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自民党「不戦敗でも不戦勝」の怪&「N国」党首も参戦の謎 埼玉補選に隠された思惑 

カテゴリ:国内

  • 自民党が候補立てず“無風”の補欠選挙が国政に影響か
  • 前知事「完全無所属」の背景で「憲法改正」めぐり交錯する与野党の思惑
  • なぜ?「N国」党首が参院の議席を投げ打って出馬宣言

10月27日投開票の埼玉の参院補欠選挙

7月に行われた参院選後初の国政選挙となる、参院埼玉選挙区の補欠選挙が、10月10日告示、27日投開票の日程で行われる。これは、8月に行われた埼玉県知事選で当選した前参院議員の大野元裕氏が、立候補にあたって議員辞職したことを受けてのものだ。

野党が推した大野氏と、スポーツライターで与党が推した青島健太氏による与野党一騎打ちの大接戦となった知事選から一転、今回は自民党の候補者擁立見送りという異例の判断により、無風の選挙ともささやかれていた。しかし裏側では、無所属での出馬を表明した上田清司前知事(71)を巡って与野党の「思惑」が激しく交錯している。さらに8日には「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が、参院議員の議席を投げ打って出馬を表明するという波乱もおきた。これらにより、この選挙は今後の国政にも大きな影響を与える可能性があるものとなっている。

埼玉県のHPより

無理をすれば3年後に与党同士で“潰し合い”

上田氏は、かつて旧民主党の衆院議員を務め、その後4期16年に渡り埼玉県知事を務めてきたが、8月の知事選には出馬せず、9月20日になって、大野氏の欠員を補う参院埼玉補選に無所属で出馬することを正式に表明した。

これを受け、過去の知事選で上田氏を事実上支援してきた野党勢力である立憲民主・国民民主の両党は、補選での上田氏支援に前向きな姿勢を示した。

こうした中、9月24日に自民党の埼玉県連は「立候補者がいない」として候補者擁立を見送る方針を決定。与党の「不戦敗」という異例の構図となった。

この県連の判断について二階幹事長は会見で「真意は十分ではないが、我々の予想するところではしっかり上田さんを応援していこうということで内心思っているから、候補者を立てないで円満な選挙を導こうとしているのではないか」と指摘した。

自民党内にはかねてより補選の候補者擁立への慎重論があった。仮に自民党が今回の補選に候補者を擁立して勝利したとしても、元々は野党系の議席であるため、3年後の参院選では、埼玉選挙区は改選4のところ、自民党の候補者が、現職の関口参院会長を加えた2人となってしまうため、分裂選挙により苦戦することへの懸念だ。

実際にある議員は、「関口参院会長をはじめとする自公現職の埼玉選出議員がいるため、3年後の改選時にモメないために今回の補選で無理をして候補者を出すことはない」と解説している。

上田清司前埼玉県知事(71)

「完全無所属」の背景で交錯する思惑とは

一方で、ある与党議員は今回の自民党の擁立断念の背景について、別の思惑を語る。

「上田前知事が『完全無所属で憲法改正に向けた仕事をしたい』と、ある自民幹部に伝えたんだよ。つまり、自民党が目指す憲法改正に向けて意欲を示し、自民の擁立断念を促したようだ

また、別の上田氏に近い人物は、上田氏が「『参院議員になって憲法改正をやりたい』と周囲に漏らしていた」と語ったと言う。秋の臨時国会で自民党が最重要とする“憲法改正”に上田氏に協力してもらう一方で、補選では上田氏を自民党が“支援”するという「ウィンウィン」の合意があるのでは、との分析だ。

実際、上田氏は出馬会見で“完全無所属”の立場を強調し、憲法改正について理解を示す発言をしている。参議院では憲法改正に前向きとされる「改憲勢力」が改憲の発議に必要な3分の2に足りていないため、上田氏は自民党にとっての貴重な“援軍”になり得る可能性があるのだ。ある自民党幹部は「改憲勢力が増えると言うことで私は「不戦勝」だと思っている」と発言している。

また、知事時代に上田氏と対立を重ねてきた自民党埼玉県連側からは「二階氏はかつて上田氏と一緒に新進党に所属していたので、距離が近い」との指摘が出るなど、今回の補選の一連の経緯について二階氏の影響力があったのではとの見方もある。

こうした自民党と上田氏の思惑が指摘されているものの、野党側は上田氏を支援する姿勢だ。立憲民主党の埼玉県連は上田氏の自主支援を決めていて、埼玉が地元の枝野代表は「必ず勝っていただきたい」と強調している。国民民主党も同じく自主支援する方針で、関係者は「党派色を隠して支援する」と述べている。支援により参院選後も上田氏を野党側に引き留めたい考えだ。

無風の選挙に「N国」党首がまさかの参戦

「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首

一方、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は10月8日、参議院議員を失職する形で、この参院埼玉補選に立候補する考えを表明した。7月の参院選で当選したばかりで国会での活動をほとんどしないうちに失職を選択するのは、謎の行動といえる。

それでも出馬を決意した理由について立花氏は、自らが失職しても比例代表の繰り上げ当選によって「N国」の議席は守られることを指摘し、「与党が補選に候補者を立てないことで、勝てる可能性が出てきた」ため、党として候補者の擁立が必要だと判断したという。その上で、「このハゲーッ!」などの秘書に関する暴言が問題となった豊田真由子元衆院議員や、先の知事選で落選した青島健太氏らに出馬を打診したものの難色を示された結果、自身の出馬を決断としたと説明した。

異例の展開を見せている補欠選挙ではあるが、憲法改正などをめぐる秋の政局に、どのような影響を与えるか注目される。

フジテレビ政治部 与党担当 森本涼