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日韓GSOMIA破棄「凍結」 ウラにあった文大統領の“大きな誤算”とは?

アメリカを怒らせ、北朝鮮は態度を硬化 文政権がとるべき道は

  • GSOMIAが国益に深く関わるアメリカは当事者そのもの
  • アメリカの怒りを見誤った点が韓国の大きな誤算
  • 対北朝鮮外交でも文在寅政権は失敗を犯している

先週金曜日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について破棄の凍結を決断した。しかし韓国大統領府は「日本政府が発表した合意内容は歪曲されている」と批判。これに対し経済産業省は韓国政府と事前にすりあわせたものと反論するなど日韓関係は予断を許さない状況が続く。

今回はスタジオに識者を迎え、GSOMIAをめぐるアメリカの利害と影響、そして南北関係も含めた韓国・文在寅政権の誤算について掘り下げた。

GSOMIA破棄凍結の決定にアメリカはどう影響したか?

外交ジャーナリスト 手嶋龍一氏:
日韓のメディアでは「アメリカはGSOMIAのとりあえずの維持存続について仲裁した」と報じているものが多いが、アメリカは仲介者ではなくど真ん中にいる当事者なんです。この図に表した東アジアの「三角安全保障同盟」ですが、GSOMIA以前は日米・米韓の間には同盟関係があったが日韓の間にはなかった。そこで2016年に、同盟関係ではないものの、北朝鮮によるミサイル発射などの際には日本と韓国が機密条約のやりとりを直接できる取り決めになったのがGSOMIA。アメリカは、文在寅政権がこれを断ち切ることを容認できません。

外交ジャーナリスト 手嶋龍一氏:
水面下の説得も難しく、エスパー国防長官も出てきて説得をして話をまとめました。日韓の間で直接的に最後のやり取りが行われたというよりも、アメリカが妥協案を用意してそれぞれに提示した。アメリカがこれほど真剣に取り組むとなれば、さしもの文在寅も破棄はできない。一方で形だけでも何らか国内に説明しなければならない。それが日本政府への批判になっています。
ただ、自民党の有力者には「日本が100%勝った」というような声もあるが、これは言うべきではない。交渉に勝った者が相手を怒らせて窮地に立たせてはダメ。冷静に聞き流す必要があります。

反町理キャスター:
アメリカは一枚岩になっているのでしょうか、いないのでしょうか?

外交ジャーナリスト 手嶋龍一氏:
一枚岩ではない可能性が、この政権に限ってはあります。全貌は明らかではないが、トランプ大統領とポンペオ国務長官は、GSOMIAなどなくてもよいとの考えに傾いている疑いがある。なぜならこの2人は、3回もの米朝会談を行うほどに何としても北朝鮮の非核化を実現したいと考えているからです。北の態度が硬化している中で、トランプ大統領とポンペオ国務長官は沈黙せざるを得ない。今後の朝鮮半島情勢における大きな問題です。

東京大学大学院 教授 木宮正史氏:
日本では文在寅政権は反米だと言われますが、私の見解は全く異なり、文在寅は「親米」でもない「親トランプ」。トランプを説得して米朝交渉に取り組ませ、その中で韓国が主導的立場となり南北関係を改善していこうという考えです。
今回の破棄凍結について、アメリカは最後になって力を尽くしました。しかし最後まで決断がずれ込んだことを考えると、韓国もここで「アメリカ」というより「アメリカ=トランプ」と見ていたため、トランプがGSOMIA問題についてきつく言わないことが影響したと考えます。韓国にとってはある種の誤算があったかもしれません。

韓国の誤算はどこにあったのか?

小野寺五典 元防衛相 自民党安保調査会会長:
交渉の中で今回GSOMIA破棄のカードを下ろした韓国を攻撃する必要はない。ただ、文在寅大統領は日本に対するカードとして「GSOMIAの破棄」を使ったと思うが、このカードが最も響いた相手はアメリカだった、という点が大きな誤算だったのでしょう。
私は2016年のGSOMIA締結以前にも以後にも防衛大臣を務めましたが、GSOMIAの存在による安全保障における変化の度合いを感じました。GSOMIA破棄によって最も困るのは日本ではなくアメリカであり、そのアメリカを怒らせたということ。在韓米軍からすれば、自軍が危険に晒されることへの明確な拒否反応です。これを見誤ったのが韓国の誤算です。

小野寺五典 元防衛相 自民党安保調査会会長:
さらに今後難しくなるのが、在韓米軍駐留経費の問題です。アメリカが韓国に要求しているという内容が報道されています。韓国がこの交渉において譲歩し現在より負担額を上げれば、文在寅政権はアメリカに対して弱腰だとますます批判されます。かといってトランプ大統領は、GSOMIAの破棄凍結を特に評価していません。つまり全く別の悩ましい問題がさらに起こっているわけで、その点には同情します。

南北関係において文政権が犯した失敗、問題発言とは?

反町理キャスター:
南北関係についてはどうか。先日は「2045年の光復100周年には平和と統一でひとつになった国として世界にしっかり位置づけられるようその土台を強固に築いていく」という光復節での発言がありました。文大統領は、南北で連携して一つの経済圏を作り日本を超えるとまで述べた。一方でGSOMIA破棄の凍結という事態を受けての南北関係はどうなるのでしょう。北朝鮮は韓国ではなくアメリカしか見ていない?

東京大学大学院 教授 木宮正史氏:
この光復節の発言は、北から見ると問題発言だと思う。現状では「統一」となると韓国主導以外ではあり得ないからです。過去の金大中政権も盧武鉉政権もさほど統一を掲げることはなく、文大統領も「平和共存」と言ってきたが、国内問題もありここで統一を掲げざるを得なかった。
しかし、北朝鮮が韓国に対して厳しい姿勢に転じたのはこの発言の頃からです。北朝鮮としては、南に吸収されないために米朝関係を良好に維持し、アメリカに北朝鮮を認めさせて国交正常化したい。

反町理キャスター:
日韓関係はGSOMIA関連でガタガタ、日米と事を構えるという意味にも受け止められかねない。一方で北からも総スカン。文在寅の外交政策は破綻していないか。

東京大学大学院 教授 木宮正史氏:
それはあります。日韓関係でも、いわゆる徴用工問題において日本企業の財産が現金化されることになれば経済戦争になる。それを避けるためにも、日韓首脳会談が実現すれば、韓国政府がもっと前面に出る形で国内の判決と日本との協定を両立させる知恵を出し、問題解決のために日本政府もサポートする形で関係を作るための中間点となってほしい。

(BSフジLIVE「プライムニュース」11月25日放送分より)