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木が“看板”を飲み込んでいく…12年前との比較写真が話題に 専門家に理由を聞いた

カテゴリ:国内

  • 木が看板を飲み込んだ…12年前と比べるとその度合いが歴然
  • 投稿者「ここまで変化していることは予想外だったので大変驚いた」
  • なぜ飲み込む?木に悪影響は? 専門家に聞いてみた

ゆっくりと年月をかけ成長していく木。

そんな木が“看板”を徐々に飲み込んでいく様子を、12年前と現在を比較して見せた写真が5月11日に投稿され、5万超のいいね!がつく話題になっている。(5月15日現在)

まずはそのツイートをご覧頂きたい。



「寄居町の林道馬騎ノ内線の、木に喰われたまといリス。12年ぶりに行ったらまだいたけど、ほぼ飲み込まれる寸前だった!」とのコメントとともに看板の変化を比較して投稿している。

2007年の画像は看板の半分ほどが飲み込まれているが、リスの絵と埼玉県の文字は見ることが出来る。
元々この看板は、林野庁の山火事防止の看板で「リスのまとい」は山火事防止のシンボルとなっているそうだ。

出典:ナノレカワ(@nanorekawa)さん

一方、それから12年が経過した2019年の画像を見てみると、看板のほとんどが飲み込まれ、リスは足元がかろうじて見える程度で、埼玉県の文字も「玉県」となってしまっている。

2枚の写真を比較すると、木が12年の時間をかけて、看板を飲み込んでいく様子がよくわかり、その部分が木の“口”のようにも見えてくるほどだ。

出典:ナノレカワ(@nanorekawa)さん

「予想外で大変驚いた」

投稿者のナノレカワ(@nanorekawa)さんによると、撮影したのは埼玉県寄居町の林道馬騎ノ内線という場所。

林道巡りが趣味だというナノレカワさんが、2007年にこの林道に訪れた際に看板の半分程度が飲み込まれているのを見つけ、珍しく思い撮影。
そして、5月11日、2007年に訪れて以来12年ぶりに近くに立ち寄ったところ、看板のことを思い出して見に行くと、看板のほとんどが飲み込まれていたので撮影し、12年前の写真との比較画像を投稿したという。

投稿者のナノレカワさんは「ここまで変化していることは予想外だったので大変驚いたのと、全国にはこのようにして木に埋もれていった看板が他にもたくさんあるんだろうな、とは思いました。」と感想を述べている。

出典:ナノレカワ(@nanorekawa)さん

また、この投稿を受けてネット上では「似たようなの知っている!」や「自分も倉庫の敷地内の木に随分前から蛇口とか鎖が喰われてるよ」などの反響があった。

このように木が“異物”を飲み込んでいくことはよくあるのか?そして、飲み込んでも樹木に悪影響はないのか?森林、林業および木材育種の研究開発を行っている森林総合研究所に聞いてみた。

看板が木の成長を邪魔している

ーーどのような原理で看板が飲み込まれるのか?

樹木は形成層(維管束形成層、コルク形成層)で細胞分裂することで肥大成長します。しかし、その肥大成長を拘束するようなものが外部にあると成長した部分は行き場を失います。それでも細胞分裂が行われるため、成長した部分は空いている方向に押し出されます。当初その方向が看板の上部だったりすると、その後は連続的に同じ方向に成長するため、徐々に看板を覆っている範囲が広がっていくのではないでしょうか。


ーー飲み込まれた後、看板はどうなるのか?

看板は飲み込まれているようには見えますが、実際には樹皮の外にあり、この段階では樹皮に囲まれていると思います。さらに長い年月がたつと樹皮が腐り、本当に木部の中に埋もれているように見える可能性もあると思います。


ーー樹木に影響はあるのか?害はあるのか?

この段階では特に問題はないと思います。中で樹皮が腐って、木部に取り込まれると、万が一、有毒な化学成分等があれば何らかの影響があるかもしれません。鉄と塗料だけだと通常は問題ないと思います。また、人間が木材を利用する時には、分からないで切削すると刃物が痛む可能性があります。


ーーツイートの木の種類は?

ツイートの写真だけでは樹種の判定までは出来かねます。


ロープやラベルを飲み込んだケースも

ーー他に飲み込まれた例は?
 
はっきり言える範囲では、筑波大学構内に1本のケヤキに飲み込まれたロープがあります。おそらくまだあると思います。
山では見かけたこともあると思いますが、はっきりどこにあると言えるような記憶には残っていません。森林総研の木を少し調べましたが、昔貼ったラベルを飲み込んでいるように見えるケースがいくつかありました。ハクウンボク、サルスベリ、モッコクなど平滑な樹皮を持つ樹種に多いように思えました。

飲み込むことと似ていますが、隣り合っている木が拘束し合って、最後には合体することもあります。森林総研には、ヒノキとサワラの合体木の標本があります。
また、イチジクの仲間のアコウやガジュマルのように他の木を絞め殺すものもそれに近い構造になります。

ラベルを飲み込んでいるようにみえる 提供:森林総合研究所

ーー樹木は何でも飲み込むのか?

その可能性はありますが、飲み込んだように見えるか、合体したように見えるかは、相手の大きさや飲み込むプロセスによって見え方は様々かと思います。

 
ーー飲み込まれないように対応していくべきことは?

木の肥大成長とともに伸縮するもので固定する等でしょうか。現実的には定期的にチェックするといったところでしょうか。



今回のケースでは、厳密には樹皮に囲まれていて、木の一部と化したわけではないということで、また、木の成長にも影響はなく害もないだろうということなので一安心。

ナノレカワさんは「たぶん、あと10年もしないうちに完全に埋もれちゃうだろうな。」ともツイートしているが、看板を設置した寄居町は特に対応はせずにそのままにするという。

看板の今後の行方が気になる人は、探しに行って是非経過報告をしてほしいし、その際は看板が見えなくても山での火の扱いには十分注意しよう。