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一見シンプル、実は複雑!? 「大雨警戒レベル」は私たちの命を守れるのか?

カテゴリ:国内

  • 大雨シーズンの6月から5段階の警戒レベルが運用開始
  • 一見シンプルに。しかし他の防災情報と整合性がつかず、かえって混乱!?
  • とにかく「レベル3」で高齢者などは避難、「レベル4」で即・避難が原則

大雨警戒レベル1~5の運用開始

去年7月の西日本豪雨で気象情報や避難情報が住民にしっかり伝わらず、200人を超える犠牲者を出した。
平成最悪の被害となったこの豪雨災害を教訓として、政府は半年余りで大雨の際の新たな防災対応のガイドラインをまとめ3月末に公表した。 

その後、内閣府や気象庁は自治体などに説明を行い、本格的な大雨シーズンを迎える6月からいよいよ大雨警戒レベルの運用が始まる。

5段階の「警戒レベル」の大きな柱は、自治体が発令する「避難準備・高齢者等避難開始」「避難勧告」「避難指示(緊急)」がどの程度、災害の切迫度があるのかを段階的な数字を付けて明確にし、それぞれの発令でどんな人が逃げなくてはならないのかを分かりやすくして、逃げ遅れを無くそうというものだ。

災害発生の危険度に応じてレベルは1から5へと上がっていく。

最大のポイントは、「警戒レベル3」まで上がったら、高齢者や体の不自由な人は余裕をもって逃げること。
それ以外の人は避難の準備を忘れずに。
さらに「警戒レベル4」まで上がったら、対象となる住民は全員避難するということだ。
もっとも危険な「警戒レベル5」になるまで自宅などに留まってしまうと、災害が既に発生して手遅れになるので、レベル4のうちに全員逃げる事が大切としている。

この部分だけを見ると非常に分かりやすくシンプルだ。
しかし、複雑でわかりにくいという声も聞く。

シンプルにしようとし過ぎた結果、かえって複雑に?

内閣府によって市町村が発令する避難情報にレベルを付与する事を軸に作られた枠組みに、なんとか防災気象情報を「警戒レベル相当情報」という形で当てはめようとしたが、記録的短時間大雨情報などこぼれ落ちた重要な気象情報があることや、レベル5に相当する大雨特別警報と、記録的な台風が原因で出される大雨特別警報(今のままではレベル3相当)との整合性がとれていないことなど、きちんと整備される前に運用が始まったように見える。

「5段階警戒レベル」と気象庁「危険度分布」のレベル分けに食い違いが・・・(画像は気象庁HPより抜粋)

また、気象庁が住民の避難の判断材料として自信をもっている「危険度分布」で、最も危険な災害発生相当の情報として伝える「濃い紫」が、警戒レベルの表では災害が発生している蓋然性は低いとして、レベル4相当の情報となっていることもスッキリせず、精度の見直しによって変更の可能性がある流動的な存在となっている。

気象庁の「危険度分布」で「すでに発生」なのに、なぜか警戒レベルは「4相当」(画像は気象庁HPより抜粋)

市町村が出す危険度最大のレベル5の災害発生情報が、災害の定義すら議論されないまま、出せなくてもいい情報となっているのはこのままで良いのだろうか。

国民に周知する時間もないまま大雨シーズンを迎えることは最も心配な点だ。
きちんと理解されず誤解が拡散すると、もう収拾がつかなくなる。

「勧告」も「指示」も・・・「避難せよ」と解釈すべき

一方、新たな試みをもっときちんと伝えた方が良いと思う点もある。

今回の改善の最も重要なポイントは、警戒レベル4に「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が入ったことだ。
これまで「避難勧告」が出た後「避難指示(緊急)」が出るまでの間には、明確な差があったと思っている方が多いだろう。

しかし、だからこそ避難指示を待って逃げ遅れる人が出てしまっていたとも言える。

今回、同じレベル4に入れたという事は、これまでのように避難勧告と避難指示を区別する必要はなく、レベル4と聞いたら避難をしなければと直感的に行動に移すためということだ。

今後勧告も指示もやめて、「レベル4は避難」にするくらいの意気込みで法改正にまで踏み込んでほしかったくらいだ。
これはもっとしっかり国民に説明して理解してもらった方が良い。

「レベル4は全員避難」というワードについても、「避難勧告」は本当に全員が避難なのか。

住んでいる場所の地理的状況や個人の体調などによって災害の切迫度に違いはあるはずだ。周辺の状況によっては無理に避難することで命の危険の可能性すらある。
避難というのは、避難場所や避難所へ移動するということだけではない。
それぞれの立場で、安全な場所に身を置くことが本来の避難だ。

豪雨災害から命を守るためには日頃からハザードマップで住む場所の状況を確認し、いざという時にどうするのか、避難ルートや避難にかかる時間を調べておくなどした上で、避難のタイミングは住民ひとりひとりが主体的に判断することが重要だ。

新たな防災対応のガイドラインでも「自らの命は自ら守る」ことを基本とすると明記している。

2018年7月の西日本豪雨

「3」で高齢者などは避難、「4」で即、避難

この方針を受けて気象庁は、大雨警報や洪水警報は高齢者等が避難を開始する「レベル3」に相当する情報で、土砂災害警戒情報は全員避難の段階の「警戒レベル4」に相当する情報として、発表する場合には、たとえ自治体から避難情報が出ていなくても、
住民が個々の状況に応じて自主的に早めの避難をする判断材料にしてほしいと、直接住民に向けて避難を促す呼びかけを積極的にしていく姿勢である事を表明している。

しかしこの積極的な早期避難の呼びかけの頻度があまりに高くなってしまうと、避難情報に慣れてしまって災害に鈍感になり、本当に避難しなければならない時に避難行動を取らなくなってしまう懸念はないだろうか。

バラバラだった様々な防災気象情報や河川の水位情報などを、避難情報の5段階のレベルの表の中にあてはめ、分かりやすくしようとして逆に分かりにくくなってしまった感もある。

大雨警戒レベルの導入は、果たして国民に正しく理解され、政府が目標に掲げた「逃げ遅れゼロ」に効果を出せるのか。

「大雨警戒レベル」を上手に利用する方法は、まずシンプルに市町村から「レベル3」の避難準備の情報が出たら高齢者や移動に不安のある人は早めの避難。
避難勧告や避難指示の「レベル4」に上がったら、もう逃げなくてはいけないということを軸に構えておく。

それまでに気象庁などから次々出される「レベル相当情報」は、わが身に迫る危険の高まりを教えてくれる貴重な情報として、ハザードマップなどで前もって知っておいた自分のいる場所の災害リスクに応じて、その時の体調なども考えて、不安があればたとえ市町村からの避難情報が出る前でも自分で判断し余裕のあるうちに安全な場所に移動することが大切だ。

レベル4のうちに避難を終え、災害発生のレベル5は決して待ってはいけないのは言うまでもない。

年々激甚化する集中豪雨や台風は、今年もおそらく全国各地を襲うだろう。
家の周りの状況は急激に悪化することもあることを肝に銘じ、手遅れになる前に早めの判断が必要なことは間違いない。

(執筆:フジテレビ社会部気象庁担当 長坂哲夫)