ハリウッド女優が「戦後の日本」を見てスタートさせた児童虐待への取り組みとは

全米最大級の施設「チャイルド・ヘルプ」を現地取材

カテゴリ:ワールド

  • アメリカ流 体を使って「安全」を教育
  • 発足のきっかけは日本での体験
  • 虐待対策のために官民が強力な連携

日本で後を絶たない児童虐待。

無垢な命が奪われていくこの現状に世界ではどのような取り組みが行われているのか?
実際にアメリカの実情を取材してみると、日本とは比較にならないほどしっかりとした取り組みが30年以上前から行われていた。

しかもその始まりは、ハリウッド女優らが戦後の日本を訪れて体験したことがきっかけだった。その現場を取材した。

アメリカ流 体を使って「安全」を教育

全米最大級のNPO法人「チャイルド・ヘルプ」

アリゾナ州・フェニックスに本部を置く「チャイルド・ヘルプ」。


全米各地で児童虐待などに取り組む全米最大級のNPO法人だ。

現在、アリゾナ州の施設で予防教育プログラムを担当するリサ・シオリさんは、州の担当者と調整し、地元の学校を訪問して、それぞれの学年にあわせたプログラムで授業を行っている。

予防教育プログラムを担当するリサ・シオリさん

この日は地元の小学校で2年生を対象にした授業を行った。

授業では「虐待」という言葉は使わず、子供たちに安全に関する基本的な考え方を教える。自分自身をどう守るのか?安全な大人と危険な大人の違いなどを、体を使って教える。

この授業を受けた子ども

ー 授業を受けた子供は

「すごくよかった。自分の体を大事にすることと、安全でいるためのルールを教えてもらった。あと大人に傷つけられても、それは自分のせいじゃないということも学べた。」
 
「スピーク・アップ・ビ・セーフ」と呼ばれるこのプログラムは 学年ごと高校生まで区分けされている。
最初は、安全と危険の違いなどを理解し、その後、危険と感じた時にどのように表現するのか、そしてどのように自分を守るのかなどを、段階を踏んで教えるのだ。

虐待予防プログラムの授業風景

ー授業を担当するリサさんは

One of the main things we want to make sure children understand is that they are children, and that it’s an adult’s job to keep them safe and healthy. 
「大事なことの一つは、子供たちに自分たちが子供だということをわかってもらい、子供たちの安全や健康は大人に責任があるということを理解してもらうこと。」


We want to teach them what a safe adult looks like and acts like so they have that understanding that knowledge, and that awareness because unfortunately many people who abuse children are people who the child knows, trusts, maybe they even love that person so it’s confusing to a child
「我々は、安全な(危害を加えない)大人とはどのような見た目で、どのような振る舞いをするのかを子どもに教え、そうした知識や理解を身につけてもらいたい。なぜなら、残念ながら多くのケースで、子どもは虐待している大人と面識があり、信頼していたり、さらには大好きな人だったりするため、子どもは混乱してしまう」

We’ve had children who have come forward and done exactly what we asked them to. They have spoken up and told us or told a teacher or a counselor that they have been a victim of abuse.

「実際に授業のあとに虐待されている事実を告白したり、教えたこと実行した子がいる。彼らは自分たちが被害者だとして我々や先生に相談してきてくれた」

きっかけはハリウッド女優の「日本」での体験

日本訪問当時のサラさんとイバンさん

チャイルド・ヘルプの発足には日本が大きく影響しているのだ。戦後間もない1959年。

兵隊慰問のため在日アメリカ軍基地を訪問したハリウッド女優の、サラ・オメラさんとイバン・フェダーソンさんの2人が、路上で悲惨な状況に置かれた日系アメリカ人の子供たちを世話したのをきっかけに、その後アメリカで児童虐待への取り組みをスタートさせた。

ハリウッド女優の、サラ・オメラさん(左)とイバン・フェダーソンさん(右)

ー 創設者 イバン・フェダーソンさんは

When we were both selected and we said God must have a plan for this trip, there must be a reason we are going on this trip so after we found these children and we found a home for them and everything, we said now we know why they’re here, we are supposed to be helping these little children.

「我々が日本に行くために選ばれたとき、神様がこの旅行を計画したのではと2人で話した。この旅行には行く理由があるのだと思った。そして子供たちと出会い、孤児院を探してあげた時、私たちは子供たちを助けるためにここに導かれたということを理解した。」

ー創設者 サラ・オメラさんは
It ended up we built 4 orphanages for the half American children in Japan and that was the beginning of really our destiny
「最終的には子供たちのために4つの孤児院を建ててた。そこから我々の本当の挑戦が始まった。」

チャイルド・ヘルプは現在アリゾナのほかカリフォルニア、バージニア、テネシーなど全米各地で活動をしていて、アメリカでも児童虐待などに取り組む組織として草分け的存在だ。

チャイルド・ヘルプ担当者

ーチャイルド・ヘルプ担当者は

「子供たちは虐待されたことを打ち明けることを怖がっている。ただ近くにいる人がその悩みから抜け出すために協力してあげたら、彼らに愛情につつまれた地域社会があるということを分かってもらえる。」

虐待対策のために官民が強力な連携 

チャイルド・ヘルプでは、予防教育プログラムに加え、24時間専門のカウンセラーによるホットラインを1982年に設置して子供たちからの相談を受けている。また最近は、電話で相談しにくい子供たちに向けてメールで対応しているほか、来月からはチャットサービスも始める予定だ。

またチャイルド・ヘルプは、虐待を受けたり、疑われるケースがあった場合、常駐する医師やカウンセラーによる調査、聞き取りを行い、実際に虐待が確認された場合は、事件化に向けて、常駐する捜査員や検事が動ける擁護施設を運営している。官民が一体となった虐待対策を早くから行ってきたのだ。

ー創設者 サラ・オメラさんは

「我々大人は弱いものを守るためにいる。それは数人だけではなく、すべての人の責任だということを理解しないといけない」
チャイルド・ヘルプのような活動は全米各地でも行われていて、アメリカでは子供たちにとって何が「危険」で、どのように対処していくべきなのかを小さいころから教育する取り組みとともに、実際に被害にあった際に迅速な対応ができるような対策が同時に行われていて、学べることが多くあるのを実感した。

【執筆:FNNニューヨーク支局長 上野浩之】