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低投票率は本当に嘆くべき?「変化を求めない日本」はいつまで続く

政治部デスクの参院選考察③

カテゴリ:国内

  • 参院選が「国民から見て遠い選挙」である理由
  • 有権者の投票行動は「期待」から「不満の発露」に変化
  • 低投票率は本当に悪いのか…変化を求めない世論を反映?

今回も約2人に1人だった。正確に言えば、今回は2人に1人以下だった。21日に投開票された参議院選挙の投票率の話だ。今回は過去2番目の低さになる48.8%。
いまや常態化した「2人に1人」に驚きや落胆の空気はあまりなく、むしろ諦観すら漂う政治離れの「なぜ」と今後の日本を探る。

国民から遠い参院選

選挙前から50%以下の投票率を予想していた自民党の関係者は、こんな言葉を述べていた。

参議院選挙は国民から最も遠い選挙だからしょうがない

確かにそうかもしれない。衆議院選挙は政権選択の選挙だ。総理大臣をはじめ、主要閣僚もほぼ衆院議員だけに、メディアでお馴染みの「顔」が候補者として頻繁に登場する。選挙区の数が多い分、1選挙区の範囲は狭くなり、有権者が候補者と接する機会も多い。そして地方自治体の選挙も、同様に範囲が狭い上に、身近な政策課題を巡る議論が活発に行われるのが常だ。

一方、参議院の選挙区は各都道府県単位だ。まして島根と鳥取、高知と徳島については、「1票の格差」を埋めるために2つの県がひとつにまとめられた。選挙区の範囲が広ければ、有権者が候補者本人を直接見たり、演説を聞いたり、握手をすることは稀だろう。直接見るものと言えばせいぜい街に張られたポスターくらいではないか。

さらに参院は候補者も比較的地味な人が多い。参院議員が政治の表舞台で華々しく活躍する場面は衆院に比べれば少ないのが現実だ。「参院選の場合は、投票所に行ってから誰にするかを決める有権者が多い」(同自民党関係者)という指摘もうなずける。

政治を見る目の変化

もうひとつのポイントは時代の変化だ。前述の自民党関係者は有権者の政治を見る目が昔と今では変わったと指摘する。

「昭和の時代は皆が上を見ていた。つまり投票は日本を成長させる『期待』だった。それが平成になって政治とカネの問題が続出し、投票は『不満』の発露となった」

一時期を除き、長く政権の座にある自民党は昭和時代、支持率が約60%だったと言われている。それが平成に入って約40%に下がり、復調の兆しは見えていない。つまり昭和に2度行われた衆参ダブル選挙は、5割以上の支持がある自民党にとって、有権者の関心を喚起し投票率を上げることにつながり、極めて有利に働いたわけだ。自民党への期待が勝利に繋がったと言っていいだろう 平成に入って以降、つまり自民党の支持率が40%に落ち込んで以降、今に至るまでダブル選挙は行われていない。

1986年の衆参ダブル選挙

では令和の時代はどうか。「不満はありながらも期待はしていない。そもそも政治に期待するものがないからだ」(同自民党関係者)という。確かに今回の参院選では年金問題子育て支援といった、日々の暮らしや将来不安の解消に関する論戦が多く、国の在り方をこうするといった期待に基づいた議論は極めて低調だった。

Live News it!7月17日放送分より
Live News days7月4日放送分より

安倍首相が意欲を示す憲法改正も、有権者が選挙で重視する政策としては社会保障、景気・経済政策、少子化対策などを大きく下回り、わずか5%(7月のFNN世論調査)だった。

7月のFNN世論調査より

国民が「上を見ていた」のが昭和、「足元を見るようになった」のが平成以降と言えるなら、政治への期待やその役割が変わっていくのは当然だ。
加えて衆議院で小選挙区制度が導入されたことにより、衆院議員はかつてより狭い選挙区の中で活動することが多くなった。

「国会議員は国のために働くのか、それとも地元のために働くのか」という、冗談のようで笑えない話が出てくるのは、有権者が国会議員に求めるもの、また国会議員が有権者に寄与するものが確実に変化していることの証左ではないのか。

変わらない日本

そんな日本の現状について、中国で活躍する旧知の外交官は「日本は本当に変わらない国だ」とこぼす。中国の変化のスピードと比較した話だが「(日本は)良い意味では慣れた生活環境に安心する。悪い意味では世界に取り残されないか不安になる」という。

前述の関係者も歩調を合わせたように「半分の国民が現状に満足し、投票に行かないというのはある意味で幸せな国だということだ」と語る。

日々の生活に不満はありながら、国民は総じて現状を受け入れている。率直に言えば大きな変化を求めていないということだろう。選挙に置き換えると、投票率が100%近くになれば政治参加意識の高まりと言える一方、切迫した危機感の表れとみなすことも出来る。投票率は高ければ高いほどいいのか、また適正な投票率は何%なのか。その答えは案外難しいのかもしれない。

激動する世界の中で

いまや世界に目を向ければ、各国のリーダーが強い指導力を発揮し、まさに「激動」ともいえる展開と変化が相次いでいる。その大きな変化のひとつである「自国優先主義」が広がる中、良くも悪くも「変わらない日本」の今後を保障するものは、以前より脆弱になっていると言わざるを得ない。

歴史を振り返れば、日本を大きく変えたのは外圧だった。ひとつは黒船来航に端を発する明治維新、もうひとつはアメリカなどの占領下に置かれた敗戦である。結果的に日本はこうした外圧をきっかけにして、今の発展と繁栄につなげてきた。

実は明治維新から第二次大戦まで約75年。敗戦から数えると来年で75年になる。アメリカの大統領が北朝鮮を攻撃するどころか、自ら現地に足を踏み入れてトップ会談を行い、しかもその発信は大統領自身のSNSという“予測不能”ともいえる時代、低投票率が象徴する日本の行く末を「一寸先は闇」と考えてしまうのは早計だろうか。

(フジテレビ政治部デスク 山崎文博)