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悪ふざけに“悪意”が混ざり始めている…「バイトテロ」をやってしまう心理に変化

カテゴリ:暮らし

  • 数年前の「バカッター騒動」はお調子者による悪ふざけ
  • お店への腹いせで「バイトテロ」を利用する人も!?
  • 防止策は一時的な措置ではなく“永続的な環境改善”

2019年頭から、立て続けに報じられている「バイトテロ」。飲食店や小売店の従業員が、勤務先の商品や什器を用いて悪ふざけをする動画をネット上にアップし、炎上につながる現象のことだ。

店舗や企業が多大な損害を被ることは、報道を見ていても明らかだが、なぜバイトテロは起きてしまうのか。悪ふざけ動画を撮影する人は、どのような心理状態にあるのだろうか。

アルバイト従業員への法的処置に発展するケースも

まずは、今年に入って話題になったバイトテロの事例を、いくつか振り返ってみよう。

「無添 くら寿司」従業員が魚をゴミ箱に…

今年2月、大手回転ずしチェーン「無添くら寿司」のアルバイト従業員2人が、ゴミ箱に捨てた魚を再度まな板で調理する動画をアップ。一気に拡散され、炎上した。

この事案を受け、くら寿司は従業員2人を解雇。さらに、刑事、民事での法的処置の準備に入ったことを発表した。また、国内外の全店舗、全従業員約3万3000人を対象に、携帯電話・スマホ・SNSに関する勉強会を実施。

コンビニエンスストア「ファミリーマート」の店員は、商品を舐めてからレジ袋に入れる悪ふざけ動画をSNSに投稿して炎上。ファミリーマートは各店舗への指導・教育の継続を発表し、問題となった店舗のオーナーは、関与した従業員を解雇処分とした。

定食チェーン「大戸屋ごはん処」のアルバイト従業員は、おぼんを股間に当てて踊る動画を投稿し、炎上を招いた。これを受けて、大戸屋ホールディングスは約350の国内全店舗を一斉休業し、再発防止に向けた研修や教育を実施した。

「バーミヤン」調理中の炎で、たばこに火を

大手外食チェーン「バーミヤン」の炎上は、珍しいケース。2018年3月に投稿された悪ふざけ動画が、2019年2月に掘り起こされたのだ。ちなみに内容は、調理中の炎でタバコに火をつけ、そのまま喫煙するというもの。

「バーミヤン」を運営するすかいらーくホールディングスは、公式ホームページに謝罪文を掲載。その際に、この動画はオーダーストップ後に撮影されたもので、調理された料理は客に提供されていないことを説明した。

悪ふざけに明確な「悪意」が混ざり始めている!?

なぜ、世間に「不適切だ」と批判されかねない動画を撮り、SNSに上げてしまうのだろうか。さまざまな視点から迷惑行為について考える「迷惑学」を展開する金城学院大学教授・北折充隆さんに、バイトテロを起こしてしまう心理について聞いた。

「6、7年前、コンビニのアイスクリームのケースに入るなどの写真が問題となったバカッター騒動と現在のバイトテロでは、質的な変化が起きているように感じます」(北折さん・以下同)

北折さんの話す「質的な変化」とは、SNSへの投稿に対する感覚の変化ともいえるようだ。

「以前の不適切動画は、純粋なお調子者による行為でした。世の中にどれだけ多くの人がいるか、どれだけのスピードで拡散するかを想定していないので、身内だけに見せるつもりが拡散され、炎上してしまった。はっきり言ってしまうと、何も考えていないんです」

ちなみに、心理学には「六次の隔たり」といって、6人を媒介すると世界中の全員とつながるという仮説がある。ネット上でも、6人が順に拡散していけば、全世界に知れ渡る可能性があるというわけだ。

「ただし、最近はお店や会社を困らせようと、悪意を持って動画を投稿している人達が出てきているように感じます。不適切動画が企業に損害を与えることは明らかなので、働く環境に不満があれば、腹いせに投稿してやろうという考えに至る可能性はあります」

そして、バイトテロがこれだけ話題になっている背景には、SNSの普及があるという。いち個人の投稿が、社会に大きな影響を与えられる時代になってきているのだ。

「広く発信できるメディアがすぐそこにあるので、軽いノリで使えてしまう。その結果、きっといままでも起きていたであろう不適切な行為が、顕在化しているように思いますね。よくも悪くも、社会が可視化されてきています」

バイトテロ抑止のカギは「職場環境」を整えること

企業にとって、死活問題になりかねないバイトテロ。抑制する手立てはあるのだろうか。

「まずは、従業員に世間の広さを自覚させること。SNSで日本中の人に知られることは、顔見知りに知られることとは次元が違います。1億2000万人以上の日本人全員に見られる意識を持ったら、うかつな投稿はできないですよね」

北折さんは、「企業やお店が、誠実にビジネスを進めることも大事」と話す。

「過酷な環境かつ安い賃金で働かせていれば、従業員もうっぷんが溜まり、辞める前にお店を困らせてやろうと思いかねません。でも、働きやすい環境で高月給だったら、クビになりたくないからちゃんと働こうと思いますよね。企業側が誠実な経営を心掛ければ、『不適切なことは許されない』という空気も広がると思いますよ」

クリーンな職場を維持することができれば、SNSは力強い味方にもなるようだ。

「職場環境がいいことを発信していけば、利用客も『信頼できるお店だ』と評価してくれるでしょう。SNSの影響力は大きいので、プラスの方向で活用できると理想的です」

北折さんによると、「今後、悪意を持って投稿する人が増える可能性は高い」とのこと。抑止するためには、従業員が気持ちよく働ける環境の整備に尽きるといえそうだ。経営者や管理職の人達はSNSの影響力を認識し、本格的に“働き方改革”に乗り出すタイミングなのかもしれない。

金城学院大学教授・北折充隆さん

北折充隆
金城学院大学人間科学部多元心理学科教授。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程後期課程修了後、金城学院大学心理学専攻専任講師を経て現職。著書に『ルールを守る心-逸脱と迷惑の社会心理学』『迷惑行為はなぜなくならないのか?「迷惑学」から見た日本社会』など。
http://www.asahi-net.or.jp/~vu5m-ktor/index.htm

取材・文=有竹亮介(verb)

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