災害時インフラ最新情報

東京五輪期間中に全社一斉「テレワーク」を実施…先進的なレノボにあえて“会社に行く意味”を聞いた

カテゴリ:国内

  • レノボ・ジャパンが東京五輪開催時にテレワーク実施発表…19日間“出勤しなくてOK”
  • レノボは2015年から「無期限テレワーク制度」導入など先進的な取り組み
  • 担当者「意外にもコミュニケーションミスは少ない」

夏休みの半分近くオフィスに出社せず…

国を挙げて「働き方改革」が叫ばれる昨今、オフィスを離れて自由に仕事をする“テレワーク”なる言葉を一度は聞いたことがあるだろう。
カフェなどでサッとパソコンを開き、キーボードを叩くビジネスパーソンの姿を見て、「自分もあんなふうに仕事したい」と内心感じた人もいるのではないか。

そんなテレワークについて、PCメーカーのレノボ・ジャパン(東京都千代田区)が26日に発表した、「2020年スポーツ応援ホリデー&テレワーク」の内容が注目を集めている。

これは、2020年夏の東京オリンピック開催時期(2020年7月24日~8月9日)に合わせたもので、2020年7月23日から8月10日までの間に「スポーツ応援休暇」を実施し、2回の4連休、1回の3連休を用意。残る8営業日について「全社一斉テレワーク」を実施するというものだ。

この結果、レノボ・ジャパン、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、モトローラ・モビリティ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータのレノボグループ4社に勤務する約2000人が19日間自社オフィスに出勤しなくていいという。レノボは、猛暑期の通勤負担を軽減し、約40日の夏休みのうち半分以上の日数を家庭で過ごせるとアピールしている。

2016年「全社一斉テレワークデー」の社内

2020年の東京五輪の開催期間中は、混雑率200%の電車が1.5倍になるという予測もあり、総務省や組織委員会などが、企業に対して、時差通勤や在宅勤務などのテレワークの推進を呼びかけている中で、 都内の混雑緩和にも貢献するとしている。

また、レノボはすでに2015年より従業員のテレワーク取得に条件を設けない「無制限テレワーク制度」を、2016年より毎年原則として全員がオフィスに出勤しない「全社一斉テレワークデー」を実施していて、今年中には時期未定であるものの、「全社一斉テレワークウイーク」も計画しているとのこと。

五輪対策としても、働き方改革としても、レノボが早々に発表した大々的なテレワークの実施については、各企業も参考にしたいところだと思うが、これまで先進的に取り組んでいる中でどのような課題があったのだろうか。 テレワークで生産性が低下するということはないのだろうか。
レノボ・ジャパンの広報担当者に話を聞いてみた。

導入直後は、上司が出勤している“後ろめたさ”があった

ーー今回、東京五輪開催時に「全社一斉テレワーク」を実施する理由とは?

総務省などが、五輪期間中の交通機関の混雑回避のため、期間中のテレワークを推奨しています。弊社もこの趣旨に賛同し、テレワーク推進のムーブメント作りに貢献したいという考えによるものです。

ーーレノボが考える、テレワークのメリットとデメリットを聞かせて?

メリットですが、通勤時間が節約でき、家族との時間や健康的な生活などにその分を振り分けられることです。特に子育て世代や、介護などに携わる社員にはメリットの大きい制度です。

次にデメリットとしては、顔を見ない相手とのコミュニケーションが増えるため、相手とのコミュニケーションミスが生じないよう一層の配慮が必要になります。ちょっとした立ち話のようなコミュニケーションについては、弊社ではチャットツールを導入することで補うようにしています。

ーーテレワーク導入後から現在まで、社員の声にはどんなものがある?

導入後、社員に定期的なアンケートを行ってきています。

昨年のアンケートでは、「生産性が上がった」と回答した者が42%、「ワーク・ライフ・バランスが向上した」と回答した者が76%に至りました。また、導入時には「なかなか自由にテレワークを取れない」といった声が多かったものが、56%の者が今では「取りたい時に取れている」と答えています。

一方、18%の者が「取りたくない」「取れない」と回答しています。その理由の第一は、職場の方が家よりも働くには環境がよいということと、上司がテレワークを取らないのでなかなか自分も取れないということです。

ーーテレワーク導入直後、予期しなかった問題や課題は起きた?

制度導入直後は、上司や同僚が出勤していることにうしろめたさを感じてテレワークをためらう社員が多く見受けられました。そこで幹部社員が率先してテレワークをしたり、全社テレワークデーを導入するなどして「罪の意識」のようなものを解消するよう努力しました。

今では、会議で社長に対する報告をテレワーク先からする若手社員もいるほど、先のうしろめたさは徐々に解消されつつあります。

また、テレワーク先では電話会議を設定しなければなりませんが、会議を招集する側がテレワークのメンバーを忘れたため、彼らが会議に参加できない、というトラブルがありました(現在はすべての会議招集に基本的にPCから参加できるウェブ会議を設定するルールになっています)。

「意外にもコミュニケーションミスは少ない」

ーー全社的なチャットツールの導入や社員教育など、テレワークにはコストがかかりそうだが?

確かにテレワーク導入には、軽量なノートPCに買い替える、すべての会議室にウェブ会議システムを整備するなど、一定の投資は必要です。しかし社内アンケート結果にもあるように、多くの社員が生産性を向上することができています。そうなれば、一定の投資に見合うリターンが十分あると考えることができます。

また、弊社がおこなった市場調査では、テレワーク制度のある企業は、従業員満足度が制度のない企業の「2倍高い」というデータもあります。その結果から、社員のモチベーション向上という点でも効果は大きいと考えています。

さらに、よい人材の獲得という点でも、テレワークを積極的に導入していることが利点になってきています。当社に転職することを決めた大きな理由の一つが、積極的なテレワーク制度があるから、という社員が実際に出始めています。

ーーテレワークだと細かいニュアンスまで伝えられず、生産性が下がってしまうという懸念もあるが、どのように考える?

意外にも、コミュニケーションミスは少ないと感じています。連絡事項のみの会議はテレワークで、ブレーンストーミングのような会議は出社して、というように会議の目的を理解して参加方法を変えるなど、社員が工夫しています。

2016年「全社一斉テレワークデー」の社内

ーーテレワーク実施の期間中、打ち合わせなどで取引先に出向くことは?

はい。外部の来客がある場合は、どうしてもホストする社員が出社する必要があります。外出は当然ありますが、その後帰社せずにカフェなどで定時まで仕事をするなど、テレワークは外出時にこそ効率をあげる手段といえます。

ーーでは、緊急性のある事案などで、出社することは?

当社はITインフラが比較的整備されているため、ほとんどの情報がペーパーレスで共有できており、オフィスに集合しないとできない仕事は限られます。緊急性の高い、役員クラスが全員集まらねばならないケースでも、テレワークにより迅速な招集が可能です。

平時においても、全員がオフィスに揃う日まで開催できない会議が、もっと早いタイミングで招集できるようになりました。

ーー成果を上げられれば、五輪時に会場で観戦しつつ勤務することも可能?

会場で観戦しつつ勤務することは想定していません。その場合は、有給休暇を充てるのが妥当です。ただし、当社では来年のオリンピック期間に2日間の特別休日を設け、社員が存分に観戦を楽しめるよう配慮します。

「会社に行く」という行為に意味はある?

ーー今回のケースが成功した場合、いずれは「テレワークイヤー」などに発展する可能性もある?

テレワークに関しては、今後も積極的に導入していくものの、あくまで出社とのバランスを考えていく考えでいます。

その理由ですが、テレワークが普及したことで、社員同士が顔を合わせる時間を重視するようになったことにあります。やや時代遅れのように思われる社員のクラブ活動も大変な人気で、会社としてもサポートしています。

そのため弊社では、金曜の午後4時30分で仕事を切り上げカフェテリアでビールを飲んだり、勉強会を開く「430Friyay(フォーサーティフライイェイ)」というプログラムも実施し、顔を合わせて働くことの楽しさを実感する時間を大切にしています。

ーー日本の職場でテレワークを積極導入する一番の意味は何?

グローバル企業であるレノボは、幹部が世界中に分散しています。例えば、社長はイタリアのミラノ、サーバー事業のトップはアメリカに住んで日常執務を行っています。弊社では、こうした多様な人材の存在が会社を強くすると考え、テレワークはそのために必須なものとしています。

日本においても、優秀な人材の獲得が同じく求められる以上、テレワークの積極導入は必須ではないでしょうか。

ーーテレワークを推進するレノボとして、「会社に行く」という行為自体にはどのような意味があると思う?

多くの企業で今求められている「イノベーション」は、メンバー間での議論や対話の中で生まれ、共に試行錯誤を繰り返す中で高みに到達します。テレワークが広く普及すればするほど、会社に行ってフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションをすることは、相対的に重要な時間になると考えています。

したがって、単に会社に行くだけで隣の人ともメールでしか会話しないのではなく、顔を見てコミュニケーションができる貴重な機会だと捉えています。

さらに当社では、one team という点も重要視しています。昨今の厳しい事業環境では、達成すべき目標のハードルが年々高くなっています。その中では協働をより促進し、皆で超えていくための一体感ある“場の力”を強めることが非常に重要になってきています。

その意味では、テレワークをどんなに拡充しても、会社へ実際に行き、上司と部下が1対1の対話を行う、teamで議論する、さらに会社の目指すところを全社で共有し共に学ぶ、といったことは今まで以上に必要になってくると考えています。

イメージ

テレワークが導入されるにつれて、社員同士が直接やり取りする機会は徐々に失われていくのかと思ったが、さにあらず。むしろ、いつでもどこでも仕事ができるようになったからこそ、人と人とが向き合って仕事をする時間の重要性が見直されているようだった。

「ミッション東京2020」特集をすべて見る!