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芸能活動に大反対した母親との確執。そして白血病…女優・夏目雅子の激動の生涯

  • 芸名も本名から「夏目雅子」へ。母親が大反対した芸能活動
  • 演技を「お嬢様芸」などと揶揄されたことも見事に払拭
  • 娘の病を機に母親にも変化が「誰よりも夏目雅子のファンに」

今から34年前、当時“不治の病”と言われていた白血病を患い、27歳という若さでこの世を去った女優・夏目雅子さん。彼女の女優人生はわずか9年。しかし、その姿は今も人々の記憶に強烈に刻み込まれている。

11月21日放送の「直撃!シンソウ坂上」(フジテレビ系)では、番組MCの坂上忍が夏目さんの兄・小達一雄さんを直撃。芸能活動を認めなかった母親との確執や最後まで演技にかけた女優魂について明かした。

母親は芸能活動に大激怒

18歳の時にオーディションに合格した夏目さんは、本名の小達雅子でドラマデビューを果たす。

そのドラマを見たある化粧品会社が夏目さんを広告のモデルに起用。水着姿の夏目さんを写したポスターは、盗難騒ぎが起こるほどだった。その後、レコードデビューした夏目さんは一躍脚光を浴びた。

しかし、母・スエさんは夏目さんの芸能活動に大激怒。芸能活動に本名の“小達雅子”を使うことを禁じられたため、急遽“夏目雅子”という芸名に変更したのだという。

母親が反対する背景には小達家が当時行っていた家業にあった。夏目さんの実家は六本木にある雑貨店で、多くの芸能関係者が利用していたという。「当時の芸能界は“スター”という印象が強く、身近に感じなかった。若い人も年配の方も、態度がぞんざいになることが少なくなかった。人間としての一般的な感覚では生きていない」と、一雄さんは母親が芸能界に強い不信感を抱いていたと明かした。

一方、一躍有名になった夏目さんにはオファーが殺到。モデルデビューから1年後に出演したドラマ『西遊記』(1978年)では、実際は男性であるとされている三蔵法師を若い人気女優が丸刈り頭で熱演し、大ブレイクした。

親友で女優の中井貴惠さんは、夏目さんの撮影現場での様子について「私の真剣な表情のアップを撮るときに、カメラの後ろに彼女がそーっと立って笑うと、歯にノリを付けていて、彼女が好きだった“より目”をするんです。一回、その顔を見ちゃうと、次のテイクも雅子がいなくても、その顔を思い出してNGを出してしまうといういたずらをされたことがあります」と、夏目さんの“おちゃめ”な素顔を明かしてくれた。

家の中に“夏目雅子”は持ち込むな!

デビューする前の様子を映したホームビデオでもおちゃめな姿が印象的だが、夏目さんは幼少の頃、母親の愛に飢えていたという。

一雄さんは「お袋は働き手としてずっとお店にいたので、雅子はひいおばあちゃんが育ててくれて。子どもの頃から、そこに対してものすごく寂しさを抱いていて、“お母さんに認めて欲しい”という思いが強かった」と話す。

その後、デビューをした夏目さんは、持ち前のキャラクターで芸能界での居場所を作っていくが、仕事用のメイクをしたまま家へと帰ると母親に「小達雅子に戻ってから帰ってきなさい!」と叱られるなど、家の中に“夏目雅子”を持ち込むことは許されなかったという。

そのため、母親は夏目さんの出演作品は見たことがなく、一雄さんは「お袋は小達雅子という女性は誰よりも愛していましたし、大好きでしたが、夏目雅子という女優は認めなかった」と明かした。

芸能人ファミリーが出演する歌番組にも夏目さんの父親と年の離れた弟は出演したが、母親は夏目さんの仕事には一切、協力をしなかった。

そんな中、芸能活動を応援してくれていた父親が胃がんを患い、47歳で亡くなってしまう。悲しみを乗り越え、女優業に突き進む決意をした夏目さんだったが、夏目さんの演技について「学芸会」や「お嬢様芸」などと揶揄されることも少なくなかった。

だが、そんな評価を夏目さんは見事に払拭した。その作品とは、22歳の時に出演したNHKドラマ「ザ・商社」。これまでのイメージを覆す大人の女性を見事に演じ高評価を獲得した。さらに、映画「鬼龍院花子の生涯」(1982年)では女優としての地位を確立。この作品でブルーリボン賞・主演女優賞を受賞した。

坂上は「映画が公開されたときに、俳優さん、監督、ほとんどの人が言っていたと思います。『誰かをキャスティングしたいって言ったら夏目さん』、『誰と共演したいって聞かれたら雅子さん』っていうくらいのインパクトは何のお世辞もなくあったと思います」と話した。

そして、夏目さんにとっても手応えのあった作品だったことから、母親を試写会に誘ったという。しかし、この出来事が2人の溝をさらに深めてしまったのだ。

映画の中では夏目さんが演じる主人公が夫の死を看取る場面があるが、このシーンは父の最期を看取る母親の姿を演技に生かしたものだったという。夏目さんはよかれと思ってこのエピソードを母親に伝えると、「そんなことまで演技に使わなくてはならないなんて…」と激怒されたという。この一件で母親はますます芸能界を嫌悪するようになってしまった。

しかし、皮肉なことに夏目さんの女優としての注目度はうなぎ上り。26歳の時にはのちに直木賞作家となる伊集院静さんと結婚し、プライベートでも世間の大きな話題をさらった。

幸せな新婚生活について語る夏目雅子さん

結婚、初主演…人生最良のときに病魔が襲う

結婚から3ヵ月後には夢だった舞台の主演の座もつかんだ夏目さん。公私ともに人生最良のときを迎えていたが、彼女の体は病魔にむしばまれていた。
それは「急性骨髄性白血病」。

当時のことを一雄さんはこう振り返る。「生まれて初めて主演を務める舞台をやっていたときに、ちょっと疲労が強かったみたいで、一泊で療養を兼ねた点滴をしてもらって、舞台にまた戻ったときに血液検査をしたんです。その結果でお医者さんからとんでもなく重い病気かもしれないから、とにかく公演を中止してくれと言われた」。

夏目さんが病院で医師から告げられた病名は「重度の貧血」。当時、白血病というのはそう簡単に今と違って断定できなかったというが、医師から「絶対に仕事をさせることはできない」と言われ、関係者が公演の中止を決めたという。

中止を告げられた夏目さんは、「ここから飛び降りてでも舞台に行くから!」と錯乱状態で取り乱してしまった。そんな夏目さんをたまたま見舞いに来ていた演出家の福田陽一郎さんが一喝し、「一番健康な状態で自分の演技を届けることがプロだろ!これはお前の舞台だ!お前が元気にならない限り、舞台は復活させない」と説得したことで治療に専念することを決意したという。

しかし、その後家族だけが呼ばれ、本当の病名が医師から知らされた。
「98.3%の確率で急性骨髄性白血病です」

その時のことを一雄さんは「98.3という言葉を使ったけれども、間違っている可能性もある。非常に難しい病気だけど、奇跡はどんな時にも起こるんです。その奇跡を起こす時に、一番重要なことは“気”なんです。強い気持ちを、治るという気持ちを、雅子さんに“治る”という気持ちを作ってあげることを重要に考えて欲しい」と言われたと語った。

闘病を機に母親に変化が…

この時、これまで夏目さんの芸能活動を一切認めず、出演作も見てこなかった母親の気持ちも変化した。

ある夜、一雄さんが帰宅すると、録画した夏目さんの出演作品を母親が食い入るように見ていたという。それから、母親と夏目さんは病室で一緒に過去の出演作を見るようになった。

一雄さんは母親の心境について「雅子が一番大好きな世界はエンターテインメントの世界。お袋の中で、『この子を生かしてあげるためには、一番求めている世界を認めてあげなければ助けられなくなっちゃう』と思い、今度は誰よりも夏目雅子のファンになろうとしたのではないか」と明かした。

当時は「不治の病」とさえ呼ばれていた白血病。高い効果が期待できる新薬も出始めていたが
髪の毛が抜けてしまうという副作用もあり、母親は女優としての夏目さんを案じ、新薬での治療に反対した。だが、従来の薬では思うような効果が得られず、約半年後、再び新薬での治療を検討することに。

この時、夏目さんに副作用による脱毛について伝えると「私、日本で一番、坊主頭が似合う女優って言われているんだよ。そんなの全然、気にならないよ」と話したという。

この新薬での治療が効き、一度は白血病の症状も消えたことで家族も安堵したが、抗がん剤治療で免疫力が低下していた夏目さんはその影響で肺炎を起こし、亡くなってしまう。

結婚からわずか1年…27歳という短い生涯を終えた。

最期の時が迫る中、夏目さんは母親とあるモノを作っていたという。

母親と一緒に刺繍で作った2輪のひまわり。右のひまわりを母親が、左のひまわりを夏目さんが互いの思いを込めて作ったのだ。

実は病院では完成できなかったため、夏目さんが亡くなった後、母親が最後に残った茎の部分を仕上げてこの刺繍を完成させたという。

夏目さんが亡くなって8年経った1993年、母親は兄・一雄さんと「夏目雅子 ひまわり基金」を設立。ドナー登録呼びかけの他に、治療などによる副作用で脱毛に悩む方々の社会復帰を後押しするため、無償で“かつら”を貸し出すなどの活動をしている。

そして、2008年には母親も他界し、現在、その遺志は夏目さんの兄の一雄さんが受け継いでいる。

親友で女優の中井貴惠さんは、「27歳の一番キレイな時に逝ってしまったので、彼女がそれからどんな人生を歩んで、60を過ぎる年まで生きてきたのかな、どんなおばあさんになっていたのかなって。それは全く分かりませんけど、彼女が生きていたら、今日までずっといい友達でいられた自信はあります」と、親友を偲び、静かに語った。

夏目さんが亡くなって34年…彼女は今でも人々の記憶に残り、愛されている。

(「直撃!シンソウ坂上」毎週木曜 夜9:00~9:54)