もし、保育園に子どもを預けている時に「首都直下地震」が起きたら…あなたはどう行動する?

カテゴリ:暮らし

  • 電車通勤している親は、地震当日のお迎えができないことを想定しておく
  • 園によって異なる「防災対策の格差」
  • 共働き親が、もしもの時のために備えておくべきことを専門家に聞いた

6月18日午後10時すぎに発生した新潟で最大震度6強を観測した地震。
発生時間が夜だったこともあり、家族と自宅で被災した人も多かったのではないだろうか。
しかし、地震は家族が一緒にいるときに起こるとは限らない。

今後、発生する可能性があるといわれる「首都直下地震」。
もし、保育園に預けている時間帯に起こってしまったら…首都圏在住の小さい子供を持つ共働きの親が取るべき行動を考える。

電車通勤している親は、地震当日のお迎えができない…

東京・丸の内勤務の母親が、地震発生直後に神奈川・横浜中心部の自宅まで歩いて帰宅するケースを例に考えてみたい。

東京駅から横浜駅まで電車移動だと30分ほどだが、距離にすると最短ルートで約30km。仮に、休憩せずに時速4kmで歩き続けると、8時間ほどで帰宅できる。

しかし、防災にくわしい危機管理教育研究所の国崎信江さんによると、「非常事態の際、1日に移動できる時間は4~5時間が限界です。特に女性の場合、犯罪に遭う危険性もあるので、30kmの道のりを体力にまかせて徒歩移動し続けることは現実的ではない」と話す。

東日本大震災の際、東京でも歩いて帰宅した人が大勢いたかと思うが、それは東京が震源ではなかったからできたこと。
国崎信江さんは「比較にならない状況が想定されている首都直下地震では、『3.11の時も歩いて帰れたから大丈夫』という考えを捨てた方がいい」と、警鐘を鳴らす。

移動エリアや被害状況によって異なるが、普段、電車通勤している人は3日以上、長いと1週間ほど帰宅できない可能性が考えられるという。

園によって異なる…防災対策に格差

それでは、もし保護者が帰宅困難者になった場合、保育園は子どもをどこまで預かってくれるのだろうか?

東京都で認可保育園・認定こども園を運営する「社会福祉法人東京児童協会」の菊地幹さんは、「保育士は親が迎えに来るまで園児を保護してくれると思うが、園によって防災対策に格差がある」と指摘する。
運営形態によっては、情報の集まり方や防災を学ぶ機会に差が生じているケースがあるという。

そんな中、東京・町田市では、市内の保育園・幼稚園からの要望を受け、2018年7月、都内初となる認可保育所をはじめとした保育施設の他、幼稚園も対象とした「災害対応ガイドライン」を作成した。

このガイドラインには、各園が統一的な災害対応を行えるよう、災害想定や発災時の行動基準、事前の準備体制など、災害に対する備えが明記されている。

例えば「子ども達を安全に保護者に引き渡すために」のポイントとして

・保護者自身が、まずは身の安全を優先した上で来園することを事前共有する
・保護者側に「引き取り者にしたくない人」がいるかどうかも含めて、事前確認する
・引き取り者は、地域の人も含めできるだけ3名以上の登録を呼びかける
・引き渡し時には、身元確認を徹底する
・引き渡し後、状況によっては保護者に帰宅せず園にとどまることを提案する

上記のポイントを参考にして自園での方法を決めておくことを推奨している。

同市の担当者は、「ガイドライン策定にあたり、市内の各園の防災マニュアルを調査したところ、地震発生後の具体的な対応が不十分な園があった。このガイドラインを活用し、保育園などを対象とした研修や訓練などを通して、防災への意識が高まっている実感はあります」と、話す。

しかし、こういう取り組みが行われているのは一部に過ぎない。多くの施設や自治体では、対策ができていないのが現状だ。

誰かが引き取るまでの対策を事前に話し合っておく

平日の昼間、離れている時間が長い共働きの家庭だからこそ、もしもの時のために何を備えておくべきなのだろうか?

東日本大震災の被災体験をもとに、都心でママ防災に取り組む「NPO法人ママプラグ」代表の冨川万美さんに話を聞いた。

ーー共働き家庭が「これだけは話し合っておくべき!」というものはありますか?

首都直下地震が発生すると、3日間程度は身動きの取れないことが想定されます。
保育園へ保護者がお迎えに行けない場合は、誰かが引き取るまでの間、保育園がどのような対策をするのかを事前に知っておくことが必要です。
子どもが1人になる可能性が高い場合は、自宅のどこに備蓄があり、親が帰れるまでの間、近くにいる誰に頼ればいいのか、話し合っておく必要があります。

また、災害時は電話での通話は、ほぼできなくなります。
そのため、家族間の連絡手段を複数、事前に決めておくことが大切です。


ーー東日本大震災の教訓から、学ぶべきことは?

震災後のアンケートの結果、日頃から防災の話し合いをしていなかったことを悔やむ回答が、多く見られました。

また、「誰が子どもを迎えに行くか?」というルールは、いざというときに守れない場合もあります。
「夫が(妻が)迎えに行くことになっているから大丈夫」と安心せず、さまざまな事態を想定した、家族ごとのルールが必要になってきます。


ーー「これだけは避けた方がいい」と思うことは?

地震発生後は、津波や余震、火災、犯罪など、多くの危険が想定されます。
それらの危険を前に、自分の判断で行動することは、とてもリスクが高いといえます。


ーーどうしても帰宅しなければならない場合を想定して、職場に用意すべきものは?

危険な場所を移動するので、頭・手・足を守るものは必ず必要になります。
特に、これからの時期は、薄着で通勤する人も多いと思いますが、肌を守る服も必要になってきます。
また、日が暮れると、電気の止まった街は真っ暗になるため、歩行が困難なだけでなく、犯罪などに巻き込まれる危険もあります。
単独行動は避けましょう。

この取材を通して、2児の母親である筆者は「もしもの時、わが子を自分が守れないことで後悔しないだろうか」と、子どもと離れた職場で働いていることを、あらためて考えるきっかけになった。

大災害はいつ自分の身に降りかかるかわからない。
数十年先かもしれないし、明日かもしれない。


後悔しないために日頃から家族で備え、いざという時に助け合えるよう、保育園の先生方や地域の人とも交流しておくことが、とても大切なのではないだろうか。

(執筆:清水智佳子)