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見ているだけで心が痛い…子ども視点で児童虐待を“疑似体験”する動画に込めた思いを聞いた

カテゴリ:国内

  • 子ども視点で児童虐待を疑似体験できるVR動画が話題
  • 動画は2018年に横浜市で起きた児童虐待事件を再現
  • 制作者「児童虐待の撲滅に向けて一助を担いたい」

児童虐待を疑似体験できるVR動画が話題

2018年3月、東京・目黒区で、当時5歳だった船戸結愛ちゃんに十分な食事を与えず死亡させたとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われている父親の船戸雄大被告の裁判員裁判が始まり、連日のように報じられている。
(参考記事:父vs母法廷で対決」船戸結愛ちゃん虐待死裁判…優里被告が雄大被告に決別告げる

また、この事件が起きた後も、児童虐待事件は後を絶たないのが現状だ。

こうした中、「子どもの視点で児童虐待を疑似体験できるVR動画」のパイロット版がYouTubeに公開され、そのリアルな描写にネット上では「怖かった」「見てたら悲しくなってきた」「胸糞悪い」などの感想が寄せられている。

この動画を制作したのは、動画や映像制作を手掛けるWESTE & Co.(ウェストアンドカンパニー)。

2018年に横浜市で起きた児童虐待事件を再現した動画で、ヘッドマウントディスプレイを着用した状態でYouTubeアプリを使用すると、子どもの視点で児童虐待を疑似体験できる仕組みとなっている。

両親が虐待を行う3つの場面で構成

約7分間に及ぶ動画は、幼稚園に通う子どもの視点で進み、両親が虐待を行う3つの場面で描かれている。
ショッキングな内容も含まれるため苦手な人は注意して欲しい。

1つ目は「室内での食事の場面」。

「俺の飯はどこだ。早く持って来いって言ってんの」と怒鳴る父親に対し、母親は「とりあえず幼稚園に行かなきゃいけないから、食べさせて」と言いながら、出来合いの弁当と箸、ペットボトルの水を、子どもの前に置く。

そして、「いいから早く食べなさいよ」などと言い放ち、子どもが泣き始めると「なんで泣くの? あたしが悪いみたいじゃないのよ」と大声を出し、「外に立ってなさいよ」と叫ぶ母親。

それを見た父親はいら立ちを隠さず、子どもに「お前、もう一回、外出ろ」と怒鳴り声をあげる。そして母親を別室に連れて行き、「マジ殺すぞ」という父親の声と母親の絶叫だけが部屋に響き渡り、この場面は終わる。

ベランダでは父親が火の付いたタバコを…

2つ目の場面は「ベランダ」。

この場面は、ベランダに出された子どものもとに、タバコを吸いに来た父親が現れ、「お前さぁ、母ちゃんのこと好き? 嫌いだろ? 俺がそのうち殺してやっから」と、落ち着いた口調で話しかけるところから始まる。

ところが、その直後、「2人だけの約束な、内緒だぞ。手貸して」と、笑顔を浮かべたまま、子どもに複数回、火が付いたタバコを押し付けるのだ。

そして、「そういう目で俺を見んなよ」「母ちゃんと一緒にマジ殺すぞ」と脅したうえで、こぶしを振り下ろす場面が描かれている。

「きれいになろうね」と洗剤を子どもに飲ませる母親

3つ目の場面は、再び「室内」。

「前みたいに仲良くやろう」と父親が母親に声を掛け、母親が「前はよかったんだもんね。なんであいつがいるの」と応じるところから始まる。

そして、「これで、あいつ、きれいにしようよ」とつぶやき、洗剤のボトルを持ち出す母親。

父親と一緒に「いいにおいだよ、おいしいよ」「きれいになろうね」「きれいになるよ」と優しい声を掛けながら、子どもに洗剤を飲ませる場面で画面は暗転。ここで動画は終わる。

最後まで見るだけでも辛い気持ちになってしまうこの動画。いったい、どのような思いから作ろうと思ったのか?
「WESTE & Co.」の代表取締役・西江祐哉さんに“動画に込めた思い”を聞いた。

「児童虐待の撲滅に向けて一助を担いたい」

――どのような思いがあって、この動画を制作した?

「WESTE & Co.」は今年1月に設立したのですが、社会活動に積極的に取り組みたいという思いから、当社を設立した経緯があります。

我々が持つ、映像リソース(資産・資源)を活用しつつ、今後、可能性のあるVRで、日本の社会問題に取り組んでいきたいと考えていました。
そうした中、近年、痛ましい事件が後を絶たない児童虐待の撲滅に向けて、一助を担いたいと思い、活動を始めました。

――動画の冒頭には「2018年に横浜市で起きた虐待事件を再現したもの」と表示される。この事件の詳細は?

こちらは、私、個人の調査で知り得た情報となります。
申し訳ございませんが、プライバシーの問題があるので、具体的なお話はできません。

動画は作りモノっぽくならないよう「間」を意識

――動画を制作するうえで、こだわった点は?

演者さんの特徴を活かすことと、作りモノっぽくならないよう「間」を意識しました。

今回の動画は、なにより演者さんの技量のおかげで「リアルな恐怖感」が演出できていると思っています。


――動画の中で、とくに印象に残っている場面は?

1つ目の場面の「父親が母親や子どもに向かって悪態をついているところ」です。
「言葉の暴力」がリアルに再現されていますし、この場面が特に痛みを感じるからです。

「児童虐待への世間の意識を高め、早期発見を促すこと」が目的

――この動画を誰に見てもらい、どのように活用してもらいたいと考えている?

この動画の目的は「児童虐待に対する世間の意識を高め、惨事の早期発見を促すこと」です。

世間の方々の様々な意見を取り得つつ、改良を加えながら、より多くの方に視聴いただきたいと考えております。

また、VRの普及率はまだ全体の3%と言われていますので、恐らく本コンテンツをVRとして視聴いただいた人はそれほど多くないことが予想されます。
それでもリリース後、多くの方のコメントを拝見することができました。

意見は賛否ありますが、こうして悲惨な問題を直視し、個人の意見があがることにも意味はあると思っていますので、これを受けて、今後の活動に役立てていければと考えています。


後を絶たない児童虐待事件。撲滅するためには様々な課題があげられているが、早期発見は悲劇を防ぐために重要だ。
完成版の予定は今のところないようだが、こういった一つ一つの取り組みで児童虐待に対する世間の意識がさらに高まることを願いたい。

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