップ、ユニコーン企業と呼ばれる存在を意識しており、こうした企業が生まれてくる環境やその成長を支援する環境の整備を、税制面からも行っていくべきとの指摘が相次いだ形だ。

一方で、こうした政治的な後押しや盛り上がりについては、即効性を疑問視する向きもある。岸田氏は周辺に「具体的に何か動いているとは聞いていない」と漏らしており、関係省庁からも、「これはコーポレートガバナンスの問題だ」と、つまりスタートアップ企業を大企業が後押しするかの最終判断はあくまで大企業側であり、政府が強調する税制などによる後押しは、あくまで環境整備に過ぎないといった指摘だ。

政府与党ではこの年末、補正予算案や来年度予算案の編成、さらには来年度の税制改正などの議論が毎日行われている。まさに政治の本業であるが、そこに今回のような現場から上がる“生の声”をいかに反映できるか、政治の力が試されている。

(フジテレビ政治部 自民党担当 福井慶仁)