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「ウチは有給やってないから」…消化できなかった無念を供養“有給浄化”って何? 担当者に聞いてみた

カテゴリ:国内

  • 今までに取り損ねた有給を“供養”するイベント「有給浄化」が話題
  • 募集した有給にまつわるエピソードを巨大灯籠に当日映写
  • 担当者「使えない人が無念を発表するのも『働き方改革』になり得る」

日本では、取得率の低さが以前から指摘されてきた有給休暇。

そして今年(2019年)4月からは、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、使用者が時季を定めて年5日分の有給を取得させることが義務化された。
(参考記事:4月から“有給休暇の義務化”をご存知?会社がこんなことをしたら要注意!

しかし、いざ有給を消化したいと思っても、目の前の抱えている仕事や「周りに迷惑がかかるんじゃないか」などという考えが有給取得のブレーキとなってしまう人もまだまだいるのではないだろうか。

今、まさにこのような人向けのイベントが、ネット上で話題となっている。

まずは、こちらの画像を見て欲しい。

「有給を供養する灯籠ナイト

という謳い文句とともに、画像では都会の夜空に美しい星空が広がる中、「ぎっくり腰だけど這って出社した」「わたし以外の家族旅行」「会社と友達どっちが大事か選ばされた」などという、仕事にちなんだな生々しいエピソードを映した灯籠が輝いている。

これは、株式会社人間が11月22日と11月23日(勤労感謝の日)に開催するイベント「有給浄化」のビジュアルだ

特設サイトを通じて募集した「有給の消化ができなくて悔やまれた体験」に戒名を付けて、日付や応募者の名前とともに約300基の灯籠に当日印字するほか、会場の中心部には高さ2mを超えるという「有給大灯籠」を置き、集まったエピソード内容を次々投影していく予定だという。

また会場には、かつてサラリーマンとしてブラック企業に10年間勤めた過去を持つ僧侶、浄土宗西念寺の佐山拓郎上人が登場。自身も有給を使えなかった当事者だったことから、人ごとならぬ思いを込めた供養をもって応募者の有給を浄化に導いてくれるのだそう。

「有給大灯籠」を前にした供養のイメージ

これだけ聞くと、ちょっとした冗談のようだが、株式会社人間は「灯籠のあかりとともに有給の素晴らしさを照らし出し、みんなで堂々と会社を休めるムードをつくろうではありませんか。そうすればきっと、あなたが使えなかったあの有給も、浮かばれてくれることでしょう」と、特設サイト上でイベント目的を説明している。

この会社は「面白くて 変なことを 考えている」をモットーに、ジャンルの枠にとらわれないアイデアをつくるウェブコンテンツ制作会社。2018年には参加型演劇イベント「ブラック企業体験イベント」を開催するなど、独自の切り口で働き方改革をめぐる問題に迫っている。

「働き方改革」に大きな関心を持っているようだが、なぜ「有給浄化」なのだろうか? また、このイベントで有給取得をめぐる状況をどうしたいと考えているのだろうか?

同社の広報担当者にいろいろ話を聞いた。

面白い“働き方改革”ができないかと企画

――「有給浄化」は、誰が、何をきっかけに考えついたもの?

日本では、各社が「働き方改革」を推進していますが、その内容はつまらないものが多く、「面白くて 変なことを 考えている」をモットーに掲げる我々としては、何か株式会社人間らしい「働き方改革」ができないかと、今回の企画以前に考えておりました。

そんな経緯から、2018年の11月23日に「ブラック企業体験イベント」を開催しました。参加者には、新入社員として架空のブラック企業に入社し、事前に公開されたウェブサイトにて募った「実際のブラック企業エピソード」をリアルに体験していただくといったものです。

ブラック企業体験イベント「BLACK HOLIDAY」メインビジュアル

今回の「有給浄化」は、株式会社人間の「変な働き方改革」の第二弾にあたり、弊社全メンバーで企画いたしました。

――今年4月から有給休暇が義務化されたが、印象として有給をめぐる状況にあまり変化はみられない?

本イベントサイトの公開前に、有給取得に関する悲しいエピソードをクローズドで集めたところ、60を超えるお声がすぐに集まりました。有給に関して嫌な経験をしたことがあるというのは、あまり珍しいことではないと感じます。

実際に、「仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議」が発表した「仕事と生活の調和レポート2018」の中で、2017年の「有給にためらいを感じる人」の割合は、「ためらいを感じる」が22.6%、「ややためらいを感じる」が41.1%と、合計で60%以上に達しています。

「仕事と生活の調和レポート2018」 年次有給休暇に対するためらいに関する調査 出典:内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室

その原因の1位として挙げられたのが、73.3%に達した「みんなに迷惑がかかると感じるから」というものです。

これらの結果から、我々は有給休暇の義務化により、取得率自体は今後改善されていくかもしれないが、皆さんまだまだ「取りにくい」という空気を持って働かれているのではないか? と考えています。

「仕事と生活の調和レポート2018」 年次有給休暇に対するためらいを感じる理由の調査 出典:内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室

――有給を"浄化"すると、どんないいことがありそう?

「忘れてはいけないのは、あの時に有給を使わず(使えず)、働き続けたことで生まれた、現在の自分もいることです。

『現在の自分を作ってくれた一部でもある、失くしてしまった有給』を、心からの 感謝を込めて供養することで仏の世界へ送り出し、その後悔を清める。そうすれば、 今後また生まれてくる有給を、有意義に活かすことができるかもしれません

これは、今回供養していただく佐山上人にいただいた言葉ですが、辛い思い出をそのままにするのではなく、「有給浄化」を通して少しでも前向きな気持ちになっていただければと思います。

「ウチは有給やってない」強烈なエピソードが集まる

――寄せられたエピソードの中で、特にインパクトのあったものは?

・「『ウチは有給やってないから』と言われた

部長(会社のNo.2、実質的な会社の運営トップ)から、「ウチの会社は、有給やってないから!」と宣言され、有給の存在自体を認めず、法的根拠を説明しても逆ギレされて社員全員の前で罵詈雑言の嵐が巻き起こる。(40代 男性)

・「彼氏にフラれ、合コンにも誘われなくなる

合コンに誘われたのに、断り続けて、結局誘われなくなる。さらには、彼氏との旅行を、仕事のトラブルでドタキャンして振られる。(30代 女性)

・「真冬に海水浴

夏休み期間の有給休暇も取得できずにいたところ、とっくに時期を過ぎた12月頃、当時5歳の娘から、「パパ、海水浴いつ行くの?」と言われた。
娘よ、ごめんなさい(涙)。(40代 男性)

・「有給知らずに十数年

十数年働いてその会社を去った後に、有給の概念を知りました。(30代 女性)

事前募集で約60件、合計で110件の応募

――エピソードを応募している人の男女比、職業、年齢はどんな傾向?

男女比5対5くらいですが、若干男性の方が多く、職業も多岐にわたりますが、保育士、看護師、エンジニアが多いです。

年代は、20代が30%、30代が30%、40代と50代が30%で、その他が10%です。

――一般社員だけでなく、課長部長など管理職クラスの応募も目立つ?

そこは今回統計をとっておりません。

――現時点のエピソード応募状況は? どのくらいの応募数?

事前募集で約60件、現在までに約50件、合わせて110件ほど
です。

使えない人が無念を発表するのも「働き方改革」になり得る

――僧侶に有給を供養してもらえるそうだが、一般人も自由に参加できるの?

だれでも無料でご自由にご参加いただけます。

――その際のドレスコードはある?

ドレスコードは予定しておりません。

――「有給浄化」に対して、周囲の反応は?

SNS上では、「有給消化できる社会であるべきだけど、こういう発想は日本人的で面白い!!」「冗談だと思ってたけど、本当にあるイベントだった。メール送った! 当日有給浄化に行くぞ!」というご意見をいただいております。

一方で、「成仏してもお金は還ってこない」といったご意見もございます。

――今回の企画で、個人、そして働き方がどう変わることを期待する?

本イベントを通して、有給という制度への意識向上や、関心喚起へつなげることを目的としています。

当日は、事前アンケートにより集めた「有給を使えてよかったエピソード」を基に、5日分の有給の使い方を提案してくれるおみくじ「やすみくじ」を会場にお越しの方にお配りします。

すこしでも有給取得することに対して、明るい気持ちをもっていただければと思います。

――最後に、世の中の働く人全員に何か一言を。

有給の問題は、1人で「使えない苦しさ」を抱え込んだまま泣き寝入りしていることにあるので、「多くの有給が失われている」という事実がたくさんの灯籠で伝われば、もっとオープンに有給について議論できる世の中になるのではと考えています。

使えない人がその無念を発表することも、使える人が有給の大切さを発信することも、広義の「働き方改革」になり得るはずです。

有給を取得したくてもできなかった人の思いを取り上げ、見える化することで「働き方改革」につなげていくという意図が今回の企画に込められていたようだ。

有給は心身をリフレッシュさせるのには重要。しっかり取れている人も、思ったように取れていない人も、「有給浄化」することでその大切さを今一度感じてみてはいかがだろうか。

画像提供:株式会社人間

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