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GSOMIA破棄“土壇場回避”も自衛隊にくすぶる「韓国不信」

カテゴリ:ワールド

  • GSOMIA破棄は土壇場で回避も自衛隊内に「あの国とは信頼関係ない」の声
  • GSOMIAの重要性認識しつつも文在寅大統領の意向を覆せない韓国国防省
  • 日韓の防衛当局間にはレーダー照射問題をめぐる不信感がいまも…

日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)は、韓国政府が22日、失効期限の6時間前に「終了延長」を発表した。日米両政府は、様々なチャンネルを通じて韓国政府に再考を促し、土壇場での失効回避となった。
今回の決定を受け、安倍首相も、河野防衛相も、日韓、そして日米韓の連携の重要性を強調した。

安倍首相 11月22日 官邸

しかし、GSOMIAの運用に直接携わる自衛隊内では、「あの国との信頼関係はない」などと韓国への不信がくすぶっている。

“ドタキャン”乗り越え締結

GSOMIAは、防衛秘密情報を日韓が直接交換するための協定だ。相手国に提供した情報の保護を義務づけ、第三国への提供を規制しているため、重要な情報をやりとりできる。

2012年6月に締結寸前までいったが、署名1時間前に韓国政府が「反日感情」に配慮したことからドタキャンし、締結は延期された。そして、2016年11月にようやく締結に至った経緯がある。

締結の背景には、核・ミサイル開発を急速に進める北朝鮮の存在があった。政府関係者によると、GSOMIAに基づいて日韓で交換した情報の「ほとんどが北朝鮮のミサイルに関連するもの」だったという。
例えば、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、まずアメリカの早期警戒衛星が探知し、韓国のイージス艦や地上レーダーが捕捉する。地球が丸いため、日本のレーダー網が探知できるのは、ミサイルの高度が上がってからになる。一方、着弾地点の分析には日本の情報が欠かせないという。

GSOMIAが失効した場合、日韓両政府は、こうした情報を直接やりとりできなくなるが、2014年に日米韓が締結した取り決め(TISA)により、アメリカを介しての情報共有は可能だ。ただ、どうしてもタイムラグが生じてしまう。

それ以上に問題なのは、日韓の足並みの乱れは、北朝鮮や中国、ロシアに誤ったメッセージを送ることになりかねない点だ。北朝鮮は、韓国がGSOMIA破棄を通告した翌日、短距離弾道ミサイル2発を発射している。

日本語で「どうしたらいいでしょう…」

河野太郎防衛相は11月17日、訪問先のタイで韓国の鄭景斗国防相と会談し、韓国側に「賢明な対応」を求め、GSOMIA破棄の決定を撤回するよう促した。

河野防衛相と鄭景斗国防相の会談(11月17日 タイ・バンコク)

鄭国防相は「関係が行き詰まっていることは非常に残念だ。防衛協力の発展のため、ともに努力していきたい」と胸の内を述べた。
しかし、会談では、日韓双方が、それぞれの立場を主張し、相手に歩み寄りを求める形となり、進展はなかった。


鄭国防相は、韓国空軍の出身で、航空自衛隊の幹部学校に留学した経験もある。北朝鮮のミサイル発射が続く中、GSOMIAの重要性は理解している。
文在寅大統領が、GSOMIA破棄の撤回は、日本の輸出管理強化の見直しが条件だと譲らないのだ。防衛省幹部は「これ以上、防衛相同士でやっても…」と嘆いた。

文在寅大統領

今回の会談は、ASEAN拡大国防相会議にあわせて行われたものだが、夕食会の前、鄭国防相は河野防衛相の隣に座り、日本語でこう話しかけたという。
日韓関係は大事なんですけどね、どうしたらいいでしょうね

“笑顔で握手”に「また、だまされた」

日韓の防衛当局は、GSOMIAの重要性については、共通認識があるようにも見えたが、決定的に対立した局面があった。韓国軍によるレーダー照射問題だ。

韓国軍によるレーダー照射問題

2018年12月、韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊機の哨戒機に対し、火器管制レーダーを照射したのだ。日本の抗議に対し、韓国側の説明は二転三転し、事実関係を認めなかった。激しい対立は、共同訓練や相互訪問の相次ぐ中止など、防衛交流に大きな影響を及ぼした。

2019年6月、当時の岩屋毅防衛相が鄭景斗国防相とシンガポールで非公式に会談し、事態の打開を目指した。しかし、双方とも主張を一歩も譲らず、議論は平行線に終わった。
日本側の担当者は、「韓国側の担当者は、下手なことを言うと青瓦台(大統領府)にパージされてしまうので、腹を割って話せる状況になかった」と事前調整が困難だったことを振り返る。

岩屋防衛相と鄭景斗国防相の非公式会談(6月1日 シンガポール)撮影:韓国国防省

日韓の防衛当局の軋轢は、写真撮影で浮き彫りになった。
日本側の担当者によると、「非公式の会談だったため、メディアによる撮影は行わず、会談中の写真を提供することで両国は合意していた」という。
しかし、韓国側が公表したのは、会談前に両大臣が笑顔で握手する写真だった。担当者は「また、だまされた」と、ため息をついた。

自衛艦旗、レーダー照射問題…「信頼関係はない」

GSOMIAが維持されることになったことについて、河野防衛相は22日、「東アジアの安全保障が厳しい状況の中で、日米、日韓、日米韓の連携が重要だということは重ねて申し上げてきた。そういったことを韓国側が戦略的に考えた決定だと考えている」と一定の評価をした。

河野防衛相 11月22日 防衛省

しかし、防衛省・自衛隊内からは、厳しい声が聞こえる。
これまでの韓国側との問題をまったくなかったことにはできない」(防衛省幹部)

ミリタリー同士は信頼関係がなにより大切だ。韓国は、自衛艦旗(旭日旗)の問題やレーダー照射を謝るのが先だ。それをやっていないあの国と信頼関係はない」(海上自衛隊幹部)

また、別の幹部は、「文在寅大統領が勝手に興奮して、自らハードル上げて自爆したという感じだ」と文在寅大統領を批判した上で、韓国国防省にも苦言を呈した。
GSOMIAを破棄することが、北朝鮮や中国、ロシアを利するだけだと理解してないのが不思議だ。それを一番理解しているのは国防省だが、文在寅政権が続く限り、関係の好転は望めないだろう

日韓の防衛当局が、本当の信頼関係を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうだ。

(フジテレビ 政治部 防衛省担当 伊藤 聖)