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異例の20分超え!番記者が感じた安倍総理“ぶら下がり会見”の思惑

【リアル首相動静】

カテゴリ:国内

  • 「桜の会」に関する安倍首相の対応の急変
  • 繰り返された「ほかに質問はありませんか」
  • 追及の渦中で史上最長政権へ…今後の説明は?

直前に決まった20分を超える首相の官邸“会見”

11月15日、安倍首相が官邸を去る際に急遽行われたぶら下がり取材。この形式の取材は、短いと1分以下、長くても5分程度のことが多いのですが、今回は「桜を見る会」を主なテーマに、異例の20分以上に渡りました。その対応はさながら首相による“記者会見”のようでした。この長時間となった取材の背景を記したいと思います。

(首相官邸・11月15日)

記者団はこの日、首相主催の今年の「桜を見る会」をめぐり、800人を超える安倍首相の後援会関係者が参加し会場への優先入場があったこと、前日のホテルでの食事会費用について安倍事務所からの補てんがあったのではとの疑いなどに関し、野党が首相側に公開質問状を突き付けたことを受け、首相自身の見解を聞こうとしていました。そして中国で拘束されていた北大教授が解放されたことへの受け止めと合わせ、取材を要請していたのです。

ただ、首相に対する取材要請は、首相秘書官を通して事前に内容が首相に伝えられ、首相側が「応じる」か「応じない」かを判断するまで、記者たちは取材を行うことができるのかわからないままです。そしてこの日、午後6時20分ごろから行われたこの取材は、官邸側がおよそ10分前に急遽OKし、セッティングしたものでした。

桜を見る会

質問機会が得られるかどうかは首相の都合次第

実は「桜を見る会」に関するぶらさがり取材の要請は今回が3回目でした。1度目は13日の午後、首相が官邸を出る際のこと。そして2度目は15日の正午前、首相が官邸に出邸するタイミングでのことでした。

1度目、13日の質問要請の内容は2点「桜を見る会の中止判断の理由」と「自身の事務所が後援会に案内文を配っていた報道に対する見解」についてでした。しかしながらこの時は、事前に秘書官に要請をしていたにも関わらず、首相の退邸までに首相側からの返答はなく、ある意味“ゲリラ”的に記者から、歩いて去っていく安倍首相に質問を投げかけた形になりました。

この際、安倍首相は、事前に“記者側が質問を要望している”との意思は伝わっているにも関わらず、一度、記者団の前を通り過ぎ、その後わざわざ戻ってきて質問に答えました。この際は、当日発表された来年度の桜を見る会の中止について、「菅官房長官が会見で述べた通り。私の判断で中止することにした」と一言答えただけでした。

(1度目の声かけで急に歩みを変える安倍首相 @首相官邸 2019年11月13日)

2度目、15日の正午ごろの質問は「自身の後援会が桜を見る会のツアーを募集していたことに関して国会で説明する考えはあるか」との内容でした。こちらに関しては、秘書官側からぶら下がり取材に応じる旨の返答があり、予定されていた首相の出邸時間から遅れること約10分後に実施されました。

しかし、ぶら下がり取材に応じるとはいったものの、安倍首相は「国会から求められれば出ていって説明することが当然」と一言残して記者団の前を後にしようと背を向けました。そこに「集中審議に応じる考えはあるか」と更に問いかけがあり、首相は苦笑いを浮かべながら踵を返して記者団の元に戻り「集中審議については国会で決めること。国会が決めれば政府として説明を果たす」と述べ、もう1問質問が続いたのですが、早く記者団の前を離れようとしている姿勢がどちらにも通じて印象的でした。その模様はテレビでも繰り返し流されました。

(2度目のぶら下がり取材で追加質問に対し踵を返して戻る苦笑いの安倍首相 15日正午)

そして3度目に関しては前回までの対応とは打って変わって、官邸エントランスでは異例の長さといえる20分を超える、さながら“記者会見”を首相側が急遽セッティングしたのです。安倍首相はこの場で、「桜を見る会」前夜の夕食会の費用については参加者の会費で賄っていて、事務所からの支出はなく問題はないとの説明などを行いました。

“会見”で繰り返された「ほかに質問はありませんか」

今回の20分の対応で特に目立ったのは、「この件(桜を見る会)についての質問は他にはないか」と首相の方からの逆質問が複数回に渡った点でした。急遽決まったぶら下がり取材に関し、総理番記者の間では正直、前回の1度目、2度目の経験があったため、今回も首相が一言述べて足早に去ってしまうのだろうという見通しが大半を占めていました。しかしながら今回は首相の側から「聞きたいことがあるならばすべてここで聞いてくれ」と言わんばかりの強気の姿勢がにじみ出ていたのです。例えば以下のやりとりです。

記者)予算委員会について、求めがあれば応じるとのことでしたが、野党側の求めに対して与党側が応じないと言ったような話もございます。その辺りについての考えは?
安倍首相)いつも国会でやり取りしていることですから、国会のことは国会で決めるというルールですね、そして同時に国会から求められれば政府としての責任を果たしていくということがルールなんだろうとこう思います。皆さんも国会で聞いたらどうか?ということでありますが、皆さんももしここで質問があるのならば聞かれたらどうかと思いますが。

記者)今回は時間のない中ですので、改めて会見を開くお考えはないのでしょうか?
安倍首相)その質問をされるのだったら、いま質問された方がいいと思います
記者)改めて・・・
安倍首相)改めて会見をするというのであれば、いま質問してください

記者としてはいつ取材のタイミングが来てもいいように、常日頃から取材や情報収集・分析を繰り返し、知識を蓄えておくことが重要なのは当然です。とはいえ、首相側の都合によりセッティングされた唐突な長時間の取材に対する準備が万全ではない状態(記者として反省すべき点が多々あります)でもあったため、一部記者が「改めて会見を開く意思」を問いたい気持ちもよくわかりました。しかしながら安倍首相は今回の“会見”で記者からの全ての質問に答えた形にしたいとの意向がにじんだ返答を繰り返していました。

(首相官邸・11月15日)

国民の疑念は晴らされたか?

この“会見”では記者からの「なぜ今日のタイミングでの説明?先日でもきっかけがあったと思うが」との質問に、安倍首相は「事務所から詳細な報告が上がってきたタイミングだった」
と述べています。

また、記者からは「今日首相自らが経緯を説明することによって国民が感じている疑念は払しょくできると考えるか」の質問が出ました。首相はこれに「それは私が答えることではない」と返答しています。

確かに今回の首相の“会見”をどう受け止めるのかは国民それぞれの感じ方次第です。ある政府関係者は「うまいよね、『これ説明したんだから国会に出なくていいでしょ』というアリバイかなと思う。しかも、直前にぶら下がりがセットされたなら記者も質問を準備する時間がないし、総理番程度なら野党に比べたら追及が甘いでしょ。それで、『説明したぞ』という雰囲気も出る」との受け止めを示しています。

また立憲民主党の安住国対委員長は「残念ながら不意打ちのような会見では、準備したマスコミの質問や予算委には一切答えないで総理番に、準備ない記者さんに『言うことを聞け』『質問をしろ』という態度を総理大臣がしているのを見たことないので驚きました。メディアへの冒涜でもあるし国会に対しても大変失礼だと思っていますからなぜこのようなことをしたか驚いています」と述べています。総理番記者としては、力量不足を指摘されているようで心苦しいところですが、こうした受け止めが広がっています。

史上最長政権のゆるみに首相は

安倍首相がこのように「桜を見る会」について早期の幕引きを図るのには、今国会の日程が窮屈になってきているという点が挙げられます。臨時国会の会期は来月の12月9日までで残り1か月を切っています。その中で日米貿易協定や、安倍首相の悲願である憲法改正の具体的な手続きを定めた国民投票法改正案などの今国会中の可決を目指していますが、相次ぐ閣僚の辞任や、萩生田文科相の「身の丈発言」に端を発した英語民間試験の導入延期などへの対応で、審議に支障が生じています。

そうした中で、国会で自らが「桜を見る会」について追及されては、法案審議や政権運営へのさらなる影響は避けられなという危機感があるのだと思われます。しかし、国会での説明を求める野党の声はやまないとみられ、改めて国会出席について判断を迫られる可能性もありそうです。

15日の官邸エントランスでの“会見”で安倍首相は、「桜を見る会」の疑惑の数々が長期政権のゆるみから端を発しているのではないかとの問いに対し「緩みが出ないように自らに問いかけつつですね、より緊張感を持って進んでいきたいと思います」と話しています。

11月20日に、明治~大正期の桂太郎元首相を抜いて、憲政史上最も長く総理大臣を務めた人物となる安倍首相。その直前に表面化したこの「桜を見る会」をめぐる疑惑をしっかりと払拭し、節目の日を迎え、その先へと進んでいけるのでしょうか。総理番記者としても、今回、力量不足を指摘されたことへの反省を胸に、メディアとしての役割を果たすべく、今後の安倍政権の動向を注視していきたいと思います。

(フジテレビ政治部 総理番記者 亀岡晃伸)